第一章   問題関心

富山県雇用施策実施方針(平成24年度)では、雇用情勢の悪化や少子高齢化による人口の減少という社会情勢の下で、女性や高齢者が働き続けられる環境整備だけでなく労働者自体の雇用と生活の安定の確保、基本的な労働条件や健康かつ安心して働ける環境が整備され、働く人皆が意欲と能力に応じていきいきと働くことができること(ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB))が実現できるような労働環境が求められると述べている。

 しかし実際、方針で述べるような労働者を取り巻く労働環境の整備は企業だけで行えるようなものではないだろう。また、ここ近年で行政は、企業のWLB推進に関する支援の取組みも活発に行っている。そこで、WLBが実現できる環境作りには、企業努力だけでなく行政の支援も重要になってくると考えた。ゆえに本研究では、「行政」「企業」の2つを柱として、WLB推進における実情や課題を分析していく。

まず手順として、富山県が実施するWLB推進を名目とした企業支援の取組みである「元気とやま!子育て応援企業」「男女共同参画推進認証事業所」を対象に調査を行い、行政が行う企業支援の制度や現状の分析を行う。その際、関連する求職者の意識についても視野に入れる。

次に、上記のいずれかに登録している県内の建設業2社とサービス業1社の計3社にインタビュー調査を行い、WLB推進状況の他に業種や従業員規模の視点からも考察していきたい。特に、本研究は事例として従業員50人以下の企業に注目したい。その理由は第二章(先行研究のレビュー)で詳しく述べるが、WLBに関する取組みは中小企業においてコストがより大きく、事例情報もあまり知られていないからである。特に、従業員50人以下の企業の場合、WLBに関する行動計画の策定・公表義務を免れており(詳しくは第三章第三節第一項を参照)、取組みへの動機が弱いのでないかと考えられる。

 最後に上記で分析した結果をもとに、最終的にWLB推進における行政の社会的な役割や今後の課題を考察していく。