第一章      問題関心

忍者とは、主に戦国時代に活躍したとされる隠密、またはその集団である。忍者の実像はその性質上、現在に至ってもはっきりとしてはいない。それ故に忍者は古くから多くの人の関心を集め、想像を掻き立てさせているとも言える。日本人はそうした想像のもとに作られた忍者、言わば虚像の忍者を受容し、今日まで発展させてきたのである。

今や忍者は日本だけでなく、広く世界に知られる存在となり、各国で忍者を題材とした映画やコミック、ゲームが多く制作されている。その中でも代表的な『Teenage Mutant Ninja Turtles』は世界での知名度も高く、幅広いメディアで作品が製作され、忍者の普及を促進した。近年では『Ninja Assassin(2009)が日本でも公開され、斬新な忍者描写が反響を呼んだ。これら海外の作品における忍者は、圧倒的な戦闘力を持つ格闘家として描かれることが多い。日本の作品においては諜報活動を主に行う者として描かれる事が多いのに対し、なぜ海外の作品における忍者表象はそのような特色を持っているのだろう。

この調査の目的は、アメリカにおける忍者表象、およびその形成プロセスの解明である。