第一章 問題関心

 ロックフェスティバルは、日本国内でも大小合わせ、毎年200以上開催されている。フェスティバルは、野外や屋内を問わず、1日限りのものや数日にわたって行われるものなど、その形式は様々である。このフェスティバルは、多くのロックファンを魅了し、彼らのなかでは、一年にいくつものフェスティバルに参加する者もいる。フジロックフェスティバルをはじめ、ライジングサン、サマーソニック等、大型のフェスティバルでは、数十万以上の集客があるものもあり、多くの収益を上げ、商業的事業として確立したと思われる。

 しかし、地方で開催されるフェスティバルは、その多くが赤字であると言われている。マツタ(2013)によると、ブームによって数多くのフェスが乱立した昨今、赤字撤退を余儀なくされるイベントもあるという。そんななか、なぜ主催者側は赤字であってもフェスティバルの開催を続けようとしているのか。いったいフェスティバルにはどのような商業的成功をも超える魅力があるのか。筆者は、フェスティバルを地域振興に結び付けて、何かしらの効果が得られるために、開催を続けようとしているのではないかと考えた。そこで、本稿では、富山市中心市街地で行われる「ビートラムミュージックフェスティバル」と、南砺市イオックスアローザスキー場で行われる「SVC セイハローフェスティバル」の、全く異なる特徴を持つふたつのフェスティバルに着目し、実行委員会側へのインタビュー調査を行なう。音楽フェスティバルの現状を調査し、地域振興にどのような役割をもっているのか明らかにしたい。