(1)母国語による言語能力の養成について

湯本和子(2005)では、海外日本語補習授業校に在籍する児童に対して、CALPの発達度を知るためにバイリンガルテストというものを行っている。このテストは、母国語と日本語の基本的な文法の問題や、桃太郎や瓜子姫などの昔話のあらすじを二か国語で説明させるといったものだ。この調査の結果、二言語とも高い言語能力を持っている児童と、第一言語も第二言語も停滞している児童との差は、言語への関心度、家庭での母語の使用率、社会・文化への関心、読書する頻度などが要因となっていることがわかった。その中でも、家庭における母語の使用が最もCALPの発達に関係しているという結果が出た。二言語ともに高い能力を発揮した児童はみな、家庭内では母語のみを使用することを徹底していた。家庭で使用する言語と、学校で使う言語との明確な使い分けがCALPを発達させ、均衡のとれたバイリンガルとなる最大の要因であると考えられる。

 この調査の結果に対して、湯本はCummins(1980)の二言語相互依存説を用いて説明している。母国語と新たに習得した第二言語では、表れた構造(音声や文の作りなど)は明らかに違うが、それは別々のシステムではなく、深層構造の中で共有されている。Cumminsはこの共有している部分を共有基底言語能力と呼び、2つの言語は同じ言語を処理するシステムを通して機能しているとしている。この共有部分が、理解力、認知力に結びつく言語能力、つまりCALPといえる。つまり、CALPは二言語間で共通している部分の多い言語能力なのである。先の調査では、二言語ともに熟達している児童と、二言語共に停滞している児童の両極端であった。これは、Cumminsの二言語相互依存説を支持するものであり、第一言語のCALPが十分に発達していれば、共有基底言語能力システムを用いて、第二言語においてもCALPを発達させることができるのである。

 

(2)日伯交流友の会

2008年のブラジル移民100周年記念事業で集まったメンバーが、高岡市にブラジル人が多く住んでいるということから、支援の必要を感じたために設立したボランティアグループである。2008年のリーマンショックによりブラジル人が大量に失業した際に、食糧支援や情報提供などの支援を行った。それらが一段落した段階で、青木氏が子供の教育支援について提案したことが、アレッセ設立のきっかけとなった。