第一章 問題関心

 

現在、「女性の活躍」に関する方策が政府によって積極的に進められている。内閣府が2014年に行った「女性の活躍推進に関する世論調査」では、「夫は仕事、妻は家庭」という考えについて、2年ぶりに反対派が賛成派を上回る結果となった。ゆえに、1986年の男女雇用機会均等法の施行から今に至るまで、社会の中での女性の地位は確実に上がっていると思われる。また、政府は2014年に、「2020年までに、女性管理職を30%まで増やす」という数値目標を設定した。そして、ポジティブ・アクションの推進、企業の現状を公表する「見える化」の取り組み、先進企業の表彰などを行い、女性の活躍に向けた支援やその普及をはかっている。企業もそれに伴って様々な取り組みを行い、ニュース等で話題になることも多い。取り組みの例としては、メンター(教育・相談担当をつけること)制度の導入、女性の総合職での採用を増やす計画の策定、幹部候補生の研修、早めにリーダー経験をさせる取組、ロールモデルの創出、専門家による講演会への参加、他社との交流会への参加などがある。このように、働く女性が活躍するための環境整備は着実に進んでいるといえる。

 一方、このような企業における環境づくりや実態については、大企業と中小企業では差がある。大企業は社員数や予算の規模が大きく、大きな企画や計画に踏み出しやすいと思われる。一方、中小企業は社員数・予算とも規模が小さく、大企業と同じような取り組みができるとは限らない。こうした制約のある状況において、中小企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。筆者は、こうした制約ゆえにできないことと、可能であることがあるのではないだろうかと考えた。

 

以上より、一般的に遅れていると言われる中小企業の女性活躍の実態について調査を行い、実際の取り組みや現状について明らかにしたうえで、今後の可能性や課題について考察したい。