第五章 考察

 全国のご当地アイドルは活動範囲の違いから「地元密着型」「全国展開型」に分類でき、それぞれに見合った活動を行っていると読み取れた。先行研究では、ご当地アイドルは、地元に密着した活動を行っているグループであると捉えられていたが、特定の地域のアイドルであることを売りにしながらも、全国を規模に活躍を目指しているグループもいると考えられる。

また、ご当地アイドルの特徴として、曲などにみられる地域性がみられた。このような工夫は、先行研究で触れられているように、ご当地アイドルならではの特徴であり、他のグループとの違いを示すことが可能である。また、地域性を示すことで地域をPRすることができ、地域活性化に繋がっているといえる。しかし、この地域性の表現の強さはグループによって差があり、「地元密着型」のグループにおいて、濃く地域性が出ているものと、そうでないものがあるようにみられる。同様に「全国展開型」のグループにおいても、地域性の表現の違いがみられた。よって、ご当地アイドルとして地域の名を広めるために地域性を表すことが重要であるが、その程度は様々で、地域性を一番に重要視するのではなく、一般的なアイドルであるということを売りにしているグループもあるのではないかといえる。先行研究では、ご当地アイドルの特徴として、地域性を示すことで他グループとの差異化を図り、オリジナリティを高めていると言及されていたが、必ずしも全てのご当地アイドルが、地域性を重視しているわけではないといえる。このように、ご当地アイドルの活動や目的は、多様化しているのではないかと考える。

 

 Vienolossiは全国のご当地アイドルの傾向から「地元密着型」のアイドルであると読み取れる。しかし、調査を進めると、地元に密着した「地元志向」の活動が中心でありながらも、「地元外志向」の活動と言える県外のアイドルイベントへの出演も増加していることが分かった。それぞれに、地域活性化の効果がみられることから、Vienolossiは地元での活動と地元外での活動の2層の活動を通し、地元の活性化に繋げているといえる。 

 「地元志向」の活動からは、アイドル本人とファンの距離の近さが特徴であると発見できた。ビエノウォーキングやビエノカフェなどメンバーと近い距離で楽しめるイベントが増加しており、ファンもそのようなイベントで感じられるアイドルの存在に魅力を感じている。このようなイベントを頻繁に行うことは、全国ではなく特定の地域という小さい規模を基盤にしているからこそ可能なのではないかと考えられる。ファンはそのような全国規模のアイドルでは味わい難いメンバーとの距離感に魅力を感じているのではないだろうか。

 このような地元での活動と並行して地元以外での活動にも徐々に力を入れている。「地元外志向」の活動は、他地域の多数の人々に地元をPRする機会であり、地元のPRに有効である。しかし、イベント内容が活動規模に関係なく多数のアイドルが出演するものが増えてきていることから、アイドルとして売れたい、新しいファンを獲得したいという思いもあるのではと考えられる。特定の地域を拠点としながらも、アイドルである以上、目標を持ち全国的に認知度を高める必要があると言える。そのため、活動が2層化していると考える。

 

 このため、調査(1)で対象とした他のご当地アイドルも、「地域密着型」「全国展開型」と分類したが、それぞれ詳しく探ると「地元志向」「地元外志向」の活動を並行させて活動を行っているのではないかと考える。

 先行研究では、ご当地アイドルは地元に留まり、全国展開を狙わず、特定の地域の活性化の目的に徹しているアイドルと捉えられていた。しかし、このような調査結果から、特定地域のご当地アイドルと名乗り、地域の活性化を目的としていながらも、自分たちアイドルグループの知名度を高めるために、積極的に全国へ視野を向け、一般的なアイドルと同様な活動を行っているグループもあると考えられる。したがって、現在存在するご当地アイドルは、バリエーションが豊富で、それぞれの目的に沿った活動を通し、アイドルとして知名度を高め、地域の名も広めているのではないだろうか。

 現在では、2010年前後のアイドル戦国時代よりもアイドル文化が下火になってきているように感じる。そのような状況の中でも、ご当地アイドルは700組を超える数が存在している。今回の研究では調査できなかったその他のアイドルグループも、地域性の表現の強さや活動の範囲など、様々な工夫をし、それぞれの目的のため活動しているのではないだろうか。