第四章 調査概要

 今回の調査では、大まかに分けて2種類の調査を行った。それは、リーダーシップに関する調査と、追加戦士に関する調査である。男性戦士の中で、特に注目すべき存在として、リーダーを務める戦士と、番組の途中で仲間に加わる追加戦士が挙げられる。リーダーの戦士は多くの場合赤の戦士であり、戦隊というチームの中でもストーリー上でも中心的な人物である。さらに追加戦士は、その登場によって番組が大きな盛り上がりを見せる注目度の高い存在である(追加戦士についての詳細は後述する)。スーパー戦隊シリーズにおいて、特に重要な存在であるこれらの戦士について調査することで、作品に描かれる男性像の代表的な変化をくみ取ることができると考え、今回の調査に至った。以下に、調査の概要を示す。

 

第一節 リーダーシップに関する調査

第一項 調査項目の設定

 まず、戦隊というチームにおけるリーダーシップについての調査を行なった。リーダーシップが表れる場面として、チーム内で発生した衝突を仲裁するシーンと、指示が出されるシーンを想定し、調査の項目を設定した。それが、(1)戦隊メンバー間の葛藤、(2)一般人に対する救助・避難誘導行為、(3)クライマックスでの戦闘における指示行為の3点である。

(1)戦隊メンバー間の葛藤とは、平たく言えば戦士たちが喧嘩するシーンである。戦士たちは、戦隊という一つのチームで戦い、時には生活を共にしている場合もある。そのような中で、例え仲間同士であっても、戦闘方針などを巡って対立を起こすであろうことは容易に想像できる。(2)一般人に対する救助・避難誘導は、地球や人類の平和のために戦うスーパー戦隊シリーズにおいて、必ず起こりうる場面であると推測できる。そして、(3)クライマックスでの戦闘における指示行為については、まずスーパー戦隊の1話分のおおよその流れについて説明する必要がある。一般的な流れとして、各放送回に1体新たな敵が現れ、その敵はその回のうちに倒される。1回の放送のうちの前半で、戦士たちは新たな敵と遭遇するが、そこですぐに敵が倒されるわけではない。敵が一旦退いた後、後半で再び対決となり、そこで止めが刺されるのだ。今回の調査では、後半で再会した敵に止めを刺す際の戦闘を「クライマックスでの戦闘」と位置づけ、作品を問わず見られるこの戦闘を調査対象とする。以上の理由より、今回の3つの調査項目を設けた。なお、(1)戦隊メンバー間の葛藤では仲裁について、(2)救助・避難誘導と(3)クライマックスでの戦闘における指示行為では指示行為についての調査である。3点の詳細な調査項目については以下のとおりである。

 

<メンバー間の葛藤について>

・葛藤の発生件数

・葛藤当事者の男女別人数

・仲裁が入った葛藤件数

・仲裁した者の男女別人数

 

<救助・避難誘導について>

 ・救助・避難誘導の件数

 ・救助した戦士の男女別人数

 ・戦隊の中のリーダーが救助・避難誘導を行なった件数

 ・救助・避難誘導の指示を他の戦士に出した男女別人数

 

<クライマックスでの戦闘における指示行為>

・各戦士がクライマックスでの戦闘で指示を出した回数

・各戦士がクライマックスでの戦闘で指示を受けた回数

 

第二項 調査作品の選定

 本調査では、調査期間の制約からシリーズ全ての作品を調査することを断念した。そこで、戦士たちが戦隊を結成する以前から、軍隊のような戦闘組織に属しているという設定の作品を選んで調査した。それが、「秘密戦隊ゴレンジャー」、「超力戦隊オーレンジャー」、「特捜戦隊デカレンジャー」、「天装戦隊ゴセイジャー」の4作品である。このような設定の作品は、戦士たちが復讐や因縁などの個人的な理由ではなく、あくまで他者のため、平和維持という社会全体の利益のために戦っているということが判断できる。よって、前項で設けた(2)一般人の救助・避難誘導のシーンがより多く描写されることが期待できる。また、スーパー戦隊シリーズの1作目であるゴレンジャーがそうであることから、その設定がスーパー戦隊シリーズにおける原点であるといえる。つまり、それ以降に登場する同様の設定の作品は、ゴレンジャーと何らかの違いを表現するはずである。そして、その設定に回帰するということは、スーパー戦隊シリーズにおけるある種のターニングポイントとなりうる作品であると考えられる。以上の理由から、全ての作品を取り上げることができない今回の調査では、上記の設定の4作品を調査対象として選んだ。

今回選んだ作品以外にも、同様の設定の作品は存在するが、映像資料の入手可能性と作品同士の放送時期が集中しないよう考慮しながら上記の作品を選出した。選んだ4作品についての詳細については表4のとおりである。

 なお、前述のとおり資料の入手可能性を吟味した上で作品を選んだが、ゴレンジャーのみ33話以降の映像資料を入手できず、32話までの調査に留まっている。他の3作品については、全話調査することができた。また、リーダーに関する調査項目について、明確にリーダーが定められていないゴセイジャーについては、最も中心的な存在であるゴセイレッドをリーダーと仮定して調査を行った。

 

4 調査対象作品の情報

 

第二節 追加戦士に関する調査

第一項    追加戦士とは

 スーパー戦隊シリーズでは、戦士たちが複数人のチームを組んで戦うことはすでに述べた。しかし、番組が進行していくと、途中で新たな戦士が登場し共に戦うようになることがある。それが、追加戦士である。多くの作品で初期の戦隊メンバーは5人であることから、追加戦士は「6人目の戦士」と表現されることもある。そして、追加戦士は基本的に男性である。女性の追加戦士がいる作品では必ず男性の追加戦士も登場するため、追加戦士が女性のみだった作品は現時点では存在しない。

 初めて追加戦士が登場した作品は、1992年放送の恐竜戦隊ジュウレンジャーである。第17話「六人目の英雄(ヒーロー)!」にて、ドラゴンレンジャー/ブライが登場した。それ以降は、1999年放送の救急戦隊ゴーゴーファイブを除いたすべての作品で、一人(または一体2)以上の追加戦士が登場している 。つまり現在追加戦士の登場は、本シリーズにおける一つの定番要素と化しているのである。よって、全作品に共通する要素ではないものの、本シリーズの変化を調査するために有効な人物であると考えた。

 

第二項 調査対象とする追加戦士

 追加戦士の条件は、第一に登場が他の多くの戦士より遅いことである。しかし、初登場が第2話以降の戦士でも、戦隊の中心的なメンバーとして戦うことになった作品がわずかながら存在する3。反対に、戦士の姿に変身することはできても、その登場がごく限られている戦士もいる。そこで、東映が運営する「スーパー戦隊ネット(http://www.super-sentai.net/sentai/)」のページで、番組名の横に顔写真が掲載されている戦士を初期メンバーと見なし、それ以外の戦士を追加戦士と捉える。調査対象とする上記のページは、作品を制作する東映が管理するものであり、戦士の顔写真は作品ごとに3人ないし5人ずつ掲載されている。このことから、東映がそれらの戦士を正規メンバーと考えていることが読み取れるため、この基準を採用した。ただし、演者の交代などの理由により2代目として登場した戦士や、1話限りの登場又は劇場版などのみの登場となった戦士は除外する。また、追加戦士が複数登場する作品では、登場回数が少なく作品への影響が弱いと考えられる戦士もいるため、調査する追加戦士は各作品2名以下に限定している。