第4章 分析

第1節 SNSの使い分け

 本節では、「SNSの使い分け」について利用者が複数のSNSをその用途などに応じて使い分けていくことについて明らかにしていきたい。

 

第1項 イメージに基づく使い分け

 調査をしていくことで利用者は個々のSNSに対するイメージを抱いていることが分かった。以下は各インタビュイーにそれぞれのSNSに対するどんなイメージを持っているか尋ねた際の語りである。

 

Aさん:えっと、Twitterは最初は友達がやってるからっていう理由で始めたんですけど、すごいフランクに気軽に何でも呟けるじゃないですか。で、それに対して、みんな友達も気軽にリプして、あの、返事してくれて、そういう気軽さが、最初は楽しかったですね。

 

Cさん:なんか、私の中で勝手なイメージで、インスタはおしゃれみたいな、Twitterはふざけてるみたいな()イメージがあって、だからTwitterに載せる写真はなんかほんとにふざけてたりとかどうでもいいことを載せるんですけど(略)

 

Dさん:その自分でやってるって言うよりも、なんとなく感覚からするとインスタは、なんか、なんだろう、おしゃれな人がおしゃれな写真を投稿してるイメージ。

Dさん:なんかFacebookはなんだろちょっとフォーマルなイメージ。なんか仕事上で繋がってたりとかそういうもの、なんか大人な人、大人な人っていうのもあれだけど、大人でも結構やってるイメージ。

 

 上の語りから、各インタビュイーは各SNSにそれぞれ異なったイメージを持っているようである。Twitterはフランクな場であるというイメージを持っており、気軽に日常のことをツイートできたり、コミュニケーションできたりする場であると言える。一方でFacebookは、大人が結構やっているイメージからフォーマルな場であるという印象を受けることが分かる。利用者はこれらのイメージに従ってSNSを使い分けている。例えば「暇だ」「おなか減った」という他愛もない感情を投稿する際は、Facebookを用いて投稿するよりも日常雑多なことを好きなときに投稿できるフランクな” Twitterを利用した方が理にかなっていると言える。

 

第2項 SNSでの繋がりの違い

 独立した空間としてSNSを使い分けていくということは、その繋がりにも違いが生じることだろう。ここではSNS上の繋がり、すなわちコミュニケーション相手とのSNSでの相互フォローの違いによって利用者はそのSNSを使い分けているのではないかといった仮説を念頭に置き分析を進めていく。

 まず、Twitterに関してどんな人と繋がっているのか調査をしたところ、以下のような回答が見られた。

 

中村:(中略)それぞれのSNSの交友関係ということでして、その、どんな人と友達だったり繋がっているのでしょうか?

Aさん:えーと、(Twitter)実際に友達、学校の友達とかと繋がってるアカウントはほとんど学校の友人ですね。

 

Bさん:Twitterでアカウント2つ持ってるんですけど、片方はその、顔知ってる友達で。

 

Dさん:Twitter今一番多いのは多分サークルの人かな?あと、誰がいるんだろう、高校の時の同級生と、あと、まあ人文学部の友達とか。

 

 Twitterでは、利用しているインタビュイーは主に顔を知っている普段の友人と繋がっていることが分かった。しかし、Twitterは複数アカウントを作成できるため、利用者は別に趣味のアカウントを作り、そこでまた少し違った人と繋がっていることについて後述していきたい。

 

次にFacebookに関して、利用しているAさん、Dさんに繋がりを調査したところ、以下の語りが見られた。

 

Aさん:(中略)Facebookは友達と(笑)結構大人の、TwitterとかInstagramとかやってない大人の方とか、あと親戚も。(中略)えっとまちづくりのサークルに入っててで、そういうまちづくりに、仕事は別にあって、えっと、土日とかに町づくりに関わってる大人の方

 

Dさん:Facebookは、んー、やっぱりさっき言った太鼓の団体があるんですけど、それの人たちと繋がってて、(中略)Facebookの方が、なんだろう、わりと外面、外面っていうか、かしこまった関係(笑)

Dさん:サークルの方もグループのアカウントができたからそっちの繋がりも増えたくらいですね。

 

 

 AさんはFacebookではサークルで関わる大人の人と繋がり互いに情報を発信し合っている。Dさんもまた自身の研究対象の「太鼓の団体」、すなわち大人の人を中心にサークルでの繋がりも増えてきたと語っていた。

 

 最後にLINEに関してAさんからDさん全員に繋がりを調査したところ、以下のような語りなどが見られた。

 

Aさん:LINEは、うん、友人と、あと家族とかちょっとサークルで大人の人と関わることが多いのでそういう大人の方の連絡先も知ってて(中略)

 

Bさん:LINEは全て顔を知っている人たちです。

中村:全て顔を知っている人たち。それはもう家族とかもそうですか?

Bさん:はい。

 

 上の語りからAさんBさんは全て顔を知っている人たちと繋がっていることがわかる。Cさん、Dさんに対しては後に追加で調査を行ったところ、いずれも友達や家族、バイト先の人など直接会う人だけがラインで繋がっている事が分かった。これらからAさんからDさん全員がLINEでは友人そして家族といった、顔を知っている繋がりを持っていることが分かる。

 よってSNSごとでは多少なりとも繋がりの違いがあることが分かる。それはつまり、TwitterFacebookLINEは基本的に顔の知っている友人と繋がっているが、Facebookでは時として自分の所属する団体と関わりのある企業の人や大人の人と繋がっていたり、TwitterFacebookでは繋がっていない家族とLINEで繋がっていたりするなど、多少SNSごとで繋がりの違いが生じているということである。

 

 

第3項 SNSごとの投稿内容の違い

 ここでは、SNSが投稿される内容によって使い分けが生じているのかどうかということに着目し分析をしていく。

 まずTwitterに関してどんな内容を投稿しているのかということについて利用者に質問を投げかけたところ以下のような語りが見られた。

 

Aさん:えーとTwitterの友達と、普通の実際の友達と一緒に使っているほうのTwitterは、えっとホントにその日あった、いつもと違うこと?ちょっと特別なことがあったらツイートしたりしますね。おいしい物食べに行べたりとか旅行行ったりとか、そういうことをツイートします。

 

Bさん:リアルの方は学校のこととか、「課題が終わらない」みたいな感じで(笑)とか、「今暇な人いる?」みたいな感じで(笑)そんな本当に、リアルな感じの

 

Cさん:暇つぶしで、なんか日々思うこととか、あと出来事とか、です。(中略)なんかテレビ見て感想言ったりだとか、友達と遊んで楽しかったとかそういうこと。

 

Dさん:Twitter大体サークルでライブがあって楽しかったみたいなこととか友達と遊んで楽しかったみたいなこととかを書いたり、あと、夜中にレポートしながら疲れたときに(笑)なんか現実逃避的な意味でちょっと「疲れた」って書いてみたりぐらいの感じかな。

 

 上の語りから、Twitterでは主に日常雑多な感情を投稿していることがAさんからDさんの語りで分かる。実際どんな投稿がされているのか下のAさんのログをもとに参考にしてもらいたい。(図2)


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                       (図2 Twitterの投稿ログ)

 

図2は全てAさんのログであるが、例えば一番上の「深夜に食べるラーメンほど美味いものはないのだ」や「ワーーーーーーーーー冬!!キョート!!!!!!!!!」のように、Twitterではその短い文字数制限によって投稿内容が主に日常雑多な事やその日あった出来事を簡潔に表した内容になっていることが分かる。なお、図2はプライバシーのため一部マスクした加工を施している。

 また、Twitterの投稿内容も「普段」「趣味」という2つのアカウントの違いによって違いが生じていることにも注目したいが、それは後の項で述べていくこととする。

 次にFacebookに関して利用しているAさん、Dさんにどういう内容を投稿しているのか質問を投げかけたところ、以下のような語りが見られた。

 

Aさん:FacebookはほんとにTwitterで呟くより特別なこと。海外旅行行ったりとか、1年に2、3回ある大きいイベントだけ呟きますね。

 

Dさん:(太鼓の)団体から「この練習日で今月はします」って来たらそれにコメント付けたりとかはする。なんか「この日は行けます」とか。あとは、まあ、流れてくるその繋がってる人たちに対して「いいね」ってするくらいですね。

 

上の語りからFacebookを利用しているAさん、Dさんに関して、Aさんは投稿内容が「Twitterで呟くより特別なこと」に限られていることが分かる。すなわち、Twitterで呟くような雑多な感情などはFacebookには投稿していないということである。Dさんは太鼓の団体との連絡手段や友人の投稿を閲覧するだけで自分から投稿はあまりしないと語っている。また、これらのインタビュー内容を裏付けるためにAさんからFacebookの投稿内容のログを提供してもらったので、そちらを参考にどのような投稿がされているのか参考にしてもらいたい。(図3)

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                     (図3 Facebookでの投稿ログ)

 

 

 図3はAさんのログであるが、文字数は比較的少ないものの、文章と一緒に投稿されている写真の多さや「〜ました。」「〜でした。」といった丁寧な文章からFacebookに投稿される内容がより日記的文章になっていることが分かる。Facebookでは文字数の多さや、よりさまざまな人と繋がるといった点から、Twitterと比べ投稿内容がより日記的、かつ丁寧な文体になっていることが分かるだろう。なお、図3もプライバシーのため一部マスクをした加工を施している。

 次にLINEではどのようなことを投稿しているのかということについて利用者に質問を投げかけたところ、以下のような語りが見られた。

 

Aさん:友達と連絡取るとか、もうほんと、「何時にここ待ち合わせね」とかいう話とかもうほんとくだらん会話とかもしますし(略)

 

Cさん:まあ普通に遊ぶ約束をしてとか、まあ飲みに行く、なんか計画立てたりとか、なんかそういうのとか。普通の会話?まあメールと同じような感じの事もしたりとか、まあ連絡とることもあったり、まあ普通にどうでもいいような会話をしたりって感じ(笑)

 

Dさん:なんか例えば遊びたいんに「遊ぼう」って、(Twitterで)遊ぼうまでは決まるけど、「じゃあ、詳細はLINEで」っていうのはあるあるだと思います。(中略)LINEは連絡手段。

 

 上の語りからAさん、Cさん、DさんはLINEでの会話内容が、主に誰かと連絡を取る手段としてLINEを利用しているためその連絡内容であることや、友人との普段の会話内容になっていることがわかる。

 また、LINEにはTwitterFacebook同様に広告や友人の投稿などの情報がタイムラインに閲覧される機能が備わっているが、その使用の有無と理由について調査したところ、以下のような語りが見られた。

 

Aさん:いや、えっと自分は投稿しないですね。(略)まあ見るのには使います。ニュースとか。

中村:なるほど。それはなんで投稿しないんですか?

Aさん:えー、なんか特に使おうと思ったことがないっていうか、まあでもLINEって家族とか親戚とかもいるんで、色んな人に公開してしまうのも恥ずかしいなって。

 

中村:LINEにタイムライン機能ってあるじゃないですか?

Bさん:全然使いません(笑)

 

Cさん:いや、使ってないですね(笑)

中村:LINEのタイムライン機能ってTwitterみたいな感じで使えると思うんですけど、それはなんで使ってないんですか?

Cさん:なんで?いや、まあそれはTwitterがあるからっていうのが一番大きいですね。タイムラインになんかそういうTwitterの事とか、まあインスタもやってるんですけど、そういう同じような事をのせることはしないですね。最初に私の中でTwitterTwitterでそういうことして、LINELINEでこういうことしてみたいな感じでというふうに振り分けてて、なんか不特定多数の箇所でなんか同じ事を載せるのは自分の中ではなんかめんどくさいというか、普通に一カ所でそういうこと出来れば良いかなみたいな感じで思ってるだけです。

 

Dさん:利用、たまに見るくらい。なんか「アイコンが変りました」とか流れてくるじゃないですか。それを暇なとき眺めるくらい。

中村:その、投稿っていうのはしないですか?

Dさん:投稿はしない。理由は、その、Twitterで発信するとかが主になっていて、他に何か増やす必要もないし、LINEは普通に個人のやり取りだけで十分かなみたいな。

 

 

 上の語りから、LINEに備わっているタイムライン機能をAさんからDさん全員が投稿するといった使い方をしておらず、利用したとしても流れてくるニュースを見るとか友人のアイコンが変ったことを眺めるくらいであるということが分かる。その理由として、Aさんは親戚等身内と繋がっているために投稿した事がそれらの人たちに見られてしまうのが恥ずかしいと答え、Cさん、DさんはTwitterがあるので同じような事は投稿しないという回答を見せた。これらのことから、Twitterユーザーは同じようなタイムラインに投稿するタイプのSNSとしてLINEを捉えておらず、あくまでも連絡をする、もしくは会話をするためのツールとしてLINEを利用していることが分かる。

 

 

第4項 Twitterの複数アカウント所持

 インタビュイーの中でAさん、Bさん、DさんはTwitterのアカウントを2つ所持していたが、ここではそのアカウントの違いによって主にアカウントごとの繋がり、投稿内容に違いが生じていることについて述べていく。

 まず、Twitterのアカウントごとの繋がりの違いについて以下のような語りが見られた。

Aさん:Twitterのあと自分が趣味で使っているプライベートのアカウントはえっとホントに顔も本名も性別も分からない人ばっかりです。性別は、まあ見てれば分かるんですけど、どこに住んでるかとか分からない人ばっかり。

 

Bさん:片方(趣味のアカウント)は全然知らない人たちと繋がっています。

 

 

 上の語りのように、Aさん、Bさんは趣味のアカウントを作成することにより、そこでの繋がりに違いを付けていることが分かる。そこでは普段顔なじみの友人ではなく、オンライン上で知り合った顔も知らない友人と繋がっていることが明らかになった。Dさんもまた趣味のアカウントを設けて趣味での繋がりを作っているという語りが得られた。

 次に、趣味のアカウントで投稿している内容について以下のような語りが見られた。

 

Aさん:趣味の方で使っているアカウントだとホントにその趣味の話ばっかり(笑)して、で、たまに普段の話とかするんですけど、学校の話とかするんですけど、(中略)

 

Bさん:(中略)で、趣味の方はなんだろう、ゲームとかそういうやつかな?そんな感じです。

 

中村:もう1つの今使わなくなった方のアカウントなんですけど、そこではどういう話をしていましたか、今まで。

Dさん:それは、うーん、なんだろう。その、まあ、ポルノグラフィティがなんかテレビに出たとして、そしたら、ああ、かっこいいみたいなこととか。

 

 

これらの語りから、趣味のアカウントは普段のアカウントとは違い、主にその趣味に関する投稿内容がメインになっていることがわかる。そしてそれを中心に個人が特定されないような日常の出来事や、雑多な感情を投稿していることがインタビュー調査から明らかになった。

 つまり、これまでのことを踏まえると、Twitterでは複数アカウントを作成することにより、その繋がりと投稿内容に違いを付けることが可能であり、インタビュイー達は「趣味」「普段」という2つのアカウントを使い分けている事が明らかになった。

ここで、複数アカウントを所持しているAさん、Bさん、Dさんに対して何故アカウントを分けようと思ったのか、その理由を尋ねたところ以下のような語りが見られた。

 

Aさん:やっぱり、凄いいっぱいの量呟くんで興味がない人にとっては凄いつまらないことだと思うし、やっぱり分けたいなって思って、なんか分けたいって変な言い方だと思うんですけど(笑)あんまり知られたくないっていうのが大きいんですけど

 

中村:知られたくない理由っていうのは深く説明できますか?

Aさん:なんか結構、結構色々言ってるんで、あの、毎日のちょっと嫌なことがあったら「こんなことがあった。もうやだ」っていう、趣味のことじゃないんですけどちょっとした愚痴とかも誰も周り、私の実生活では関係のない人ばっかなんでそういう愚痴をこぼしちゃったりすることもありますし。恥ずかしい、恥ずかしいのが一番。(中略)多分みんな興味ないことを1日中ツイートしてたって多分うるさいと思うし、タイムラインに私がいっぱいいると邪魔だと思うんで。

 

 

Bさん:いや、(趣味のアカウントを友人に知られたくないっていうのは)ありますね()なんだろ、明らかに趣味が違うなって人も、あの…いるんで、うーん、なんか中学のとき繋がってる子は結構趣味が合う感じの子たちばっかりだったんで、そのまま趣味アカにいても()大丈夫なんですけど、そのあととかの、アカウントの方で繋がった人たちの中には、そんなに話が()合わないというか…=

 

 

Dさん:えーっと、Twitterを聞かれるようになって、やってるの?みたいな。流行りだして。で、やってるけど、でも、教えたくなかった、そっち(趣味)のアカウントは。だから、もう1個作った感じ。

中村:それは何故教えたくなかったんですか。

Dさん:なんだろう、やっぱりちょっと恥ずかしい。な感じ()恥ずかしいし、そっちのアカウントはそういう、趣味だけのもので良いかなあって思って、分けておきたかったから。

 

 上の語りからAさん、Dさんは友人から趣味の内容や愚痴などが見られてしまうことが「恥ずかしい」と感じているため知られたくなく、そのためアカウントを分けていることが分かる。また、Aさんにおいては趣味に関する自分の多くのツイートが普段顔を見知った友人のタイムライン上にあるのは迷惑で気が引けるものだということも読み取れる。また、「趣味」のアカウントではAさんのように普段の愚痴なども投稿されるため、それが顔見知りの友人に見られてしまうことは避けたいという考えがあることも分かる。Bさんにおいては、かつての友人が趣味の合う友人だったためそのまま趣味のアカウントで繋がっていても良いのだが、今付き合っている友人とは趣味に関して話が合わないと感じているため趣味のアカウントと普段のアカウントの2種類を作成していると語った。

 

第5項 第1節のまとめ

 ここではこれまで本節第1項から第4項まで述べてきたことをまとめ、第1節の目的であるSNSがどのように使い分けられているのか分析のまとめとしていきたい。

 まず、第1項では利用者が各SNSに対して何らかのイメージを持っており、Twitterに対しては「フランク」なイメージを持ち、一方でFacebookには「フォーマル」といったイメージを抱いていることが分かる。しかしLINEに対してはTwitterFacebookのように抽象的なイメージを抱くというよりは、「連絡手段」といった明確な利用目的であることが明らかになった。

 次に第2項ではSNSごとの繋がりによりSNSを使い分けているのかどうかを分析したが、SNSごとで見た場合TwitterFacebook、そしてLINEの繋がりの違いは多少あり、Twitterでは顔見知りと繋がっており、Facebookはそれに加えさらに年齢層が上の人と繋がっているという結果が見られた。また、それらを含めた多くの顔見知りと繋がっているのがLINEであるといった結果になった。

 第3項ではSNSごとに投稿内容に違いをつけてSNSを使い分けているのか調査を行なった。これもまずSNSごとに見ると、Twitterではどうでもいいことや日常雑多な感情等を投稿するのに対し、FacebookAさんのように「Twitterで呟くより特別なこと」を投稿するケースが明らかになった。そしてLINEでは利用者はそのタイムライン機能を投稿するといった利用をせず、連絡手段や友人との会話の内容がやりとりされていることが明らかになった。

 第4項ではTwitterの複数アカウントについて利用者にその利用事情に関して調査を行った。その結果、Twitterのアカウントは「趣味」「普段」といった2つのカテゴリーに分かれているケースが多く、その理由として多くは「恥ずかしくて知られたくないから」という理由で、その他にはAさんのように「自分の趣味に関するたくさんの投稿が顔見知りの友人のタイムラインにあるのが嫌だ」といったことも理由になっていることが明らかになった。

 また、Twitterという1つのSNSの中の複数アカウントではその繋がりがおおよそ「趣味」「普段」という2種類に分かれていること、そしてその投稿内容も「趣味」アカウントでは主に趣味の内容、「普段」のアカウントでは普段の私生活の内容といったアカウントごとに異なっていることから、Twitterという1つのコミュニケーション空間の中にも「アカウントごとの空間」が別に存在し、利用者はアカウントを適切に使い分けていることが明らかになった。

 これにより、Twitterの複数アカウントも含めると、SNSの使い分けが起こる時、「投稿内容の違い」と「繋がりの違い」の2種類の違いが存在することが考えられる。これまでの調査からTwitterでは日常的な投稿、Facebookでは日記的投稿がされるといった、内容に違いが生じていること、そしてAさんのようにFacebookでは普段付き合いのある友人の他に、サークルなどで関わる大人と繋がっているといった、多少ではあるが繋がりの違いが生じていることが明らかになった。LINEについては第2節でも述べるが、繋がりが似ているのにも関わらず、Twitterで会話するよりもさらに密なコミュニケーション内容や誰かとの連絡内容を展開することが明らかになった。さらにそこへ利用者がSNSに対するイメージを構築させていることから考えると、SNSの使い分けとは、まず前提的に利用者が各SNSにイメージを構築させていること、もしくは時としてSNSごとの繋がりが違っていることが必要となる。それが利用者の投稿内容に違いを生じさせたり、利用するSNSを選択させたりすることが起こる。これが「SNSの使い分け」として機能しているのである。

 

 

第2節 SNSの連携利用

 ここでは、第1節のSNSを使い分けていくこととは別に、利用者がSNSを同時的に複数利用し、コミュニケーションを行なっている様子を見ていく。例えば、本節でも紹介していくが、あるSNSの共有機能によって他のSNSの投稿が共有され、1つの投稿が同時に2つのSNSで投稿されるといったケースであったり、時にはSNSを同時的に複数利用し、コミュニケーションを適切にとっているケースである。これらの他に利用者がSNSを利用する際、1つだけではなく、2つ以上のSNSを同時に組み合わせて利用することを、ここでは「SNSの連携利用」と称し焦点を当てていく。

 

第1項 コミュニケーション空間の移転

 ここではオープン、クローズなSNSのミュニケーション空間が利用者によって同時に平行利用され、利用者はそのコミュニケーション空間の間を自由に行き来する様子について迫っていく。

 まず最初に注目したいのはオープン型のSNSからクローズ型のSNSにコミュニケーションが移転していくことについてである。利用者がオープン型からクローズ型のSNSへコミュニケーション空間を移転する際について以下のような語りが見られた。

 

Aさん:あー、なんか細かい話になってしまうとLINEの方が楽なんですよ。

中村:へー、それはなんでですか?LINEの方が楽っていうのは。

Aさん:なんかすぐ、あの会話履歴見れるっていうのと、送りながら細かいところの会話履歴まで見れるんで、ですね。あとなんか、リプライってこう、例えば私と中村さんがリプライで会話してたら私と中村さんをフォローしてる人が見れちゃうじゃないですか。なんか、タイムラインで邪魔だし、ちょっと見られたくないかなみたいな(笑)

 

中村:LINEに切り換えてやり取りをしたりだとかはしないんですか?

Bさん:そうですね。Twitterから始まった話だとそのままやっぱTwitterのままで話し合ってしまいますね。その個人情報が出たりしそうな時はLINEにしますけど、どうでもいい感じの話だと、そのままTwitterにします。(中略)だいたいは、やっぱLINEに移行しようみたいなことをツイート、リプライして、それからいきますね。

 

 

中村:例えば遊ぶ約束っていうのを、Twitterでするとするじゃないですか。そしたら細かい話をするためにLINEの方に切り替えたりって=

Cさん:ああ、しますします。

中村:それはなぜですか?

Cさん:やっぱり、Twitterのリプライってフォロワーの多くの人が見てるわけじゃないですか。で、そのフォロワーの人のタイムラインに載るじゃないですか。なんか、嫌じゃないですか?なんかいっぱいリプライがあったらその、見てる人もなんか「そんな話別のところでやれよ」って思われるだろうし、なんか時間とか場所とか細かいことを話してたらそれも全部ダダ漏れじゃないですか。なんかちょっと嫌じゃないですか。「あー、ここで遊ぶんだこの人」みたいな感じで、なんか事前に見られるのが凄い嫌で。で、途中で「遊ぼう」みたいな感じで話が決まったらもうLINEにして、もう個々のやりとりにしてしまう。

 

中村:細かいことはLINEの方に切り替えるっていう使い方が、まあちょくちょく見るんですけど、そういう使い方っていうのはされてますか?

Dさん:ありますね。なんか例えば遊ぼうまでは(Twitterで)決まるけど、「じゃあ、詳細はLINEで」っていうのはあると思います。

中村:なるほど。それはなんでそうやって切り替えるんですか?

Dさん:それはやっぱりフォローしてる人全員に見えちゃうからで、なんかタイムラインに流れるわけだから、なんかそんな話だと他人に見せる話じゃないし、別に、個人的にやり取りするべき内容かな?というか。

 

 

上の語りからAさんはTwitterでの会話の内容がより詳細になっていくと会話履歴がすぐに見れるLINEの方に話題を持っていくようである。Bさんはプライバシーが出てくるようだとLINEに話題を切り替えるといった移転を見せた。Aさん、Cさん、Dさんはどこで、何をして遊ぶ等の詳細な会話内容がフォローしているユーザーに見られてしまうことが嫌で、そのような内容は個人の間でやり取りされるべきと感じているため、LINEにコミュニケーション空間を移転させ会話を継続させるケースが見られた。

 このように、利用者はオープンなコミュニケーション空間を持つSNSからクローズなコミュニケーション空間を持つSNSへ会話を移転させるといった、2つのタイプのコミュニケーション空間を持つSNSを組み合わせてコミュニケーションを行なうといった行動が見られた。その行動に迫るためにも、まずはもう一度オープンなコミュニケーション空間、クローズなコミュニケーション空間とはどのようなものなのか明らかにしておきたい。

 まず、「オープン」なコミュニケーション空間というのは基本的にはその内容を第3者が閲覧できてしまう空間、そして繋がりを作るのに「申請と承認」という過程が存在しない空間のことであると先行研究をもとに定義し直しておきたい。一方「クローズ」なコミュニケーション空間とはその逆で内容が第3者に閲覧できないこと、そして繋がりを作りより深くまで内容を見るためには「申請と承認」という過程を通らなければならない空間のことであると定義し直しておく。

 ここで再び先行研究を考えるとTwitterは設定による鍵アカウントとならない限りその繋がりは広く自由であり、繋がりを持っていない第3者でも投稿内容を閲覧することが出来る点からオープン型のSNSである。Facebookはタグ付けされない限り、繋がりを持っていない利用者の投稿を閲覧することは出来ず、そのためには友達申請をし、承認されなければならない点からクローズ型のSNSであり、LINEは会話の内容が当事者以外には閲覧することが出来ない点からクローズ型のSNSであると言える。

 第1節の、ある1つのSNSを用途に応じて使い分けていくこととは別に、利用者はこのようにしてオープン、クローズという2つのコミュニケーション空間を持つSNSを連携させたコミュニケーションを行なっていることが分かった。

 

第2項 相互参照として連携利用されるSNS

 SNSが連携利用される近年では、それらが相互参照される形で繋がりを持ち、同時並行利用されていることにも注目しなければいけない。つまり、ここではある1つのSNSの投稿内容が別のSNSによって共有され多くのフォロワー達に閲覧されているといった同時平行利用のされ方を見ていく。

 まずは次のページの画像を見てほしい。(図4)

 


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       (図4 Instagramの投稿が共有されたTwitterのログ)

 

 上の画像はAさんがTwitterに投稿した内容なのだが、これはInstagramURLが一緒に投稿され、そこをクリックすればInstagramの投稿内容を閲覧することが出来る仕組みになっている。図4で言うと、「instagram.com/p/BJ7CC-…」のURLである。

 また、これはInstagramで画像を投稿する際、オプションでTwitterを共有先に選択すれば、Instagramで投稿されると同時に利用者のTwitterにも同じ内容が投稿されるといった、1回で2つないしそれ以上のSNSに同時に投稿が出来るといった便利な機能になっている。

 本調査ではこのような行為をなぜするのか質問を投げかけたところ、InstagramユーザーであるAさん、Cさん、Dさんからそれぞれ以下のような回答が得られた。

 

Aさん:なんかそのInstagramやってる友達が少なくて、Instagramで投稿しようと思ってしても、この人と一緒にやったこと、例えばaさんと一緒にやったことをaさんがやってないSNSでアップするのはちょっと申し訳ないなみたいな。なのでaさんに伝わるようにTwitterにリンクかけたらaさんも「あ、この子インスタにもアップしたんだな」って伝わるかなと。

 

Cさん:なんかそのInstagramをやってない人に対しても、なんか、見てほしい、違う、見える?例えば一緒に遊んだこととかInstagramに載せたとして、そこに写ってる人が例えばインスタやってなかったら、その人見れないじゃないですか。だから、連結させてTwitterにも載せたらその人も見れるからその人からいいねが来たり。Twitter。(中略)何かでも私はその記録としても残したくて、その日記じゃないですけど、そのただ単に人に見せたいからってわけじゃなくて、自分の中で思い出としてとっておきたいから、だからそうやってやってて、それで連結させてその一緒に遊んだ子とか一緒に飲みにいった子とかにも見てもらうって感じです。

 

Dさん:なんかTwitterの方がいっぱいフォロワーがいるから、載っけてまあインスタの方も、その見たい人も友達でフォローしてくれれば良いかなと思うし、まあそれぐらいかな。(中略)そのフォローしてくれれば良いかなっていう中にはその、Twitterにも載っけた方がインスタでフォローしてない人も見るかもしれないっていう、大勢に見せたいみたいな

 

 上の語りからInstagramを利用しているAさん、Cさん、Dさん全員が「Instagramをやっていない、もしくはフォローしていない人にも見せてあげたい」というような回答を見せていることが分かる。そうすることによって一緒に遊んだ人にもその内容を見てもらいたいという気持ちが強いことが伺える。特にその中でもCさんは一緒に遊んだりしたことを友達に見てもらうだけでなく、それが自分の記録として残したいということも語っている。

 筆者はInstagramを利用している学生はまだそんなに多くないのではないかと考える。ではなぜ上記のようなTwitterよりも利用者が少ないと思われるInstagramを利用しわざわざ共有をするのだろうか。画像を投稿するだけならばTwitterFacebookだけでも完結するはずではないだろうか。しかし、それがわざわざ画像投稿型のSNSを利用し、相互参照といった連携利用を見せるのは、InstagramTwitterFacebookの画像投稿機能より、より細かく写真編集ができ、TwitterFacebookでは出来ないような加工が可能であるという優位性を持っているからである。

 また、本章第1節第1項では、インタビュー調査で利用者がInstagramに対し「オシャレ」といったイメージを持っていることが明らかになった。これはInstagramがその持ち前の加工技術を駆使し、一枚の写真を「オシャレ」な写真へと仕上げてしまうからであるということが考えられる。このようなオシャレな画像を投稿したい利用者によって、Instagramで加工した写真を投稿し、ついでにTwitterにも投稿してより沢山の人に見てもらいたいという目的で、Instagramと他のSNSが同時に連携利用されるのである。この他にも、あるSNSの投稿を別のSNSが共有したり、SNS同士が何らかの形で相互参照されるケースが存在する。このようにして、1つのSNSの内容を別のSNSがシェアするという繋がりを持ったSNSの相互参照が、片方のSNSをやっていないユーザーに有効に働いているという事例も見られることに注目していかなければならない。

 

 

第3項 第2節のまとめ

 本節第1項から第3項までをまとめると、まずSNSには「オープン・クローズの使い分け」と「SNSの相互参照」という2つのタイプの連携利用が存在することが分かる。前者については、その会話内容の秘匿性の高さによって利用者はオープン型のSNSだけではコミュニケーションを取ることが困難になり、クローズ型のSNSへ会話を移動させること、つまり利用者はオープン・クローズの2つのタイプのSNSを持ち合わせていなくてはスムーズにSNS上でのコミュニケーションを取る事が出来なくなっていることが考えられる。一方でクローズ型からオープン型への移転は、その密な会話内容をわざわざオープンな空間へ移してすることはマナー違反だと考えられるため見られず、クローズ型からさらに密なFace to Faceへと会話が移転していく様子は見られた。第2項ではもはや利用者の間でメールに代わり、よりリアルタイムに交信されるLINEへと会話が移転していく過程が見られたが、このことから筆者はコミュニケーションの内密性、迅速性の両方を満たすことにコミュニケーション空間の使い分けというSNSの連携利用は有効に機能していると考える。

 そして「SNSの相互参照」ではコミュニケーション空間を意識するのではなく、むしろよりオープンな場で公開させることによって、多くのユーザーに見てもらいたいといった意識のもと、あらかじめアプリ上で設定されたSNS同士が連結し合い、それを利用者が有効に利用し同時並行利用を見せているといったことになっている。ちなみに、これらSNS同士の連結以外にも、利用者はサイトのURL等をTwitterに貼付けて投稿するなど、サイトとSNSを連結させ、共感を得ていく行為もインタビュー調査の中で明らかになった。つまりSNSにはSNSを始め様々なものと連結させる機能があり、利用者がそれを有効利用することによって情報がより多くに拡散し多くのユーザーのもとへ届くといった狙いのためにこの「SNSの相互参照」という連携利用はされていることが考えられる。