第四章 分析

 

第一節 話題の探索

 この節は初対面の相手や、友達とどのような話題で話すのか。または、どのような話題を積極的にもちいるのかについてのインタビューの内容を中心に分析していく。

 

[データ1]

インタビュアー:初対面の人と友達になるっていう時って、どんな話しする?

A:出身?

B:大学だったら出身聞くね、学部とか。

C:どんなサークルとか、バイトしてる?とか、

B:そんな感じだよ。ぐらいだね。

C:まぁそこはね、出身の話に持ってくしかない。

B:バイトもサークルもしてなかったらもう話すことない。

確かに。

C:まぁそこはね、出身の話に持ってくしかないよね。

A:出身一緒だったらいいけど、違ったらわかんなくない?そーなんだー、で終わってしまうから、また困ってしまう。

D:なんか自分がちょっとでも知っとるところだったらまだいけるけど。

B:なんか初対面でも自分が好きなアーティストが一緒ってことわかっとったら、その話振るかも。

A:確かに、音楽とか聞くかもね。

C:音楽とかは結構盛り上がれる気がする。

(中略)

D:何か共通の話題を探しますよね。

 

 初対面ではサークルや学部などの所属団体や出身地のようにひとまず会話が継続するような話題が選択される。出会って間もない時期では共通の話題探しから始まり、事前に共通する話題がわかっている場合は音楽やスポーツなどの趣味の話題が選択されるようだ。話題の選択には会話の継続性がかかわっており、またAさんの発言に「出身一緒だったらいいけど、違ったらわかんなくない?そーなんだー、で終わってしまうから、また困ってしまう」とあるように相手の発言にも話題の継続性を求めているようである。ここでの特徴は、出会って間もない時期には無難な話題が選択される傾向があるという点である。このような傾向は一般的にも見られる傾向であるが、これは若者にも同様であり、若者だから気づかいのない話題設定をするというわけではなく、ひとまず会話を継続させようという気づかいはされるのである。

 次の例はサークルで知り合った当初の友人との会話に関する話である。


 

[データ2]

インタビュアー:仲良くなるまでにどんな話ししたかって覚えてる?

E:出身地の話とか、なんでこのサークルに入ったのかとか、暇なとき何やってるのとか、高校は部活何やってたかとか、初めはこんな感じですかね。

インタビュアー:特にこの話しはよくした。盛り上がった。みたいなのってある?

E:出身地の話ですかね。まだ演劇に深く関わってなかったので、あんまり演劇の話できなかってのもありますけど、何より他県から来てる人の話はすごく面白かったです。

インタビュアー:おー、そっかそっか。今は演劇の話が多くなった感じ?

E:そうですね。演劇に関わる時間が長くなればなるほど各々の視点から独自の演劇観が生まれてそれを語り合うってのはなかなか盛り上がりますね。

 

[データ3]

インタビュアー:それでも(友人と)仲良くなれた要因はなんだったと思う?

E:演劇以外の共通の趣味を持てたことですかね。

インタビュアー:共通の趣味ができてから急激に進展した感じ?

E:そうですね。演劇の話以外の共通の趣味の話をしているとその人が演劇やってる時とは別の視点で見えて、ああ彼はこういうところもあるのかと一気に心の距離が近づきましたね。プライベートで遊ぶ頻度も一気に増えましたしね。

 

 

 この発言は一番仲のよい大学の友人を想定して答えてもらった質問であり、Eさんの場合は演劇サークルの友人が一番仲のよい友人であった。Eさんも仲良くなるまでは会話が継続するようなその人自身の生活や出身などを話題として選択しているが、仲良くなってからは演劇についての話題が多くなり、また盛り上がるようであった。また、Eさんは友人と仲良くなれた要因として、演劇以外の共通の趣味を持ったことを挙げている。演劇の話題は盛り上がると発言した上でさらに共通の趣味の話題をすることでさらに仲良くなったようだ。Eさんはもともとあるサークルの話題のほかに趣味の話題ができるようになったことで、サークルでの友人のキャラ以外に趣味の場でのキャラが見えたことでより親密になったと語っている。ここでの特徴は、別の共通する話題を見つけたことでより親密になったという点である。この例ではすでに演劇やサークルといった共通の話題があり、さらに他の趣味の話題を見つけたことでより親密になった。

 次の会話も一番仲の良い友人との会話の内容に関する話である。

 

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インタビュアー:(友人と)どんな話するの?

F:サークルがらみの話が多かった。意外と真面目なサークルだったから。それ以外は本当に取り留めのない話で、まあ、ゲームとかの趣味の話とか、最近あった面白い話とか。

インタビュアー:ほうほう。趣味の話するってことは、その人とは共通の趣味持ってたり?

F:一応ゲームをやっているので、ちょこちょことそんな話をしたり。ちょっと前はその人もポケモンをやっていたから、その話をしたりしていました。

 

 FさんもEさんと同様に一番仲のよい友人はサークルの友人であった。Fさんはボランティアサークルに所属しており、多かった話題はサークルについてであると答えている。また、それ以外の話題では趣味の話題と自分の身の回りでおこった体験談が選択されている。ここでの特徴は、サークルでの友達作りの場合、当初の話題を探る時期が過ぎると、共通の趣味の話題がとりやすくなるという点である。

 では、ゼミで知り合った人の場合はどうなのだろうか。次の例は、基礎ゼミや2年次に振り分けられた専門ゼミについての話である。

 

 

[データ5]

インタビュアー:じゃあゼミの友達とどんな話する?

F:ゼミの研究の話をしたり、趣味のゲームだったり、動画サイトの話だったり

あとはいろんな世間話ですかね。

インタビュアー:連絡取ったり遊びに行ったりってする?

F:ちょこちょこ連絡取ったりはしますね。遊んだりすることもあります。

インタビュアー:頻度とかってどのくらい?

F:ツイッターとかの簡単なやり取りなら、数日おきぐらい。メールとかになると、1〜2週間ぐらいですかね。ゼミがあるときは大体その時にまとめて話します。

インタビュアー:じゃあ、仲良くなったきっかけみたいなのってなにかな?

F:ゼミの研究の相談とかを通して交流が多かったのもあるし、飲み会も多くて話す機会が多かったのが、大きかったのではないかと思います。

 

 

 Fさんはゼミの友人に関しても共通の所属であるゼミに関する話題と趣味の話題をすることが多い。また、仲良くなったきっかけとして交流する機会や話す機会が多かったことを挙げており、ツイッターやメールなどでも頻繁にやり取りをしていることから、相手のことを知る機会が多いことが仲良くなることや、共通の話題を見つけることと深くかかわっているのではないか。ここでの特徴は、ゼミもサークルと同様に友達作りの場として重要視されることがあるという点である。

 さきほどの「話題の探索」に話を戻そう。はじめに、出身地のような無難な話題が当初は好まれるが、それは一般的な気づかいにも見られるものであることを指摘した。これを逆の面から見てみたい。つまり避けるべき話題はどう意識されるのであろうか。

 

 

[データ6]

インタビュアー:じゃあ初対面とか割と仲良くない人と話すときってどんな話題する?

G:ありきたりだけど、出身地とか聞いて話つなげるかな。

インタビュアー:やっぱりプロフィール的な部分から攻めますか。……じゃあ逆に避ける話題とかってある?

G:自分がはまっていてるけど、相手にどう思われるか分からない趣味とかかな。

インタビュアー:どう思われるかわからない趣味?

G:ちょっとコアなゲームとかマンガとか。

インタビュアー:あー。そういう話題避けるのに理由ってある?

G:やっぱ相手のことよく分かってないのに、そういう話題だして嫌がられるのは避けたいなーと

 

Gさんには初対面の人と話す際に選択する話題と逆に避ける話題について質問した。Gさんも同様に出身地などを聞くと発言している。また、「話をつなげる」というように、話の継続性を期待して話題を選択しているようである。避ける話題には相手が知らない可能性が高いと想定される話題が挙げられた。その理由として、相手に嫌がられることを避けたいからと発言している。ここでの特徴は、趣味の話題に関するアンビバレンス、すなわち、早く趣味の話題に持ち込んで会話を盛り上がるように、また続くようにしたい一方で、あまりに早く趣味の話題を切り出すと、相手にどう思われるかわからないため、慎重に話題を探索せざるを得ないという点である。

 

 

この節の分析をまとめると、出会って間もない時期にはサークルや学部などの所属団体の話題や出身地のような相手が答えやすい無難な話題が選択されやすい傾向にあり、この時期には会話が継続することが重要視されるようである。このような無難な話題を選択することや、会話が継続するよう配慮するといった相手への気づかいは一般的に見られる傾向であり、このことは若者にも例外ではなく相手への気づかいはなされる。また、ゼミやサークルは友達作りの場として重要視されることがあり、特にサークルでの友達作りの場合、話題を探る時期を過ぎると共通の趣味の話題を取りやすくなるようである。

趣味の話題はお互いに知っていれば盛り上がりやすい話題であるようだが、その反面相手がその趣味について知らなかった場合に相手にどう思われるか分からないというリスクもともない、慎重に話題を探索せざるを得ないという面もある。

第二節 会話の心地よさと避ける話題

 この節では人間関係形成の初期の段階で避ける話題についてや沈黙に対する感覚の違い、友達になりたいと思う人物像などについての質問から会話の心地よさと友人関係形成との関係性について探っていきたい。

 

 

[データ7]

インタビュアー:じゃあ避ける話題ってある?

H:特に意識はしていませんが、とりあえず初対面で下ネタなどはまず言わないですね。

インタビュアー:まあそうだね。でもなんで下ネタ話さないの?

H:やっぱり、人によっては引かれるかもしれないので

(中略)

インタビュアー:初対面で引かれるのはキツい?

H:はい。仲良くなる可能性が低くなるかもしれないので。

インタビュアー:仲良くなれる可能性があるならその可能性は維持したい的な感じですか?

H:そうですね。

インタビュアー:相手に引かれないようにって話す上で意識する?

H:初対面のうちは多少は気を遣うと思います。

インタビュアー:仲良くなってきたらそうでもない感じ?

H:はい。ある程度仲良くなればそんなに気にしません

 

Hさんは避ける話題として下ネタを挙げており、その理由は引かれるかもしれないからというものである。また、初対面で引かれることが友達作りに不利にはたらく可能性があるため、初対面のうちは話題などに気をつかうようだ。ただし、ある程度仲良くなると出会って間もない頃に意識されていた下ネタのような避ける話題は意識されなくなる。ここでの特徴は、初対面で意識されていた「気づかい」が仲良くなるとそれほど意識されなくなる点である。

 

 

[データ8]

インタビュアー:逆に避ける話題ってある?

(中略)

F:確かに下ネタは話さないね。あと、恋愛とか、ややこしそうな話は避けるかも

インタビュアー:ややこしそうな話って?

F:現在の状況とか、過去どうだったとかに関わってくるから、場合によっては相手に嫌な気持ちを抱かせそうで。神経質かもしれないけど。

 

Fさんは恋愛の話題や現在の状況や過去の経験などについては初対面では避ける話題であるようだ。この会話では現在の状況や過去の経験についての話題は避けられると語られているが、前節で述べたように、積極的にもちいられる話題には出身地やサークルやバイトの有無などが挙げられている。このことから避けられる話題は、「場合によっては相手に嫌な気持ちを抱かせそう」な内容の話題ということになるのではないだろうか。

 では、なぜ初対面の相手との会話は仲のいい友人との会話以上に気づかいがされるのだろうか。次の会話は沈黙することに関して仲のいい友人とあまり仲のよくない人での感覚の違いについて語っている部分である。

 

 

[データ9]

インタビュアー:(話題がいったん途切れたら)とりあえず話題は継続させたい感じ?

F:そうだね。あんまり仲良くない相手なら。きごころしれた相手なら、沈黙しても心配ないけど

(中略)

インタビュアー:なんで仲良くない人とは沈黙させたくないんだろう?

F:なんでだろうね。仲良くないから、会話が続くか否かぐらいしか交流の良し悪しの評価点に繋げにくいのかな。考えたこともないから、よくわからないけど。

インタビュアー:でもなんとなく居心地悪い感じするよね。

F:そうだよね。会話が続いている状態が普通で、会話が続かないとなんだか悪いみたいな

 

 さきほど避ける話題についての会話では仲のよい人と初対面の人では気づかいの意識のされかたが違うことを述べた。この意識の違いは互いに沈黙してしまった場合でも同様である。Fさんは仲のよくない人とは、「会話が続くか否かぐらいしか交流の良し悪しの評価点に繋げにくい」から沈黙を避けたくなるのではないかと推測している。ここでのポイントは、沈黙に対する意識も、話題に関する気づかいのように、初対面やあまり親密ではない人相手では「会話が続かないとなんだか悪い」という感覚から、会話を継続させようとする点である。

 次の会話は、友達になる相手を選ぶかどうかという内容で積極的に友達になりたいと思う人物像、逆にあまり友達になりたいとは思えない人物像について語ってもらった。

 

 

[データ10

インタビュアー:共通の趣味があるって仲良くなるのに大事な要素なのかな?

E:そこまで重要だとは思いませんが、あるとすごく仲良くなりやすくなりますね。自分の知っている、しかも興味のある話題は話してるだけで楽しくなりますからね

(中略)

インタビュアー:ぶっちゃけ、友達になる人選ぶ?こいつとは仲良くなろう!みたいな

E:選びますね。

インタビュアー:友達選ぶ理由ってある?

E:この人と喋ってても面白くない、不快になるだけだなあって思ったら、友達にはなりませんね。

インタビュアー:逆にこんな人とは友達になりたい。みたいな友達の条件みたいなのはある?

E:その逆ですね。話の面白い人。一緒にいると楽しくなる人とは友達になりたいって思いますね。

 

Eさんは話していて面白い人と仲良くなりたいと考えており、逆に話していて不快になると判断した場合は友人関係にならないと発言している。Eさんは友達作りにおいて会話が面白い(快である)ことを重要視しているようだ。また、ここでは共通の趣味の話題であることに限らず、会話が面白いということが重視されている。ここでの特徴は、友達作りにおいて会話の快、不快が意識されるという点である。これはEさんだけでなく、FさんやGさんにおいても同じような傾向がみられた。

 

 

[データ11

インタビュアー:それじゃあ・・・悪い言い方だけど、友達選んだ?この人とは仲良くしよう!みたいな

F:それはやっぱりあるね。苦手な人と、そうでない人、いるからねぇ人付き合い難しいし、余計にそれは意識しちゃう。苦手な人と長く付き合うぐらいなら、一人でもいいやって。

 

Fさんは「苦手な人と長く付き合うぐらいなら、一人でもいい」と自分が不快になる相手とは積極的に仲良くしたいとは考えていないようである。苦手な相手や自分が不快にさせられるような相手と積極的に関わりたいと思わないのは一般的にありうることではあるが、Fさん自身人付き合いはあまり得意ではないと感じているために、そのことは余計に意識されるようだ。ここで注目したい点は、苦手な相手とは出会って間もない時期であっても距離を置かれる可能性があるということである。

 

 

[データ12

インタビュアー:じゃあ、友達になりたい人とか、こういう人は好きみたいな人っている?

G自分のする話で盛り上がってくれる人とかかな。そういう人が、話の合う人なんじゃないかなと思うから。

インタビュアー:話す上で楽しさみたいな部分っていうのは求める?

G:愚痴る時は違うかもしれんけど、その他の話ではそうだね。

インタビュアー:友達作りするときに相手を選んだりする?

G:ある程度は選ぶかも。基準は、具体的には表しにくいけど、会話が続く人とか。

インタビュアー:会話が続くってどんな感じ?それこそこっちが質問攻めして相手が答えるだけでも会話は続くけど。

G:それでもいいと思う。とりあえず、沈黙が続いていづらい雰囲気にならなければいいかなと

 

Gさんは友達を選ぶ基準として会話が盛り上がることを重要視しており、逆に沈黙して気まずい雰囲気になることは避けたいと語っており、会話が継続してさえいれば内容は問わず、会話が続くことが重要であるようだ。ここで注目したい点は会話が弾むか否かが友達を選ぶ基準となりうるという点である。

 

この節の分析をまとめると、人間関係形成の初期段階で積極的に使われる話題は前節の通り所属団体や出身地の話題であった。逆に下ネタや恋愛、現在の状況や過去の経験などの話題は相手を不快にさせてしまう可能性が高いという理由から避ける話題として挙げられた。これらの避けられる話題はある程度親密になってくると意識されなくなる場合がある。また、このように親密になると意識されにくくなるものに沈黙が挙げられた。沈黙についてはあまり親密ではない時期では会話が続かないことが悪いことのように思えるという理由から避けられる傾向にあり、やや無理矢理にでも会話が継続されるようだ。

次に、友達になりたい人やなりたくない人についての質問からは、話していて楽しいことや、会話が盛り上がることなど「快」な状態になれるような人とは仲良くなりたい。逆に苦手だと感じるような人や話していて面白くない、または会話が続かないような人、つまり「不快」な状態にさせるような人とはあまり友達になりたいとは思わないという傾向があった。

 

 


 

第三節 状況志向と話題の定着

 この節では実際に状況志向的な感覚を持っているのか、『セブンティーン』の引用記事のような現象がおこっているのかについて、普段どのような会話をするのかというテーマから探っていきたい。

 ここでいう状況志向的な感覚とは、相手や状況によって振る舞いかたを変える傾向があることを指す。また、『セブンティーン』の引用記事は実際にインタビューの際に見てもらい自身の感覚や感想を語ってもらった。実際の引用は次のようなものである。

 

友達ひとりに、何もかも期待しすぎるから、つらくなると思うんだ。私は、恋愛の話ならA子、勉強のことならB子、テニスの話はC子・・・・・・って、わざとしてるわけじゃないけど、自然にわけてるみたいなの。これが、いいことかどうかわかんないけど・・・・・・楽は楽だなぁ。(『セブンティーン』1988918日号)

 

 

[データ13

インタビュアー:これ雑誌の引用なんだけどこの文章どう?自分でもこういうことしてるって感じある?

G:雑誌の通り、自然に分けてるかも。ただ、楽かどうかというよりも、その人が話を分かってくれるかどうかで判断していると思う

インタビュアー:話題を分散させることがメインではなくて相手がわかるかどうかが重要ってことかな?

G:そうですね。

インタビュアー:特定の話題、たとえば趣味の話とかで盛り上がれる人がすでにいた場合新しく趣味の話できる人探したりする?

G:探すねー。そんな真剣に探さないけど、まわりの人に何気なく聞いてみるとか

 

[データ14

インタビュアー:この雑誌記事どう思う?共感できる?

F:能動的に分類することはあんまりしないけど、やっぱり趣味の話をガッツリできる人とか、サークル関係の話をガッツリできる人とか、色々あると思うし、共感はできます

 

 『セブンティーン』の記事に関してGさんは友達を自然に使い分けている感覚には共感しているが、使い分けることが「楽かどうかというよりも、その人が話を分かってくれるかどうかで判断していると思う。」というように、楽だから使い分けるというよりは、相手が分かる話題で会話をした結果友達を使い分けていたということのようだ。FさんもGさんと同様に能動的に友達を使い分けているという感覚はなく、相手によって深く話せる話題が異なるという点から、話題に合わせて友達を使い分けるということには共感できるということだ。ここでのポイントは、両者ともに相手に合わせて話題を変えている意識があり、友達を使い分けることに関しても肯定的である点である。

 では、相手に合わせてどのように話題が選択されているのだろうか。次の例はゼミの友達やサークルの友達との話す話題についての会話である。

 

 

[データ15

インタビュアー:ゼミの友達とゼミ関連の話が多くなるのはなんで?

G:他に特に話題無いからかな。あと、ゼミの課題とかで解決したいことがあると、やっぱり自分のゼミの人間に聞くのが一番だと思っとるからかな。

インタビュアー:話題探したりは特にしないの?

G:会うのはゼミの時ぐらいだからねー。特に探さない。

インタビュアー:じゃあサークルの友達だとどう?話題探したりってのは。

G:そっちは探すね。遊ぶときに合うのがほとんどだし。

 

 Gさんはゼミの友達に関しては、ゼミの相談はゼミでするのが一番適しているからという理由と、他に特に話題がないことからゼミに関する話題が多くなるようだ。しかし、だからといって他の話題を探すということはない。また、サークルの友達の場合は話題を探すと語っている。ただし、Gさんの場合『セブンティーン』の記事に対してコメントしていたように、真剣に話題の探索をおこなうわけではなく、機会があればそれとなく聞いてみる程度である。ここでの特徴は、いっしょに遊びに行く友達の場合は既にある話題のほかに話題の探索をおこなわれる可能性があり、特定の状況でしか会わない友達の場合は話題の探索がおこなわれない点である。

 次は、大学で出会った中で一番仲のよい友達を想定してもらい、どのような話題で話すのか、またひとつの話題でどのくらいの時間会話が続くのかを尋ねた会話である。

 

 

[データ16

インタビュアー:じゃあどんな話で盛り上がった?…またはどんな話でよく盛り上がる?

G:共通の友達の話とか、身の回りのこととかですかね。

インタビュアー:じゃあ、なんでそういう話題になるの?理由ってある?

G:うーん、相手も分かって自分もわかる内容だからかな。

インタビュアー:相手がわからない話題はあんましたくないとか?

G:しようとしても、説明するのに時間がかかるから、面倒くさいって思う

インタビュアー:じゃあわざわざ相手がわかるか不明な話題は振らないで共通の話題で盛り上がる的な?

G:そっちが多い。

インタビュアー:じゃあ同じ話題でどれくらいの期間話してる?さっき出てた共通の友達の話とか。

G:お酒飲んでると、長くて30分から1時間は喋っとると思う。素面でそういう会話は10分程度じゃないかな

インタビュアー:それ以外はまた別の話をしてるのかな?

G同じような話題で、別の話してると思う。

 

Gさんは互いに共通する話題であっても、同じ話題ではそれほど長い時間は続かないようである。しかしだからといってまったく関係ない話題をするわけではなく、似たような話題で他の話をするようである。ここで注目したいことは特定の話題であまり長い時間話すことはできなくても、同じような話題で別の話をしている点である。また、仲のよい友達が相手であっても相手の知っている話題に重点が置かれ、相手の知らない話題をもちいることはあまり積極的にはしないようである。

 次の例も同様に、大学で一番仲のよい友人とどのような会話をするかを尋ねた会話である。

 

 

[データ17

インタビュアー:じゃあ大学の一番仲のいい友達と最近どんな話する?

F:最近どんな話…やっぱり趣味とか、進路とか。

インタビュアー:趣味の話って出会って割と早い段階からしてたの?

F:そうだね。まあサークルの活動とか、話題は趣味に限らないけど。

(中略)

インタビュアー:話す話題っていつも同じ?

F:毎回適度に変わるけど、それでも趣味の話題は出てくる気がする。

 

 Fさんの場合、よく話す話題はサークルや趣味の話題であることは第一節でも確認した。このサークルや趣味についての話題は出会って早い段階から継続されており、話題は毎回変わっても趣味の話題は出てくると語っている。

 次は授業で知り合った友人について語ってもらった例である。

 

 

[データ18

インタビュアー:じゃあ、授業とかで友達できたりした?言語科目とか入門ゼミとかで

E:ごく少数ではありますが何人かは。

(中略)

インタビュアー:一緒にいるときはまじめな話ばっかり?

E:そうですね。次の小テストいつだっけ?とかテスト範囲どこまでだっけ?とか。プライベートな話はほとんどしてないですね。

インタビュアー:遊びに行ったりご飯行ったりした?

E:してないですね。

インタビュアー:連絡取り合ったりはどう?

E:今はほとんどないですけどたまに授業に関してとかメールしてましたね。

インタビュアー:じゃあ、それ以上の関係にならなかったのは何か理由あった?

E:演劇サークルの方で既に友達いたのでこれ以上はいらないかなぁ思ったので。あっちもっこっちと忙しいのはあまり好きではなかったので

 

Eさんは演劇サークルで既に友人がいたために、他の場で積極的に友人を作ろうとはしていなかったようである。そのため、遊びに行ったりするようなことはなく、話題は授業に関することのみでプライベートな話題はほぼなかったという。

 FさんEさんどちらの例でも話題はサークルや同じ授業の話題など、共通の所属についての話題が選択されており、Fさんの場合は所属集団の話題のほかに趣味の話題もよく出てくるようだ。Eさんについても第一節で述べたように一番仲のよい友人とはサークルの話題のほかに趣味の話題ができるようになってからより親密になったと語っている。ここで注目したいのは、どちらの例も所属集団の話題がよくされており、仲のよい友人とは共通の趣味の話題もよく会話に出てくるという点。そして、あまり仲がよくない友人とは所属集団に関する話題のみで他の話題がほぼ出てこなかった点である。

 

 

この節の分析をまとめると、今回の調査では『セブンティーン』の記事のように、友達に合わせて話題を自然に使い分けるという傾向は見られたが、意図的に使い分けるというより、相手に合わせて盛り上がることのできる話題を選択したにすぎないようだった。

話題については、出会った当初は共通する所属集団に関する話題が中心となるようだ。そこから、さらに親密になる場合には所属集団の話題のほかに別の話題が探索されうる。その際の共通する話題は今回の調査では趣味の話題が多かった。逆にあまり親密にならない場合や特定の状況でしか会わない場合は話題の探索はされにくい傾向にある。

 また、仲のよい友人との会話であっても、同じ話題で必ずしも長時間話せるというわけではないようだ。しかし、だからといって全く関係のない話題をするわけでもなく似たような話題で違う会話をするようであった。