第四章 分析

 インタビューから読み取れるコスプレイヤーの行動について、宮本の挙げたプロセスを元に分類、分析を行う。また、どのプロセスにおいても共通してコスプレイヤーが持っていると考えられる、コスプレに対するモチベーションや作品、キャラクターに対する愛情についても分類項目として設け、各プロセスと区別して分析する。

なお、以降作品名、キャラクター名やその愛称は二重引用符(“”)で囲む。また、コスプレするキャラクターの登場する作品、模倣の下敷きとなる作品を「原作」と表現する。

 

第一節 モチベーション

第一項 始めたきっかけとモチベーションの維持

 コスプレイヤーはどのようなきっかけでコスプレを始めたのだろうか。以下のような語りが見られた。

  

K:昔おっきいイベント(*同人誌即売会)があって、そんときに、中学校のときに、ちょっとやってみようっていって、皆で遊びでやったのがきっかけです。

 

A:多分Fちゃん(*Aさんの友人)に誘われたんだと思う。

 

このように、コスプレを始めたきっかけについては友人に誘われたからという理由が多く見られた。一方で次のような語りも見られた。

 

中谷:はい。なんかオタク活動してたい。

S:そう、なんか表現活動を、絵でしてる人が羨ましかったから、じゃあコスプレするわって。で、コスプレしたらイベント行ったときに、友達も増えるし、という下心もあり、しました。

 

このように、イラストなどの表現活動の代替手段とするためにコスプレを始めたというものも見られる。コスプレイヤーは、コスプレを始める以前からアニメ、漫画が好きなオタクであることが多い。オタク文化の内では、ある漫画、アニメ作品に対する自らの解釈や主義主張をイラスト、漫画、小説などの形にして表現する二次創作活動が盛んである。また二次創作活動には、自分がその原作を好きなことをアピールできる、同じ原作が好きな友人を見つけられるという効果が期待できる。Sさんは二次創作のそのような効果を期待し、イラスト、小説などの代替手段とする目的でコスプレを始めている。

では、コスプレを続けるモチベーションとなっているのは何なのだろうか。

 

S:今は、むしろその一緒にやってきた友達がいっぱいいて、その子らと一緒につるんでること自体が楽しいのもあるし。

 

中谷:(高校卒業後にコスプレ活動を再開させたことについて)……そこから、ある程度続けられた理由って、交流目的が大きいんですか?

K:そうだねー、友達がやるから一緒に合わせでやろーっていう。最後の方ほとんどイベント行かなくって、撮影会に呼ばれたら行くって感じだったから。

 

イベントや撮影会では、特に同じ作品が好きなコスプレイヤーから声をかけてもらうことが多いそうだ。そうして出会ったコスプレイヤーとコスプレ活動を続ける内に親しくなり、交流を持つことがコスプレを続けるモチベーションとなっているようだ。

また、こちらでもコスプレを始めたきっかけと同様に、イラストなどの代替手段としてコスプレを扱う語りが見られた。

 

A:自分がこれを好きっていうのを、なにで表すかって考えたときに、自分で作るってほうよりも、コスのほうが出てきたの。好きな人と喋る、手っ取り早く喋るためには、仲間内と…仲間を簡単に見つけるため?には、自分は絵描けないし文章も書けないし、とあとグッズもないし、コスなのかなぁって、なったのかな?

 

イラストや文章をかいて原作への愛情を表現するのと同じように、コスプレをすることで自分がその原作が好きであることを表現している。また、それによって同じ原作が好きな人との交流がしやすくなるとAさんは語っている。


 

第二項 作品、キャラクターの選考と表現方法

コスプレイヤーはコスプレする作品やキャラクターをどのように選んでいるのだろうか。作品の選考基準について、Sさんは次のように語った。

 

S:今自分が見てて、今見てる作品とか、最近読んだ漫画とかで、おもしろいって思ったらコスプレしたいなってなるし

 

S:別に自分の好きなやつじゃなくても、一緒にいて楽しい子が好きなジャンルだったらやってあげたいし、私“うたプリ”とかやったことないけどコスプレしてるし

 

 自分の好きな作品のコスプレはもちろんだがそれだけではなく、自分はあまり知らない作品であっても友人のためにコスプレをすることがあるそうだ。では、作品の中からどのようなキャラクターを選び、コスプレをするのだろうか。

 

K:やりたいと思うキャラは、好きなキャラだったら1回はやってみたいなって思うけど、あとは、誰かが好きなキャラやってくれるんやったら、それと絡めるキャラやりたいなってのは、あるね(笑)

 

Kさんは、自分が好きなキャラクターのコスプレよりも、好きなキャラクターと絡むことのできるキャラクターのコスプレをすることが多い。その理由を、自分が好きなキャラクターと自分がコスプレをしているキャラクターをペアとして好きだからと語った。

 

K:それは好きなキャラなのとー、撮影会のメンツにあっ一人足りないねっていうふうにやってるから。

 

また、撮影会や合わせでは特定のキャラクターを集めて撮影を行うため、事前に自分がどのキャラクターのコスプレをするか決める必要がある。撮影会に参加する際は、他のコスプレイヤーとの兼ね合いを考慮した上でキャラクターを選択しているようだ。

またSさんはコスプレをするキャラクターの選考基準について次のように語ってくれた。

 

S:私は好きなキャラやりたい派。でも、好きなキャラのその衣装を自分で持ってることによって、あわよくば人に貸すことができるから、そしたら自分の好きなキャラを撮ることもできるし、別のキャラで好きなキャラの横に立つこともできるから、そういう下心もあって、最初に好きなキャラやります。

 

Sさんは基本的には自分の好きなキャラクターのコスプレをするようだ。加えて筋骨隆々の男性キャラクターなどの、自分には明らかにできそうにないキャラクターを除外し、衣装の入手・製作難易度を考慮した上でキャラクターを選んでいる。自分の好きなキャラクターと絡むことのできるキャラクターのコスプレをしたいという語りはSさんにも見られた。こちらは「好きなキャラクターを自分が撮影したい」「好きなキャラクターの隣に立ちたい」という理由からである。

Aさんはコスプレを始めたばかりの頃と現在ではコスプレするキャラクターの選考基準が変わってきたようだ。

 

A:これは最近変わったからあれなんだけど、“スガさん”より前までは好きなキャラって逆にできなくて。一番好きなキャラって尊すぎてできない。

中谷:なんか、自分がやってこれじゃない感?

A:そうそうそう。自分でやって納得いかないのもわかってるし、自分の手でそのキャラをよごしたくない。し、そのキャラが好きだから、そのキャラに絡みに行きたい。そのキャラと話がしたい。

 

コスプレを始めた当初は、自分の好きなキャラクターのコスプレをすることができなかった。その理由は自分でコスプレをしても納得できないから、自分の好きなキャラクターのコスプレをした他のコスプレイヤーと交流をしたいからだと語った。

 

中谷:当時は、好きなキャラと絡めるキャラって感じ。

A:そうそうそう。で、別に反応とか自分に似合うとかは考えてなかった。ただ、その好きなキャラの中で、自分ができそうなキャラ。

 

Aさんは、好きなキャラクターと一緒にいて不自然でないキャラクターの内から、自分がコスプレしやすいキャラクターを選んでいた。しかし、コスプレ活動を再開してからは、自分の好きなキャラクターのコスプレしかしないと言う。その理由について、次のような語りが見られた。

 

A:自分の好きなキャラでも好きなキャラやってる人に絡みに行けるんだってことがたまたまわかって。

 

 自分の好きなキャラクターのコスプレでイベントに参加した際、自分と同じキャラクターのコスプレをしているコスプレイヤーとも交流することができた。それがきっかけとなり、自分の好きなキャラクターのコスプレをするようになったのだと言う。

 

A:好きだからが理由にならないとやっちゃいけないって思ってる頭があるから、好きだからが理由になってから衣装ポチった(*ネット通販で購入した)。

中谷:なるほど。そこはなんか、自分の(A:そう、ある種自分の)基準っていうか。

A:そこは超えないと、そのキャラのことを好きな人に失礼だと自分では思ってるから、自分がコスするときはそうしようとは思ってる。はい。

 

また現在では、好きではないのにコスプレをすることは、そのキャラクターを好きな人に対して失礼にあたると考えている。キャラクターを好きになることができてからコスプレをするように心がけている。

 

調査対象の3名の女性コスプレイヤーは全員、女性キャラクターよりも男性キャラクターのコスプレをすることが多かった。やはり女性は男性キャラクターを好きになることが多く、「好きなキャラクターのコスプレをする」という選考基準があるため、男性キャラクターのコスプレをすることが多い。

しかし、それとは別に女性キャラクターのコスプレを避ける語りが見られた。Aさんは女性キャラクターのコスプレについて以下のように語っている。

 

A:例えば女キャラだったら、スカート穿いてるから足出さないといけないとかがあって。普通に考えてこの腕でこの足で足出す?ってなって。それはそのキャラのことを好きな人に対してそうとう失礼だし。(中略)それを考えると、それを上回ってでもやりたいほどの気持ちのキャラってそんなにいなくて。

 

女性キャラクターのコスプレには、スカートをはいて足を出さなければならない衣装もある。Aさんは自分がそのような格好をすることに対して納得がいっていない。また、納得できない気持ちを上回るほどの、そのキャラクターのコスプレをしたいという思いもないため女性キャラクターのコスプレは避けがちである。

 

A:女性キャラのコスをすると男性のカメコさんがついたりしていろいろこじれたりとかするのがあるから。それに、あの、女の人のコスプレをする人って、まあ言うたらあれだけどヒロイン脳の人が多い、から。自分がちやほやされたくてやってる人がけっこういる。(中略)別に男の人と絡みたくてやるわけじゃないのに、結果的に男の人に声かけられたりとかするの、じゃん。まあでも写真撮ってもらうくらいいいかつって写真撮ってもらってたらそれはそれで、あああの人ヒロイン脳だ、あの人男の人と絡みたくてやってんだつって。ていう頭の小っちゃい人もいるから。そうやって考えて、男キャラだったらあんま何も考えずにやれる。

 

 「カメコ」とはカメラマンを意味するジャーゴンだが、女性キャラクターのコスプレをすると男性カメラマンから声をかけられることが多いそうだ。そのため、周囲から「男の人と絡みたいから、ちやほやされたいから女性キャラクターのコスプレをしている」と誤解される恐れがある。そのような誤解を抱かれたくないため、女性キャラクターのコスプレを敬遠しがちであるそうだ。

 

キャラクター選考の語りから、自分の好きなキャラクターのコスプレをすることが多いことがわかった。また、好きなキャラクター以外のコスプレをする場合も、好きなキャラクターと関係のあるキャラクターのコスプレをしており、根底には自分の好きなキャラクターへの想いがある。このことからコスプレイヤーは作品愛、キャラクター愛を抱きながらコスプレ活動をしていることがわかる。そのため作品、キャラクターへの愛をどう表現できるかがひとつのポイントになるが、この愛についてコスプレイヤーたちはどのように考えているのだろうか。

 

K:うん、キャラ愛…、うち本当に好きキャラをやったっていうアレが、“ミスタ”は好きキャラやったからキャラ愛かもしれんけど、あんまり経験がない。だいたい好きキャラは人にやってもらってその周りをやるパターンやったから。なんだろな、作品愛のほうが強いかもしれない、もしそのキャラクターをやるとしたら。

 

Kさんは、自分が好きなキャラクターのコスプレをする場合と、自分以外の人に好きなキャラクターのコスプレを、自分はその隣のポジションにいるキャラクターのコスプレをする場合との両方に魅力を感じている。キャラクターへの愛情というよりも世界観へ没入したい欲求を愛と感じているようだ。

 

S:だからなんか二次元に近づけようとする人もまあそれはそれでキャラ愛なんだけど、それが三次元の方に近づいてきてもらう努力をしてる人もそれはそれでキャラ愛なんじゃないかなって思うな。

 

S:うちの場合はそもそも絶対数が少なくてあまり知られてないジャンルだから、こんな面白いものがあるんですよっていうアピールをしたいなって思ってて。だから…もうそもそもコスプレしてる人がいないとか…もう日本で3枚しか写真がないみたいなのもやってるから、そうなってくるとキャラ愛ってもうやること自体がキャラ愛だよねそうなるとさ。もう衣装も売ってないし誰からも評価されないんだよ。

 

Sさんは、漫画・アニメの世界(二次元)を現実世界(三次元)で再現しようとする努力にキャラ愛を感じているという。またSさんが好きな作品、キャラクターは認知度が低いため、衣装を一から自作しなければならない、コスプレをしても誰からも評価されないといった苦労がある。それでもそのキャラクターのコスプレをすることがキャラ愛だと語っている。

 

A:ただ、“鳴狐のこと好きな人に、こんなの鳴狐じゃないとは言われたくないから、鳴狐のことできるだけ勉強して、“鳴狐”だったらどうなるかどうするかっていうことを自分なりに考えて、自分なりの“鳴狐”像を作って、その像にできるだけ沿わせていくっていうことは、自分のできる限りではやる。(中略)だから、ある種それがキャラ愛だし、キャラ愛イコールそのキャラのことを好きな人に対する礼儀でもあると思うから。

 

 Aさんは、「あのキャラクターだったらどのような行動をするか」を考えることがキャラクター愛だと考えている。原作を読み込み、自分なりのキャラクター像を作り、それに沿った表現を行うのだと言う。また、そのような行為は同時に、そのキャラクターが好きな人に対しての礼儀であるとも語っている。


 

第三項 第一節のまとめ

 コスプレを始めたきっかけは友人に誘われたからだというものが多く見られた。また、コスプレを通して原作に対する自分の解釈を表現する、原作が好きなことをアピールして同じ作品の愛好者を見つけることを目的として始めたというものも見られた。

 自分の好きな作品のコスプレをする場合の他にも、自分は知らない、友人の好きな作品をする場合もある。そして、自分が好きなキャラクターのコスプレをする場合と、好きなキャラクターの周りにいるキャラクターのコスプレをする場合の2つに大きく分けられる。好きなキャラクターではなく、その周りのキャラクターのコスプレをする理由には、好きなキャラクターの隣に立ったり撮影したりしたいから、好きなキャラクターと自分がコスプレをするキャラクターをペアとして好きだから、自分が好きなキャラクターのコスプレをしてもクオリティに納得できないからなどが見られた。一方、自分が好きなキャラクターのコスプレをすることに対し、キャラクターのことを好きでないのにコスプレをすることは失礼だと考えるから、自分と同じキャラクター(=自分が好きなキャラクター)のコスプレイヤーとも交流できるからという理由が挙げられた。また、自分の持っている衣装を他人に貸し、そのキャラクターを撮影することができるからというものも見られた。また、女性キャラクターのコスプレは避けがちであるようだ。身体の露出が多いから、男性カメラマンとの交流を目的としていると誤解されるからといった理由が語られた。

キャラクターや作品への愛情を感じる点は、原作の二次元の世界を三次元の世界で再現しようと努力する点、苦労してでも好きなキャラクターのコスプレをする点、作品の世界観への没入欲、深いキャラクター像の成形とその表現などが挙げられた。


 

第二節 衣装

 コスプレにおいて衣装は最も重要な構成要素のひとつである。では、コスプレイヤーは衣装をどのように入手しているのだろうか。尋ねたところ、業者製の衣装を購入する、一般的に売られている洋服を改造する(既製品改造)、型紙をおこして制作するといった方法が見られた。基本的には衣装を自作するよりも、業者製の衣装を買った方がクオリティが高いと語られている。しかし、業者製の衣装のクオリティに納得できない、値段が高い、衣装が売っていないといった場合には自分で制作しているようだ。

 衣装制作において何かこだわりはあるかと聞いたところ、以下のように答えてくれた。

 

S:友達と3、4人でおんなじユニフォームをやるってなったとき、ユニフォームとか制服をやるってなったときに、皆で一緒に布の色合わせて作るとかっていうのがあるから、そういう関係で作ったりもする。

 

K:動いとるときに壊れんかったらいいかなって思いながら作ってます。あ、でも、一応シルエットだけ再現した通りに作ると、写真で撮ったら等身が足りんかったりとか、シルエットが足りんなってなるから、その辺だけバランスとれるように作っとる。

 

S:売ってるのが、やっぱり著作権とかの関係でちょっと違ったり、中国製だからいろんなとこがちゃっちかったり、ボタンのはずのところがなんかマジックテープだったりとかあるから、そういうの気に食わなかったら、買ってリメイクするとかもある。

 

合わせで複数人が同じ衣装を着る場合には、衣装の質感を揃えるために全員分の衣装をまとめて製作することもある。原作の衣装をそのまま再現するのではなく、写真に撮った際のシルエットのバランスがよくなるように制作していると語られている。また、業者製の衣装を購入した場合でも、クオリティに満足できないときや、自分の体型に合わないときは細かな手直しを入れているようだ。衣服としての着心地や耐久性には多少目を瞑ることもあるが、シルエットや他のコスプレイヤーとのバランスは強く意識しており、最終的な写真に写る部分を重視していることがわかる。

また、Aさんは衣装からキャラクターに対する愛情を感じることがあると言う。

 

A:(業者製の衣装の購入について)これは手抜きだとは思わないし、キャラ愛の欠如だとも思わない。ただ、自作イコールキャラ愛の表現だとも思わない。(中略)ただ完全に、例えば紋の印刷入ってるけどこの紋違わない?とかいう紋に、納得いってる人とかを見るとどうでもいいのかな、そのキャラに対する愛はないのかな。その、なんでそのキャラをやってるのかなってその人にちょっと聞きたくなる。個人的にね。別に否定するわけではないけど。

 

業者製の衣装を購入すること自体はキャラクター愛の欠如ではない。しかし、原作とあまりにも違う点について納得してしまっていることは、キャラクター愛の欠如ではないかと考えている。反対に、着ている衣装に原作と違う点があっても、コスプレイヤーがその衣装に納得していない様子が見られるときにはキャラクター愛を感じると語った。

 


 

第三節 コスプレイベント、撮影会

 コスプレイヤーが衣装を着用する機会の多くは、コスプレイベントや撮影会である。また、自宅でコスプレ衣装を着たり撮影を行う「宅コス」も存在する。コスプレイヤーの視点から見るこれらの違いはいったい何だろうか。

 

K:イベントはー、交流とか、あんま知らんジャンルやっとって声かけられたら嬉しいとか、そういうのがメインで行っとった。基本的に、なんか作ったから出してみたいってイベント行くこともあったけど、ほとんどそこで友達とかできるから、交流目的がイベント。でー、撮影会はもう撮影メイン。もう本くらい作れるレベルの写真を撮ろうっていう人らが集まってやってるから。最初っから今日一日このキャラねって決めて、全員で、“忍たま乱太郎”やったら、教室全員集めて一日中その格好で(過ごす?)みたいなんやって、割と本格的に撮影をして。宅コスは、遊び。なんか、作ってみたものを試しにやったりとか、あとハロウィンとか。

中谷:すごく仲のいい範囲で、みたいな感じですか。

K:そうやね。

 

イベントへは、主に自分と同じ作品が好きな者との出会いや交流を目的に参加しており、イベントで友人ができることがほとんどである。撮影会は「身内」と呼ばれる、特に仲の良いコスプレイヤー同士で行うことから、新しい出会いよりも撮影を目的としていることがわかる。本格的な撮影に臨むコスプレイヤーが集まり、じっくり作品を残すということを念頭に置いている。宅コスは遊びと表現されているように、仲のいい範囲で気楽にコスプレを楽しんでいる。

イベントや撮影会へ参加する際の基準としては次のような語りが見られた。

 

K:えっーと、イベントは近いからっていうのが多くって、撮影会は友達が主催してるから。ほんとに身内だけでやってる撮影会が多くって、誰かが募集しとる撮影会に参加することはあまりなかった。あとは、イベント近いから以外やったら、他の即売会?とかに参加するついでに、そこでやろうみたいな。だから遠征、東京とか大阪とか行くときは、それが多かった。でー、そのイベント帰りについでに、スタジオ?借りてオフ会やっとる人がおったらそこに応募して行くこともたまにあった。

 

Kさんは、イベントは近場のものに参加し、それ以外では遠方の同人誌即売会にコスプレ参加することが多いと語った。また、即売会帰りのオフ会に応募して参加することもある。撮影会は主に友人が主催し、身内で行っているものに参加しており、交流のない他人が募集している撮影会に参加することはあまりないそうだ。撮影会はコスプレするキャラクターの空きがあると、このキャラクターをやってくれないかと声をかけられることが多い。

 

A:(参加する合わせの基準について)私は知り合いがおるのを先に考えて、知り合いから声かかれば行く。

 

A:そうだな…地元のイベントは、フレンドさんが、知り合いが多いから、その人に合いに行きたいなって思って、行くのが最近は増えてきた。(中略)そういう人たちが参加するよって言ったら、会いに行ったり。もしくは、例えば太閤山だったら和室がある?だったり、石川のどこやら、今度江戸村?やら言うとこでやるんなって、で、なんか長屋とかあって、すっごいいいロケーションで。だから、ロケーションで選ぶか、フレンドがいるから選ぶかみたいな感じ。

 

Aさんは、イベントは基本的に近場のものに参加している。その中で、自分が撮影したいロケーションがあるか、会いたい知り合いがいるかを考慮して選んでいる。また、撮影会は知り合いがいるものに参加しており、よっぽどのことがなければ知り合いの全くいない撮影会には参加しないようだ。

撮影会は本格的な撮影を目的としているが、参加者が限られていることによりクオリティの高い写真を撮影できる効果があるそうだ。

 

A:で、撮影会だと、合わせの目的があって、それに合わせて場所を借りるから。そしたら、合わせのメンバーで先に知り合うし、人数がすごい限られるから。(中略)だからその人に合わせた撮影はできるっていうのはあるのかなあ?あとは、自分たちで会場借りてるから、動画の撮影(1)ができたり、イベントだったら例えば捏造とかは禁止っていうか、できたら人の目に触れないようにしたいところであって。そういうのも、理解してくれるメンバーで集まっていれば、全然やっても、むしろ盛り上がるし、写真は全然撮ってもいいし、動画も撮れるし。だから、自由度が高い?かな、撮影会のほうが。

                                                                                   

自分で考えたオリジナルの衣装など、原作とは違う衣装でのコスプレは「捏造衣装」「捏造コス」などと呼ばれ、参加者が不快に思う可能性があるためイベントでは行うべきではないという暗黙のルールがある。また動画撮影には規制を設け、全面的に禁止しているイベントが多い。しかし、不特定多数の目に触れるイベントと違い撮影会は参加者が限られている。そのため撮影会では、参加者の許可があれば捏造衣装の着用や動画撮影をすることができる。また参加者が限られているという点には、被写体の要望に合わせた、より質の高い撮影ができるというメリットもある。撮影会は自分たちで企画するため、イベントに比べると自由度が高いと語られている。

また、撮影会において、撮影の質を上げるために以下のような工夫が行われていることがわかった。

 

K:例えば“ドラえもんズ”とかやっとったんやけど、で“オカシナナ”やるよっていったら最初っからお菓子全部作り出して、キッチン借りて皆でお菓子を作るところから始めて、で用意して、そこでさあ食べるぞっていうシーンを撮影っていうのをやってたから。それで雰囲気作って写真撮ってるっていうとこまでやって完成したの見たらやっぱすげーってなったから、その辺までが、クオリティの高い作品やって、うちは思ってる。

中谷:お菓子作りの部分もあってこそ。

K:そう。

 

ただ写真を撮るだけではなくその作品に合わせた雰囲気作りを行い、クオリティの高い作品を皆で作っていく。Kさんの例では“ドラえもんズ”たちがお菓子を作るというものだったため、コスプレイヤーたちも同様にお菓子を作り雰囲気を出した。このように、同じ作品のキャラクターのコスプレをしたコスプレイヤー同士で写真を撮ることは「合わせ」と言われる。では合わせの魅力とは何だろうか。

 

K:えーっと、楽しいのと、ポーズとりやすい。一人やとポーズ決まらんとか結構あるから。“忍たま”とかやったら別に一人ひとりポーズ決めとる写真ってあんまり撮ったって、その雰囲気出ないから、皆でワイワイしとるとこ撮って初めて“忍たま乱太郎”みたいな感じもするし。そういうのが、魅力かな?

 

S:うん、楽しいよ。一人でするよりは絶対楽しい。そこにいるってことは、ある程度その作品を知ってて、やりたいって思ってる子同士だから、オンリーイベントに行くような感じだよね。

 

A:好きなキャラと好きなだけ絡める。もちろん時間のあれはあるけど。(中略)例えばイベントとかだったら、“とうらぶ”どころかそれ以外にもいろんなジャンルの人がいるわけで、“とうらぶ”探すときにももう既に散らばってるから。ただ合わせだったら、ジャンルでもう既に固まってるから、その中で何撮りたいとかいうことをできる。ていうのは魅力かなって。あと事前に合わせする前に言っておけば、どういう写真、どういうメンツが来るからどういう構図でこういう写真が撮りたいとかいうことだってできる。

 

合わせの魅力としては、やはり一人でやるより楽しいというのが大きい。また一人の撮影よりポーズがとりやすい、雰囲気を作りやすいなどの撮影が潤滑に進むという利点がある。また、自然と同じ作品を好きな者同士が集まるため、作品オンリーイベントに近い雰囲気になるという。その雰囲気を楽しむというのも合わせの魅力のひとつである。また、参加するキャラクターについて事前にわかっているため、キャラクターの組み合わせや構図についてあらかじめ考えておくことができる。

一方で、合わせには合わせならではの問題や悩みといったものも存在するとSさんは語っている。

 

S:合わせは楽しいんだけど、こーんなにいっぱいいたのに、家に帰ってみたら、本当に欲しかったやつが無かったりするから、人数が多いとさ、どうしてもまとまりもつかなくなるし、カメラを離さない子もいるし

 

S:合わせの被りとかはこれまた辛辣な、闇の世界だよ。被り無しで、あのー、被り無しでメンバーも決まってるのに、そのメンバーのうちにA君をやりたい人が2人いたとか。そういうのはある。で、そうならないように声かけるとか、誰やるか決まってない段階で声かけるのはダメとかいろんな努力が必要。同担無理というより、被り無理やな。(中谷:その日いるなかで…)その日集まったなかで、おんなじのが3人いたとするじゃん。で、集合撮ったときに、そのおんなじので被っちゃった人たちがローテーションでそこに入るしかないから、(中谷:あー写真だと一人しかいちゃいけないから)いやまぁ、別にいてもいいんだけどね、記念撮影にしかならんねんか、それって。なんか、なんだろう、ほかの人らも待たせなきゃいけないから。おっと被ったーってなる。

 

合わせはあまりに参加者が大人数過ぎるとまとまりがなくなり、撮影に支障がでることがある。また合わせにおいて、同じキャラクターのコスプレが複数人いる「被り」はタブーである。同じキャラクターが複数人いる写真は「作品」ではなく、記念撮影にしかならないため、コスプレイヤーたちは暗黙の了解で被りが起こらないようにしている。

 

 


 

第四節 写真撮影

第一項 撮影時のパフォーマンス

キャラクターを構成する要素としては、衣装に次いでそのキャラクターとしての立ち振る舞いが期待されるところであろう。以下はイベント会場などでのコスプレのパフォーマンス的側面についての語りである。

 

K:んーと、衣装もメイクも、うち基本的に顔見るからメイクが強いんやけど、あとは表情とか。ポーズとか表情だけでも全然違うから。カメラ向けられて、キチンとそのキャラクターのポーズと表情ができるっていうのは、クオリティ高い人じゃないかな。

 

衣装やメイクの他にも、撮影時のポーズや表情もそのキャラクターらしさを印象付けるものとして重要であるようだ。では何かを参考にしてポーズや表情を決めているのだろうか。

 

K:“ジョジョ”はそれ(原作)。あとは、最初のほうとか全然ポーズとれてなかったから、撮ってもらった写真見て、この方がいいなって研究してくくらい。あとアーカイブとかに写真たくさん上がってるから、それ見てこうしたらかっこよく撮れるんやって。

 

A:例えば“とうらぶ”だったら和物だから、他の和物の、漫画とかアニメとかちょっと見て、ああいうポーズしてるとか。

 

原作を参考にするのはもちろんだが、その他にも同じキャラクターのコスプレをしている人の写真や、原作と世界観が似た他の作品を参考にすることもある。

 

A:ポーズが結局思い浮かばないなってなったときは、小道具持ってく。思い浮かんでも小道具は持ってくけど、小道具さえあればたいていなんとかなるって思いました。

中谷:他のレイヤーさんの写真とかって参考には=

A:=参考には、あーこれいいなーと思うけど、同じ構図で同じように撮ったら、それってただのまねっこしいだから。そこって、もちろん同じようにやりたいなとは思うんだけど、自分がやるってなったら同じ風にやったってもったいないじゃん。オリジナリティを出したいって思うから。これをアレンジするんだったらどうやろうみたいな。ただ結果的には私の場合は別のものになる。(中略)参考っていうか、見てそれを起点に思いっきり別のもの作ったりする。

 

また小道具があると画面が華やかになる他、小道具の持ち方などで動きを表現でき、そのキャラクターらしさを表現できるためポーズをとりやすくなるそうだ。Aさんは写真にオリジナリティを出すために、他のコスプレイヤーの写真は参考程度にとどめ、それを起点に全く別の構図やポーズを撮影している。


 

第二項 構図、シーンの選択

写真全体の構図やシーン選択に対しては以下のように語っている。

 

S:その(コスプレイヤーの)見た目で近づけるのもあるけど、その仕上がった写真全体の雰囲気として近づければいいのかなって思うけどね。そのワンシーンを再現するっていう方法だってあるから、例えば。

 

 原作にあるシーンと同じ構図で写真を撮ることで原作の雰囲気に近づけた写真を撮っているそうだ。しかし、原作のワンシーンを再現したような写真ばかりを撮っているわけではないと言う。

 

S:あの“ONE PIECE”のしょっぱい感を作るんじゃなくてそいつらがほんとにあの…世界に生きてるとしたらどうなるんだろうってのをすごい追求して写真撮ってる子がいる。

 

S:だから“Free!”とかもさ、まああれは水泳してるアニメだけど、あの子たちがほんとにこの世界にいて普通に学生生活を送っている一男子高校生なんだって思ったらいろんな表現できるよねみたいな。(中谷:あー高校生っぽいことさせたりとか)そうそうそう。

 

原作では描かれていない日常生活の部分であったり、キャラクターたちが実際に生きているとしたらどのような行動をするかといったことを想像し、写真で表現している。作品に対する自分の解釈を表現するという点においては、漫画や小説などでの二次創作と似ている。

 

S:カメラ目線で二人でビシッと写ってるのだけじゃなくてほんとに二人が歩いてるところを映画のワンシーンみたいな撮り方すれば写真の中にストーリー性は生まれると思うから。

 

 またポーズをとった写真ではなく、日常の一瞬を切り取ったような写真を撮ることによってその瞬間の前後やキャラクター同士の関係性を表現するといった工夫も見られた。


 

第三項 カメラマン

イベントや撮影会には「撮る側」の存在としてカメラマンがいる。女性の割合が多いコスプレイヤーとは反対に、カメラマンは男性の割合が多いと言われている。男性カメラマンについて、以下のような語りが見られた。

 

S:でも男のカメラさんは、作品知らなくてもこの人美人だから撮りたいとか、この人足細いから撮りたいとかもあると思う。撮った後に、それなんのコスプレですかって言ってきたりするから、あー知らんと撮ってはったんやこの人―みたいなのもある。

 

A:男装とかだと、相手もそれが好きじゃないと話しかけてこないから。

 

女性キャラクターのコスプレをしているコスプレイヤーには、コスプレしているキャラクター、作品について知らなくても、コスプレイヤー自身に魅力を感じて声をかける男性カメラマンが多いそうだ。男性キャラクターのコスプレをしているときにはそのようなことはなく、作品やキャラクターが好きだからという理由で声をかけるカメラマンがほとんどである。

撮影の場ではコスプレイヤーが主役であり、カメラマンはただ写真を撮るだけの脇役といった位置づけなのだろうか。尋ねたところ、Sさんは次のように答えてくれた。

 

S:あー最近大分地位は向上してきたよ。増えてきたし。もうね、ここ二年くらいで北陸のカメコの数は倍…倍どころか三倍くらいになってると思う私。で全国的に見てもカメコさんの需要も高まってきてるし、私コスプレイヤーですって胸張って言う人とと同じくらい私カメラマンです、こんな写真撮ってます、よろしくお願いしますっていう人も増えてきたよ。ただそうなってくると描き手さんみたいな感じ。絵の。絵師さんみたいな感じになってきて、でその人が自分の撮りたい写真を撮らせてくれるレイヤーさんに声かけて、一緒に作品作りましょって言ってモデルしてもらうっていうのも最近増えてるから。うーん、まだレイヤーのほうがあれだけどカメコさんの地位も徐々に向上はしてきとるし、そのアマチュアのカメコさんのレベルがすごい上がってきとる。

 

最近ではカメラマンも自分自身を作品の作り手として認識し、周りからも認識されているようだ。コスプレイヤーがコスプレ写真を公開するのと同じように、ブログやコミュニティサイトで自分が撮った写真をアップするカメラマンもいる。コスプレ人口の増加により撮影機会が増えたことが、カメラマンの需要の増加や地位向上に繋がっているのではないだろうか。

では、カメラマンとの撮影はどのように行われているのだろうか。Aさんは次のように語ってくれた。

 

中谷:割と、その、カメコさん、カメラマンさんのキャラ像っていうのも入ってくる?

A:くる場合もある。ただやっぱり、お互いのキャラ像が違えば撮りたいものも変わってくるから、そい場合は2パターン撮ったり、もしくはカメラマンだけのやっぱりそれになる場合もあるんだけど。まあ、撮ってほしかったら撮ってほしいって言うし。で、あたしの中でのキャラ像はこうだけどあなたのキャラ像はこうなんですねーみたいな感じで、お互いに尊重できれば両方上手くいくから。

 

Aさんは男性キャラクターのコスプレをする機会が多いため、声をかけてくれるカメラマンもAさんがコスプレしている作品やキャラクターを知っている場合が多い。コスプレイヤーとカメラマン、両方がキャラクター像について意見を出し合い、調節しながら撮影を進めるそうだ。また、お互いのキャラクター像が違えば撮りたいものも違ってくる。そのような場合には2パターン撮影するなどで対処し、お互いの意見を尊重できるようにしている。


 

第四項 第四節のまとめ

 撮影時のポーズはキャラクターらしさを表現する点として重要視されている。原作を参考にする他にも、他のコスプレイヤー、原作と似た世界観の別作品などを参考にしている。

 原作のワンシーンを再現する構図で撮る他にも、原作では描かれていないシーンを想像したり、日常の一瞬を切り取ったような構図で撮影している。

 女性が多いコスプレイヤーに対し、カメラマンは男性の割合が多い。女性キャラクターのコスプレをしている場合、キャラクターではなくコスプレイヤー自身に魅力を感じて声をかける男性カメラマンが多いといわれている。カメラマン、コスプレイヤーの双方がカメラマンを作品の作り手として認識し、お互いのキャラクター像を反映した写真が撮れるよう試行錯誤している。


 

第五節 他のコスプレイヤーとの交流

第一項 グループでの交流

 多くのコスプレイヤーは、コスプレイベントへは二人一組かそれ以上の複数人で参加する。仲の良いコスプレイヤー同士で形成されたグループでイベントへ参加することも多い。ではそのグループはどのように形成され、どのような交流を行っているのだろうか。

 

K:そのとき“忍たま乱太郎”やっとる人らの繋がりってすごいなんか、強いっていうか。新参がいたら、じゃあ友達になりましょうくらいのジャンルやってそんときは。でー、その金コミ(*同人誌即売会)で出会った3、4人の人らと、名刺交換みたいな、で、アーカイブで知り合って、そこから何回か撮影会とか、イベント一緒に行きましょうとかいうのの感じになって、で、こういう関係になってった。

 

S:みんなで同じ制服着るとか、同じユニホーム着るってなったら、買うにしてもおんなじ業者で買おうって話になるし。作るにしても、一緒に布買って作ろうってなるから。そしたら下準備の段階から何回か会って、一緒にやらなきゃいけないから、そうなると割とあの、イベントとか撮影会以外で会うことが多くなってきて。あとは自然と楽しくなってきて、普通にご飯行こうとか、土日暇やからカラオケ行こうみたいなことが言える友達になっていくと思う。

 

A:普通に遊びに行ったりご飯食べに行ったり、カラオケしたりってことはあるね、今。普通にオフ会っていうか、コスで知り合ったオタ友みたいな状態になることはある

 

コスプレイヤーのグループは、同じ作品が好きなことをきっかけに形成されるようだ。同じ作品が好きだという共通項の他にも、同じ作品のコスプレをしていると撮影会や合わせに参加できるためより仲が深まる。特に同じ制服やユニフォームを着る作品の場合は、衣装の質感を揃えるために一緒に衣装を制作する必要があり、イベントや撮影会以外でも会うことが多くなる。最終的にはコスプレに関係しない、プライベートでの付き合いも生まれてくるそうだ。

一方、コスプレイヤー同士のグループ内においても人間関係の問題は生じるようだ。

 

A:ああ、この人そんな好きでやってるんだって。だから、ある種そこでクオリティって関係ないんだなって思う。やっぱ愛だよねって思ってちょっと心があったかくなる。その人と合わせたいかって言われると、私はやってもいいんだけどはたからの目が難しくなるんじゃないかなって。それをなんだろう、気にしない人たちだけならいいんだけど、もうキラキラ女子たちと繋がってしまっているから、どんどん難しくなってって。だから、中の人、コスしてる人の性格で付き合っていきたいのに、顔で選ぶ人がそのコミュニティの中にいると一気にちょっとね、問題がね、起きてくるよね。だから、他のコミュニティがある人とない人とのそこの軋轢ってそういうところもある。

 

Aさんは、一見コスプレのクオリティが低いコスプレイヤーに対しても、キャラクターに対する愛が感じられればそのコスプレイヤーと一緒に活動を行いたいと考えている。しかし、一緒に活動する相手の見た目を気にする層が同じグループ内にいるため、自分の好きな相手と活動することが難しくなっている。コスプレに対する考え方の違いから、活動に置いて衝突が起きていることがわかる。

 

A:結局イラストとか文字書きとかだったら、顔合わせないわけやん。で、ただただTwitter、ツイッタラー同士で繋がってるとかだったら、お互いの顔も知らないし、リアルで会わないし。だから、関係繋げるのも切るのもすごい簡単なんだけど、コスってリアルで会うから。で、実際にその人と会って喋るわけで。やっぱりそこって違うから、簡単にこの人嫌だなって思っても関係を切れない。もしくはこの人いいなって思っても簡単に繋げれない。こじれたところで、一人とこじれたら、周りと全部上手くいかなくなる

 

 イラストや小説での創作ならば自分一人で作品を作り上げることができる。また、自分以外の創作者と共同で作品を作ったり同人誌を発行したりする場合にも、相手と直接顔を合わせることは必ずしも必要ではない。複数人でひとつの作品、本を作り上げるのだから諸連絡や創作物に対する意見交換が必要となるだろうが、メールでの連絡、意見交換やデータの送付で済ませることができる。しかしコスプレ活動では自分以外の他者と実際に会って顔を合わせる必要がある。まず、被写体となるコスプレイヤーの他にカメラマンが必要となる。また、コスプレイヤー自身で表現できるキャラクターは同時には1人であり、複数のキャラクターを表現したいのならば自分の他にもコスプレイヤーが必要となる。また、前述したように複数人での活動がメインとなっているコスプレにおいては、誰かひとりと仲違いしてしまうとその周囲とも関係が上手くいかなくなってしまう。そのため一人で活動できるイラスト等の創作と比べると、他者との関係を繋げること、切ることが大変だと語った。


 

第二項 コスプレ名刺

 コスプレイヤー同士の交流において重要視されているのがコスプレ名刺である。コスプレイベントにおいて他のコスプレイヤーに声をかけた際、名刺を渡すのがコスプレイヤー同士の暗黙のルールとなっている。この名刺には自分のコスプレ写真が印刷され、「コスネーム」と呼ばれるコスプレ活動でのペンネームのようなものや、SNSIDや個人のコスプレサイトのURLなどが明記されている。自分が普段コスプレするキャラクターごとに名刺を持っているコスプレイヤーも多く、どの名刺を渡すかは相手に選んでもらうことが多い。名刺の役割は相手に連絡先を示すことだが、コスプレ名刺はそれ以外の側面も持っているようだ。

 

S:おんなじジャンルのやつを何枚も作るんじゃなくて、9種類あるんだったら6ジャンル以上、このジャンルは2枚まで、3ジャンルくらいはかぶってもいいけど、6,7ジャンル以上にしとけば、その日やってないやつで、あっ私もこれ好きですーっていう人に出会えるかも知れないし、あとは男性のカメコさんとかで(??)わかんない人とかで撮ってくれた人に、私実はこういうのもやってるんですっていうふうに紹介することができるから、私はジャンル色々揃えといたほうがいいんじゃないかなって思った。

 

A:名刺を何種類も作るメリットっていうのもきっと含んでるんだろうから言うと、こういうジャンルも好きなんですっていうのが相手に伝わる。バッて見せたときに。

中谷:今日“とうらぶ”やってるけど、過去に=

A:=そう、こんなんもやってましたーっていう。ある種ポートフォリオみたいな状態になる。で、これ好きなんですよって、その場で別の方向に盛り上がって、それの繋がりで仲良くなったりする。

 

コスプレ名刺を数種類作り、ストックしておくコスプレイヤーが多いようだ。これには、自分が今コスプレしている作品以外にも何の作品が好きで、何の作品のコスプレをやっているか相手に知ってもらう目的がある。同じ作品が好きだったならばその話題で盛り上がることもできるし、一緒に合わせを行うこともできる。

 

S:めっちゃちっちゃいけど、これが一番人の手に渡る作品だから、ホントはみんなたぶん本にしたり、CD-ROMにしたりしたいとおもうんだけど、大変じゃん、枚数もいるし。でも名刺なら1枚で割とちっちゃくて、で加工してデザイン決めて、文字の配置とかフォントとか考えて、楽しいのねこれを作ること自体が。

 

S:でも新作作ったときは、知り合いでも交換する。だから新しい人と知り合った時に、あっちもこっちもにぱっとだしたら、自分のツレがあれっちょっとそれ見たことないとかって抜いていくときもある。

 

撮った写真を集めて本やCD-ROMといった形にしたいとは思っているが、そのためには大きな費用や労力がかかる。一方、名刺はパソコンとプリンターさえあれば、写真1枚から作ることができる。名刺は「撮った写真を形あるものにしたい」という欲求を手軽に満たしてくれるのである。名刺を単なる情報伝達のツールとしてではなく、ひとつの「作品」としても捉えているため、既に連絡先を知っている相手からも新しい名刺があれば貰っている。


 

第三項 第五節のまとめ

 コスプレイヤーの多くは二人一組かそれ以上の複数人でコスプレイベントに参加する。仲の良いコスプレイヤー同士で形成されたグループが存在し、そのグループは同じ作品が好きなことをきっかけとして形成されていく。撮影会やそれ以外の場でも会う機会が多く、コスプレ以外のプライベートでの交流を持つこともあるようだ。コスプレに対する考えの違いから、グループ内で軋轢が生じるなど、人間関係の問題も起こりうる。実際に顔を合わせる必要のあるコスプレでは、周囲と関係を繋げ、切ることが大変である。

 初対面のコスプレイヤーとはコスプレ名刺を交換することが暗黙のルールとなっている。名刺にはコスプレ写真、コスネーム、SNSIDなどが印刷されている。コスプレ名刺には自分が何の作品が好きか知ってもらう、作品作りの欲求を満たすといった側面もある。


 

第六節 インターネットでの活動

第一項 コミュニティサイトでの交流

 コスプレイヤーの多くが個人サイトやブログを持ち、コスプレ写真の投稿サイトに登録している。近年ではCure WorldCosplay、コスプレイヤーズアーカイブなどのコスプレ専門のコミュニティサイトも登場し、これらのサイトを利用しているコスプレイヤーは非常に多い。

 コスプレ用のコミュニティサイトではコスプレ写真の投稿・閲覧の他にも、コスプレイベントや撮影会の検索や参加登録、メッセージの送受信、ユーザーのフォローなどの機能がある。コスプレイヤーたちは、第四章第三節や第四節第一項で述べたように、知り合いがイベントに参加するかを調べたり、投稿写真を撮影時のポーズの参考にしたりとコミュニティサイトを活用している。

また、最近ではインターネット上での交流にTwitterも活用されているようだ。

 

A:その、復活する前までの知り合いって、11回の(コスプレの)間がすごい開いてるから、もう知り合いだけど知り合いじゃなくて、もう忘れられてたりフレンド切られてたりとかする人たちばっかりだから。で、最近は頻度高くやってるから、Twitterとかでも喋ってるし、そしたらそういう人にはある種軽率に喋りに行けるから。そういう人に、そういう人たちが参加するよって言ったら、会いに行ったり。

 

コスプレイヤーは基本的にはイベント、撮影会以外の場所で顔を合わせることがない。そのため、イベントへの参加頻度が低ければ、それだけ周囲とは疎遠になっていく。イベント以外の場でもコミュニケーションをとることができるSNSは、周囲との距離を保つ働きをしているようだ。

 

A:(コスプレで苦労することについて)今で、Twitterとかあるから、その距離感が離れていくことはないけど、例えばちょっと昔だったらメールとかしかないわけで。メールとか、ある種GREEみたいな感じで。

中谷:こっちから、その人向けに発信しないと。

A:そうそう。その人向けに発信しないと繋がらないけど、その人に喋ることも別に特別あるかっつったらないし。てなるとまあ疎遠になるよね。そこは難しいかな。

 

特にTwitterは受け手を特定しない、レスポンスを期待しない、まさにつぶやきと言われるような投稿が可能である。そのため、メールなどの一対一のやり取りに比べると気軽に投稿することができる。合わせに参加するコスプレイヤーをTwitterで募集することもあり、その気軽さから、Twitterはコスプレイヤーを繋ぐツールとして重宝されているようだ。


 

第二項 写真の公開方法

撮影した写真は個人のコスプレサイトやブログ、コスプレ専用のコミュニティサイトに投稿、公開している。写真の公開方法については以下のような語りが見られた。

 

S:最近あのね、あのー、縦長ってのが流行っとって。縦長に数枚写真繋げて一枚の画像にして、そのなかにストーリーがあるみたいな。あとはフォトストックで公開するとか

 

 「縦長」とは複数枚の写真を縦に繋げ、1枚の画像として投稿することである。「フォトストック」とはコスプレイヤーズアーカイブの写真投稿機能のひとつであり、複数枚の写真を集め、写真集単位で公開できる機能である。写真を複数枚まとめて公開することにより、より詳細なストーリーを表現することができると考えられる。

また、Twitterへコスプレ写真を投稿することも多い。コスプレ専用のサイトで公開しているような「作品」としての写真の他に、スマートフォンのインカメラなどで撮影した集合写真も投稿している。後者は「速報」「速報写真」などと呼ばれ、同じイベントに参加している仲の良いコスプレイヤーとのツーショット写真や集合写真をイベント中や終了直後に投稿している。コスプレ用コミュニティへの投稿に比べるとカジュアルさが増し、速報性が重要視されている。