第二章 先行研究

第一節     Uターン就職の重要性

Uターン就職とは、自分が生まれ育った地域を離れて進学・就職した者が、何らかの理由で再び故郷に戻り就職することを指す。例として、富山県で生まれ育った者が東京の大学に進学したのちに再び富山に戻ってきて就職することなどが挙げられる。

 野間(2012)は、少子高齢化や生産年齢人口の流出で定住人口の減少に危機感を抱く地方にとって、Uターン就職は若年層の定住増につながるため、首都圏や関西圏に進学した学生の呼び戻しに各県が知恵を絞っていると述べている。

福井県ふるさと営業課(2012)は、地方が活性していくためには、これまでとは逆の都市圏から地方への新たな人材の流れを作っていくことが必要であり、故郷に人が戻ってくる、そして地域で学び、働き、生活できる動きを進めていくことが大切だと述べている。

 的場(2013)は、Uターン就職や地方で就職したいというような意向のある学生は、地元貢献意識が高いことから、彼らの定着により地方経済を支える人材を供給することにつながると述べている。

 野間(2012)、福井県ふるさと営業課(2012)の文献から、UIターン就職などによる都市から地方への優れた人材の還流が地方の活性化につながると期待されていることが読み取れる。実際のところ、Uターンを促すために人口流出が多い地域にある大学と連携を始めた県も多いようである。的場(2013)で述べられている通りUターンを希望している学生が地元貢献意識が高いのであれば、そのような人材が地元に戻ってくることで若年層の定住者が増加し地域経済を支えるような人材もおのずと増えるであろう。第一章でも取り上げた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、現在の日本は国際的に見ても首都圏への人口集中の割合が高いため、将来地方での著しい人口減少が発生すると見込まれている。このような中で、地方はどのようにして都市から人材の還流を図っていくのかが課題となってくるのではないだろうか。

 

第二節    Uターン就職における問題点

 的場(2013)は、全国の大学3年生987人を対象とし、就職にあたっての企業規模や地域選択などについてのアンケート調査を行った結果、Uターン就職を考えている学生の自由記述欄に「大学の授業と就職活動の両立が困難」、「大学での企業説明会の増加を求む」という意見が目立っていたことから、広域的に地方企業も呼び込んだ大学内就職説明会の実施など、学生の地方就職に対する支援の工夫を図ることが望まれると述べている。

福井県ふるさと営業課(2009)は、県外に進学していると、県内企業の情報やUターン情報が得にくくなることや、就職活動で地元と大学を何度も往復する必要があり、時間的・経済的に大きな負担になっていることをどう解決していくかが問題だと述べている。

 野間(2012)は、「実際に働くとなると勤務先が少ない」、「Uターン支援や就職状況など知られていない部分がある」などと述べている県があることから、Uターン就職には受け皿や情報不足といった問題があるとしている。

 

 以上3つの文献から、Uターン就職の困難さが読み取れる。まず、Uターン就職者は進学先と地元が離れているため、地元企業の情報が得にくい。もし情報を得ようとするならば、実際に地元に帰って合同企業説明会や個別企業説明会に参加する必要がある。ネットでも情報を収集することはできるが、それだけでは情報不足になるかもしれない。また、地元に帰るとなると移動時間や交通費がかかる。一度の帰省で済めばいいが、説明会と選考会の間が空いている場合はそうはいかない。複数社の選考を受ける場合もまた然りである。Uターン希望者は時間的・経済的な大きな負担を強いられているうえに、情報も得ずらいという苦境に立たされながら就職活動を行わなければならない。