第四章 調査(2)富山のご当地アイドル

第一節 調査概要

次に、調査したアイドルの傾向をもとに、富山県を拠点に活動を行っているアイドルグループ「Vienolossi(ビエノロッシ)」を対象にフィールドワークや、ネットでの調査、所属事務所の関係者へのインタビュー調査を行い、実際にどのような活動を行っているのか、それぞれの活動の目的、活動を通して感じる反響などを探っていきたい。フィールドワーク、インタビューの詳細については以下の通りである。

 

<フィールドワーク>

Vienolossi定期公演「私!」(日時:2015621日 場所:とやま劇場)

Vienolossi定期公演「藤井希来里卒業公演〜後編〜」(日時:2015720日 場所:ボルファートとやま)

Vienolossi定期公演「松井リズ卒業公演」(日時:20151025日 場所:とやま劇場)

Vienolossi定期公演「松岡凛子復活祭」(日時:20151123日 場所:とやま劇場)

・高岡ねがいみち駅伝(日時:201657日 場所:高岡古城公園)

・野村サマーフェスティバル(日時:20168420:30~ 場所:庄川高岡大橋上流特設会場)

 

<インタビュー>

インタビュイー: Vienolossiの事務所代表

日時:2015621

場所:とやま劇場

 

第二節 Vienolossiについて

 「Vienolossi(ビエノロッシ)」は、富山のご当地アイドルであり、「富山ご当地アイドル発掘プロジェクト2」によって、2013325日にデビューした。所属事務所は富山県を拠点としている「41プロモーション」である。グループ名は富山県の名産である「白エビ」を逆から読んだ「ビエロシ」をアレンジしたものである。キャッチフレーズはぴちぴちの宝石アイドル「ビエノロッシ」。メンバーはオーディションによって選出された。メンバーは、1尾生32人、3尾生1人、4尾生2人の計5人。そのほかエッグ生(研究生)も数名いる。メンバー全員が富山県出身。

 主な活動は、定期公演、県内イベント出演、県外イベント出演、ビエノウォーキング、ビエノカフェ、ネットチャンネルでの動画配信、モデル、CM出演、映画・ドラマ出演などである。

 

第三節 分析

第一項 結成・メンバー

 Vienolossiは富山県を活性化させたいという気持ちから結成されたことが分かった。これは、北陸新幹線の開業を機に、富山県内で地域活性化の動きが進んでいたため、ご当地アイドルにより富山をPRしていきたいという想いがあったのではないかと考える。また、アイドルを作るきっかけとして、全国的にご当地アイドルが誕生していたことが影響していたようである。他の都道府県ではすでに多くのご当地アイドルが誕生していたが、富山県ではご当地アイドルが誕生していなかったため、県内唯一の芸能事務所として、アイドルをつくらなければならないという使命感があったそうだ。また、富山県は芸能の文化があまり発展していないことから、アイドルがイベントに出演することを通して、芸能事務所として富山県に芸能の文化を根付かせたいという気持ちもあったようである。

 

メンバーは主に中学生以上を選考しているようだ。人数に関しては、制限は決めていないようである。また、性格や富山県に対する想いなどは気にしておらず、数回の選考を通し、やる気があるのかを一番重視してメンバーを選んでいるようである。

 

第二項 活動

Vienolossiの主な活動は富山県で開催されるイベントでの出演、ならびに富山駅前にあるCiCビル5階のとやま劇場で月に12回程度行われている定期公演である。また、2014年度には一大イベントとして、富山県15市町村をまわるツアーを行なった。

このツアーで各地の祭りにVienolossiが参加することで集客の少なかったものでも盛り上がりを見せ、地元の方に感謝された。このイベントを通して富山県の地域活性化に貢献できたと感じたそうだ。このようにVienolossiは地元を盛り上げるために活動を行なっている。

しかし、全ての活動が富山県というわけではない。201310月頃から隣県である石川県をはじめとする北信越地方、さらには東京・名古屋といった大都市でのアイドルイベントへの参加が増加している。

このような地元外の活動に対し、富山県のPR、特に北陸新幹線のPRが目的であるという。県外や都会に出て富山県をアピールすることで、富山県のこと、そしてVienolossiのことを知ってもらい、ぜひ富山県へ来てほしいという思いがあるようだ。また、2014329日に発表した「15駈けてくる君に」という曲は富山県の名所・名産を用いた曲となっている。県外での活動が増えたことにより、曲においても地域性を出して富山県をPRし、富山県への集客を狙っているといえる。

以上のようにVienolossiの活動は、地元を活性化させるために地元で行なう「地元志向」の活動と県外からの観光客を呼び込むために県外に出る「地元外志向」の活動の2層によって成り立っているといえる。活動を行なうことで、県外の人が富山を訪れるきっかけとなり、さらなる地域活性化に繋がっているといえる。地元を拠点にしているとはいえ、ある程度の「地元外志向」が必要であり、2層の志向のバランスを保ちながら活動していくことが求められる。だが、「地元外志向」の活動といっても、全国区のアイドルのように東京ドームで公演を行なうといったようなことは今のVienolossiでは難しいと語る。現状では大都市で行なえる活動に限界があるため、力量に合わせた地域外での仕事を選び、行っている。

 

 次にメディアでの活動を調査すると、Vienolossiは、ケーブルテレビ富山、高岡ケーブルテレビでレギュラー番組、富山シティエフエムでレギュラーラジオ番組、富山県の地元情報誌であるTJとやまで連載がある。毎週金曜日にはWEB番組でLIVE配信も行っている。ご当地アイドルとして、地元メディアへの出演が非常に多い。これらの活動によってファンは自宅でVienolossiを楽しめる。

さらに、メンバーはみなTwitter、ブログを利用しており、絶えず情報を発信している。ファンは、いつでも、どこでも情報が得られ、公演やイベントがないときでもメンバーの状況を把握できる。このようなインターネットを利用した活動により、地元外のファンに対しても宣伝が可能である。また、絶え間なくアクセスできることからリアルタイム性が高いといえる。そして、どちら媒体においても、メンバーの投稿に対しコメントが可能である。ファンはSNS上で、メンバーにコメントを送るなどし、交流を行っているようである。このことから、ファンはより近い存在としてVienolossiを感じられる。このように、メディアを巧みに使い活動することで、ファンとの距離をうまく保っている。

 

第三項 地域性

 インタビューによると、グッズ販売を好んでいないため、グッズにおいて地域色を出す工夫を行っていないようだ。グッズ販売には、制作等のコストが多くかかるためであると考えられる。まだマーケットの規模が期待できないのではないだろうか。

 一方で、曲の歌詞には、地域性を出す工夫を行っているようである。20153月のイベントにおいて発表された「富山首都化計画」という曲は、富山弁を使用した歌詞になっている。また、20152月に発売された「15〜駈けてくる君に」は、富山県の観光スポットなどにちなんだ歌詞をつけている(巻末資料参照)。発売されたCDの歌詞カードにおいて8ページにわたって、歌詞に用いられた観光スポットなどの紹介がされている。

 この「15〜駈けてくる君に」の歌詞は、一見すると、恋愛の曲のようで富山県の名所が分からないものとなっている。これは、アイドルらしい恋愛ソングを利用して、その要素と観光資源とを結び付けているのではないかと考えられる。また、新幹線開業に向けて作られた曲であり、新幹線の要素も組み込められている。

 

 

第四項 ファン

 Vienolossiのファンはどのような人々なのだろうか。以下は、Vienolossi定期公演のフィールドノーツである。

 

 主に男性が多く並んでいる。その中にちらほらと女性の姿も見える。年齢層は様々であるが、450代の男性が多い。制服を着た若い女性や男性も多くいた。若い男性たちは列に並ばずに一角で集団を作り、楽しそうに話していた。みな何度か来ており、顔見知りなのだろうかファン同士で挨拶し合っているようだ。あるファンが「就活なので応援メッセージをお願いします」「誕生日なのでメッセージお願いします」と持参した紙を渡してVienolossiメンバーの就活や誕生日のためのメッセージを他のファンに依頼している。また、「3尾生が歌う時に振ってください」とライブで使うペンライトを他の客に渡すファンもみられる。

2015621日定期公演フィールドノーツより)

 

この公演に来ていたファンは、年代問わず幅広かった。その中でも、4050代とみられる男性のファンが多くを占めていた。しかし、若い男性たちの集団や制服を着た女性も見られた。

さらに詳しい生態を調査するため、ブログやFacebookTwitterなどファンとみられる人のアカウントを調査したが、正確に年齢や性別が記されているものがなかったため、ファンの詳しい年齢、性別、構成などは不明のままである。

ファンは、メンバーの誕生日が近くなると誕生日メッセージを他のファンに書くように頼む、定期公演前にはサイリュウム4を配るなどしており、同じVienolossiを応援しているファンとして互いに連携している。また、公演で何度も顔を合わせているのかファン同士で挨拶をしたりしていた。ご当地アイドルの出演するイベントに集まるファンはある程度同じ人であることが多く、自然と顔見知りとなりやすいのではないだろうか。そういった環境ではファン同士は連携しやすく、より楽しんでアイドルを応援することができるといえる。

 

 このようなファンは、Vienolossiをどのような経緯で応援するようになったのだろうか。以下はVienolossiのファンをしていた男性のブログの引用である。

 

  以前はももクロやエビ中が好きでした。でも、見に行くには東京や名古屋などに行かねばならず遠いと思っていました。

当時ご当地アイドルが注目されていて、「富山 ご当地アイドル」で検索するとVienolossiがヒットしました。これがVienolossiを知ったきっかけです。

初めてVienolossiを見たのは、201355日で、第4回定期公演でした。

オイラは、若い頃ライブハウスでライブバンドを見るのにハマっていたことがあり、ライブハウスで歌うアイドルにハマりました。

また、物販などでの距離の近さにも感激しました。

こうしてVienolossiを応援するようになりました。

            (『ぶざびーのビエノ ログ』20161121日の記事より抜粋)

 

 このファンは、元はメジャーなプロダクションにより活動していたアイドルが好きであったようだ。しかし、そのようなアイドルのライブに見に行くことは困難であったようである。そのため、気軽に足を運べる地元で活動するアイドルグループに興味を持ち、ライブに行くようになったことがVienolossiにハマるきっかけになったそうだ。また、物販でのメンバーとの距離感にも触れていることから、メンバーと触れ合える機会もファンになるきっかけのひとつであるとわかる。

 このファンのように、ご当地アイドルにハマるファンの中には、メジャーなアイドルをきっかけにアイドルのファンになり、気軽に会いに行ける地元で活動するアイドルにも興味を持ち始めるという人が多いのではないだろうか。

 

第五項 活動詳細

 Vienolossiのイベント出演やメディアでの活動など、それぞれの活動についていくつか取り上げ、詳しく調査し、まとめる。Vienolossiは多くのイベント出演をしているが、そのイベント出演を主体型イベント、参入型イベントに分けて考察を行う。主体型イベントは、Vienolossiの事務所が主体となって企画、運営しているイベントとする。一方で、参入型イベントは、Vienolossiの事務所以外が主催している既存のイベントに出演しているものとする。

 

・主体型イベント 定期公演

 地元志向の活動であるVienolossiの定期公演は、月に約12回、富山駅前CiCビルの5階いきいき館内とやま劇場にて行われる。ライブは2時間ほど行われ、終了後に物販が行われる。料金は大人1000円、中高生500円、小学生以下無料となっている。しかし、827日の公演より、ライブの時間が伸びため、料金が一般1300円、学生700円と値上がりしたようである。

 とやま劇場は100人前後の人が収容できるような大きさで、それほど広いわけではないため、至近距離でステージにいるVienolossiのメンバーを見ることが可能である。目の前で行われる歌やダンスはもちろん、メンバーの変わりゆく表情まではっきりわかる。この距離感のなかでファンは「現場」にいる当事者として楽しめるのだ。定期公演は、月に12回ほどの頻度で行なわれ、値段も約1000円と全国区のアイドルと比べて安い。公演数の多さ、値段の安さもファンがVienolossiの公演を見に行くことを容易にしているといえる。

 

定期公演では、Vienolossiのメンバーとファンは一体となり盛り上がる。720日に行われた1尾生の藤井希来里卒業公演〜後編〜では、普段の公演以上にメンバーとファンが一体となっていた。以下は、その公演でのアンコールの様子を書いたフィールドノーツである。この公演は普段の定期公演より多くの観客が訪れたため、とやま劇場より規模が大きい会場で行われた。

 

 若い男性の集団が興奮して、服を脱ぎだす。上半身裸でコールをし、盛り上がっていた。ついには、持参した大きな浮き輪のシャチに卒業する1尾生の藤井希来里を乗せて、神輿のように担いでいた。他のファンは、それを温かく見守っていた。希来里はシャチの上でソロパートを歌い、ファンはそれに合わせてケチャ5をしていた。その後、シャチはステージへと運ばれ、希来里はステージに戻り歌っていた。また別の曲では、メンバー全員がステージから降りてきた。メンバーを中心にしてファンは大きな円を作り、一緒に歌って踊った。

2015720日定期公演フィールドノーツより)

 

 このように、Vienolossiの定期公演ではメンバーがステージから降りてくることもある。ファンは、ただステージにいるメンバーを眺めるだけではない。メンバーと一緒に歌ったり、踊ったりすることができる。これにより、会場全体が一体となり、大きな盛り上がりをみせる。ファンはこういった一体性に魅力を感じ、公演を楽しんでいるのではないだろうか。

 

 また、公演終了後の物販の際にあるチェキ撮影においても、ご当地アイドルならではの、アイドルとファンとの距離が見られた。以下は、チェキ撮影の様子についてのフィールドノーツである。

 

 ステージに2か所2つずつ椅子が並べられていて、そこで座ってチェキを撮る。ファンたちは、何枚ものチェキ券を買い、数人のメンバーとチェキを撮っていた。チェキを一緒に撮るメンバーは指名でき、また、ポーズなども指定できるようであった。チェキを撮る際には、実際にそのメンバーと話すことができた。メンバーはファンの名前を覚えているようで、仲良く喋っているようであった。初めての客に対しても、気さくに話をしてくれた。チェキにメンバーがメッセージを書き入れ、当日ないし次回の公演で直接手渡ししてくれる。

2015621日定期公演フィールドノーツより)

 

 このように、チェキ撮影ではメンバーと直接話すことができる。さらに、全国区のアイドルにおける握手会や撮影会のように大規模ではなく100人程度であるため、ファンはチェキを一緒に撮ったVienolossiのメンバーに顔や名前を覚えてもらえる。何度も通っているファンはメンバーと対等な立場で話すほどであった。メンバーと仲良くなれる、メンバーに自分を認識してもらえるということは、ファンにとって非常に嬉しいことである。このことがファンの心を掴んでいるのではないか。

以上のような定期公演におけるメンバーとの近い距離感によって、ファンは全国区のアイドルではなくVienolossiに魅力を感じているのではないかと考える。地元のアイドルということで気軽に会いに行けるだけでなく、アイドルと親しくなることが可能である。こういった距離が、ファンにまた公演に行きたいと感じさせ、何度もVienolossiのもとに足を運ぶようになり、そしてVienolossiの虜となるのではないか。

 

・主体型イベント ビエノカフェ

 Vienolossiが主体となり開催しているイベントとして、ビエノカフェがある。2015年夏・秋に期間限定でオープンしたカフェである。メンバーが店員となり、オリジナルのドリンクやフードを提供している。メンバーによるミニライブやチェキ撮影も行われる。現在は、県内の飲食店に訪問し、その店舗でイベントを行う出張ビエノカフェも行っている。

 

4-1 ビエノカフェ活動履歴

入場料:一般1000円、学生500円、小学生無料、 別途ワンドリンク500

メニュー:各種ソフトドリンク(メッセージ付きプラカップ)、オムライス・オムソバ・ホットケーキなど(デコレーション付き)、出張カフェの場合はその店舗のメニューも注文可

 

このビエノカフェはどのような内容のイベントなのだろうか。以下は、ビエノカフェに訪れたビエノロッシのファンの男性のブログやTwitterの投稿の引用である。

 

  りんりんドリンクを持ってきてくれました。りんりんにとっては初のビエノカフェで、オイラはずっとりんりんのビエノカフェ登場を待っていたので感激です。りんりん書いたメッセージカップもおそらく事前に書いたものでオイラ宛に書いたわけではないと思うのですが、りんりんのメッセージカップはうれしかったです。

 (「ぶざびーのビエノ ログ」2016126日の記事より抜粋)

 

 カフェでは、ドリンクやフードを注文する際に、メンバーを指定することができ、そのメンバーにカップにメッセージを書いてもらったり、フードにデコレーションをしてもらったりすることができる。また、そのメンバーに商品を提供してもらうことができるようである。

 

  メンバーまでの距離がとても近かったです。左の真横で見ていたのですがこんなに近いのははじめてです。1回目では、りんりんは左にはあまり来ませんでしたが、「雨のち晴れ」で左に来ました。こんな間近で歌い踊るりんりんが見れて感激でした。

(「ぶざびーのビエノ ログ」2016126日の記事より抜粋)

 

カフェの営業時間の途中にはミニライブが行われる。このミニライブは、普段の定期公演などでのライブパフォーマンスと異なり、メンバーがファンの近くまで来てパフォーマンスをしてくれるようだ。

 

私服なのがビエノカフェの魅力だったりする。

Twitter @buzabeee 2016123日の投稿より抜粋)

ところで、ビエノカフェ楽しかった♪(o・ω・)))

落ち着いた感じの私服りんりんも良かったし、間違えた時のしぐさとかたまに見るけどやっぱ、かわいいな😆

Twitter @rider_infinity 2016124日の投稿より抜粋)

 

 ビエノカフェでは、普段のライブ衣装とは異なり、メンバーは私服姿で登場するようだ。また、夏やハロウィンなどイベントと重なる場合も、浴衣などの衣装で登場することもあるようだ。ファンたちは、普段のイベントでは見られないメンバーの姿を見ることができ、ビエノカフェに魅力を感じている。

 

  りんりんに出迎えてもらい、りんりんにドリンクやフードを持ってきてもらい、りんりんのメッセージカップをゲットして、りんりんのステージを見て、りんりんとチェキを撮り、りんりんに見送ってもらいました。オイラにとっては、念願かない素敵な体験が出来たのでした。

           (「ぶざびーのビエノ ログ」2016128日の記事より抜粋)

 

 このように、ビエノカフェでは、アイドルとファンの距離感がとても近く、また、アイドルの様々な一面が見られることができると分かった。普段の定期公演やイベント出演でのライブパフォーマンスでは味わえないことを味わえる点がとても魅力的であり、ファンはよりアイドルの虜になると考えられる。

 

また、このビエノカフェは、県内の飲食店で開催されることもあり、その際は店舗のメニューも注文することが可能であるようだ。

 

  今日のビエノカフェでやってた場所、高岡の串焼き串揚げでん 初めて行ったが、あの店は美味しかった♪

            Twitter @sin_naoto 2016117日の投稿より抜粋)

 

 ビエノカフェをきっかけに飲食店に初めて行くファンもいることが分かった。そして、その店舗のメニューを注文し、食べることができることも、出張ビエノカフェの魅力であると考えられる。このように、ビエノカフェの中でも、出張ビエノカフェは、参入型のイベントの要素を持っており、県内の既存の飲食店の活性化にも、一役買っていると考えられる。

 

・主体型イベント ビエノウォーキング

主体となって開催しているイベントとして「ビエノウォーキング」もある。2015年秋に期間限定で開催されたイベントである。2016年秋にも数回開催された。これは、メンバーとファンが一緒に、富山県内の公園などをウォーキングするものとなっている。参加ルールは、ライブの物販で購入できるチェキ券3枚を提示することとなっている。このことから、コアなファン向けのイベントであると考えられる。実際の参加者も毎回少人数のようである。ウォーキングの時間は1時間以上あり、メンバーとのチェキタイムも設けられている。

 

4-2 ビエノウォーキング活動履歴

 

以下は、このビエノウォーキングに参加したファンのTwitterでのツイートである。

 

 @kana726911270 たくさん話せて楽しかったよ(^_^)また来年あれば参加したいな(^^)/

  (Twitter @youkuma24 20151119日の投稿より)

 

@satika821 こんな可愛い格好した幸香と環水公園行けるとかウォーキング神イベかよ😂

 (Twitter @inajun123 20151119日の投稿より抜粋)

 

このように、ビエノウォーキングでメンバーと近い距離で会話することができる点は、ファンにとって魅力的であると考えられる。1時間以上一緒に歩く時間があることや、参加者が少人数なことから、会話が楽しめる時間がほかのイベントに比べ長いと考えられる。

また、このウォーキングは県内公園を歩くため、富山県の観光地に訪れることができ、景色を楽しめるという点も、ビエノウォーキングの特徴ではないかと言える。

 

・メディアでの活動 「うわさの店探検隊」

 メディアでの活動のひとつとして、高岡ケーブルネットワークにて、放送された「うわさの店探検隊」がある。20144月から20163月まで計57回放送された。この番組は富山県高岡市内の飲食店や雑貨店など、うわさの店を紹介する情報番組である。リポーターとして、ビエノロッシが起用されており、毎回メンバーから12名ほどが出演している。メンバーが探検隊の隊員として、番組からの指令をもとに、お店を調査するものとなっている。番組は10分前後。毎日放送され、1日に4回ほど流れる。番組の最後には、プレゼントコーナーがある。

 番組内容は、メンバーが探検隊の隊員として、隊長からの指令を受け、その指令を果たすため、高岡市内の店舗を調査するというものとなっている。ビエノロッシメンバーが、高岡市内の飲食店や雑貨店、博物館などを訪れ、その店舗の紹介を行うものである。実際にその店舗のメニューを食べて紹介したり、店舗の従業員と会話をしたりする場面が多い。また、その紹介させる店舗にちなんだクイズを出し楽しませる演出もある。最後は、隊長へ電話をかけ、調査したお店の報告をする場面がある。また、プレゼントコーナーでは、紹介した店舗に関するプレゼントが当たる応募について紹介される。

 この番組の動画は高岡ケーブルネットワークが運営する高岡放送部というサイトにおいて、順次公開されている。ほぼすべての動画が100回以上再生されている。第1回の放送の動画は600回再生を超え、同サイトで公開されている他動画すべての中で6番目に多い。また、これまでに紹介した店舗についての紹介も公式のホームページに載せられている。

 Vienolossi2014年から富山県ケーブルテレビ協議会のイメージキャラクターとなっていることから、この番組においても起用されていると考えられる。

 

・インターネットでの活動 SNS利用

 VienolossiのメンバーはそれぞれTwitterをしている。また1尾生のメンバーはブログも行っている。

 メンバーはTwitterで、Vienolossiのイベントの情報を流し、宣伝を行っている。また、その公演、イベントの感想写真添えてつぶやくことが多い。さらに、Vienolossiとしての活動についてだけではなく、普段の日常についても更新することがあるようだ。

 メンバーの様子がリアルタイムでわかるTwitterは、ファンも多く利用しているようで、熱心なファンは、そのようなメンバーのつぶやきに対し、リプライを送っている。しかし、そのようなファンのリプライに対し、メンバーからの返事はあまり行われていないようである。

 

・県内イベント出演

 参入型イベントのひとつとして、201657日に高岡市で行われた「ねがいみち駅伝」を調査した。このイベントは、高岡古城公園を拠点に、市内3つのパワースポットをまわる駅伝大会である。4回目の開催で、約2400人が参加した。このイベントでは、ステージイベントも行われ、古城公園内の特別ステージにて、Vienolossiのライブパフォーマンスが行われた。Vienolossiは、3年連続でこのイベントに起用されている。また、ライブパフォーマンスだけではなく、駅伝ランナーの応援をする場面もあった。

 Vienolossiのライブパフォーマンスは、駅伝レースが終わった後、表彰までの間に行われた。ステージの周りには駅伝を終えた参加者が多くいたが、その他にVienolossiのファンと思われる男性たちや、女子高生なども20人ほどいた。ライブが始まると、ファンたちは普段のライブと同じように、大きな声を出し盛り上がったり、声を出したりしていた。他の観客たちも、徐々にステージの周りに集まり、ファンと同じように声を出したり、手拍子をしたりしていた。

 このVienolossiのライブの前後には、表彰式や企業PRなどが行われていたが、そのようなステージと比べるとライブパフォーマンスはファンや参加者が一体となり盛り上がっており、活気が見られたと考える。

 

 また、84日に高岡市で行われた「野村サマーフェスティバル」というイベントにおいても、Vienolossiが出演し、ライブパフォーマンスを行っていた。野村サマーフェスティバルは、高岡市庄川で行われた花火大会で、1740分から1回目のライブパフォーマンスが行われ、花火打ち上げが終わった直後の2030分から2回目のパフォーマンスが行われた。Vienolossi公式Twitterによると、ステージの前には約4000人もの観客がいたようだ。

参加メンバーは浴衣で登場し、オリジナルソングやカバー曲を披露した。2回目のライブパフォーマンスは花火が終了した直後であり、帰宅する人も見られたが、ステージ周辺にいた観客は、そのまま場所に残りパフォーマンスを見ている人が多かった。ステージ目の前では、Vienolossiファンと思われる男性たちがカメラを構えていたり、曲に合わせ踊っていたりした。このイベントでは、家族連れや中高生など幅広い世代の人が多く見ているようであった。メンバーが初めてVienolossiを見た人はと観客に向けて聞くと、その場にいた客の半分以上が手をあげていた。そのような観客もメンバーの声に合わせ、手拍子などをし、盛り上がっていた。最後に、Vienolossiについて自己紹介を行い、Twitterや公式HPについて紹介をしている場面も見られた。

 

 このような参入型のイベントにはVienolossi側にも利点があるのではないかと考えられる。参入型イベントでは、Vienolossiを見たことのない観客に対しても活動をアピールすることができる。地元での知名度を高めることができ、新たにファンを獲得することに繋がると考えられる。

 

・県外イベント出演

 Vienolossiの活動の中から県外での活動を抜き出し、表にまとめ、分析を行った。(表4-3

 

4-3 Vienolossi県外活動履歴(青:東京など都会での活動、色なし:その他近隣県での活動、緑:他グループ公演のゲスト出演)

 

 

 Vienolossiは県外でのイベントにも多数出演している。インタビュー調査においても、他の地域の人々に富山県のPRをしたり、ファンを獲得したりするために、県外での活動もやっていると述べている。実際にVienolossiの活動履歴を見ると毎年10回以上も県外でのイベントに出演している。

結成当初の2013年から県外でのイベントに出演しているが、この頃のイベントは、石川県や福井県など、北陸地方でのイベントが中心となっている。イベントも地域に密着したイベントやご当地アイドルが集結するイベントが多いようである。

 2014年からは東京など都会での活動も増えてきている。2015年は、20回以上も県外での活動を行っており、そのうちの半分以上が東京でのイベント出演である。イベントの規模も大きいものが多くなっており、ご当地アイドルに関わらず、アイドルが多数出演するフェスのようなイベントが増えている。

 特に、201581日、2日に東京のお台場で開催され、Vienolossiも参加した「TOKYO IDOL FESTIVAL 2015」は、2日間でメジャーやローカルを問わず154組のアイドルグループが出演し、51000人もの観客が訪れたとても規模の大きいイベントであった。そのため、他の地域の人々や他のアイドルファンなど多くの人にVienolossiを見てもらえた機会になったと考えられる。Vienolossiを応援するため富山から訪れたファンもいたようであった。

 

第四節 まとめ

 Vienolossiは全国のご当地アイドルの傾向から「地元密着型」のアイドルであると読み取れた。しかし、調査を進めると、地元に密着した「地元志向」の活動が中心でありながらも、「地元外志向」の活動と言える県外のアイドルイベントへの出演も積極的に行っている。Vienolossiの活動は「地元志向」「地元外志向」の2層で成り立っているといえる。

地元のイベント出演などの「地元志向」の活動は、Vienolossiが出演することでファンも訪れ集客も増え、そのイベントが盛り上がるという効果がみられる。実際に、その地元の方に感謝されたように、地域活性化に繋がっているといえる。一方で、「地元外志向」の活動は、他県の人々に富山県をPRすることや、アイドル活動を通してファンを獲得し、富山県に呼び込むという目的がある。インタビューから分かるように、実際に他県からのファンも富山県に訪れていることから、「地元外志向」の活動も地域活性化に大きく繋がっているといえる。

また、富山県の観光スポットなどを歌詞に取り入れた曲の発表も地域活性化に大きく影響を与えている。「15〜駈けてくる君に」などの曲は、県外での活動が増えてきたことにより発表されたようであった。曲において地域性を出すことにより、他のアイドルグループとの差異化を図り、オリジナル性を高めているといえる。さらに富山県をアピールすることができ集客に繋がるといえる。このような、地域性を取り入れた工夫は「地元外志向」の活動のひとつであると分かる。

さらに、インターネット・SNSを活用した活動も、地元外の人々にも提供できることから、「地元外志向」の活動と捉えられる。

 

 Vienolossiの活動を詳しく探っていくと、主体型のイベントとして行われている定期公演やビエノカフェ、ビエノウォーキングでは、ファンとの距離感が特徴であると分かった。アイドルとそのファンという関係性でありながらも、近い距離で会話を楽しめたり、メンバーの違う一面を見られたりと、さらにアイドルの虜になるようなイベントが多い。定期公演は結成当初から行われていたが、ビエノカフェやビエノウォーキングはここ数年のうちに開催され始めた。インタビューにおいて、ご当地といえどもアイドルとして活動していくにあたり、もっと人気を獲得したいと述べていたことから、継続して応援してくれるコアなファンを獲得するためにも、このようなメンバーと親しみを感じながら接することができるイベントに力を入れているのではないかと考えられる。

 このような主体的な活動に足を運んでもらうためにも、地元や県外でのイベント出演という参入型の活動を行い新しいファンを獲得することが重要となる。イベントへの出演の場では、Vienolossiを知らない人々に存在をアピールすることが可能である。イベントによって観客層にも違いがあり、幅広い層に対しアピールすることができる点は参入型イベントの利点であると考えられる。さらに、県外でのイベントは、他の地域の人々に対してVienolossiの存在や富山県のことを広めることができる。この県外イベントは結成当初から徐々に増加しており、「地元外志向」の活動も積極的に視野にいれているとわかる。