第3章 調査概要

今回の調査では、富山県内の以下3つの企業にインタビュー調査を行った。

 

1節 A

所在地:富山県

 事業内容:ファスナーの加工、アルミサッシの部品加工、組立、研磨、部品梱包等

 従業員数:154名(内60歳以上 9名・最高年齢 64歳)

インタビュイー:常務のa1さん(女性)と専務のa2さん(男性)

 

 A社の歴史

昭和39年(1964)

a1さんの父が創業。ファスナー事業を行う。同時に製材所も管理していた。(輸出用の木箱を製作)

 

建材事業も行うようになる。

平成10年(1998)

a1さんの夫が社長に就任する(現在の社長)。法人化し、有限会社となる。木箱の製作は廃止する。

 

 a1さん……現在60歳。4年制大学を卒業後、就職せずにおじと家業を行う。その後現在の社長である夫と結婚し、子供も生まれる。しかし会社の借金があったため、会社の仕事は借金を返すために行い、子供へのお金として他の仕事をしてお金を稼いだ。現在はA社の常務として会社の運営に携わっている。

 

<再雇用を導入した時期>

 2000年ごろ。当時、あと数年で65歳までの雇用確保が義務付けられるということで、継続雇用を取り入れると国からの助成金が支給された。その機会に再雇用制度を導入し、得た助成金で本社2階の会議室を改装した。お金を貰うだけではなく、何かに残して皆で使えるものになればという思いから改装に至ったそうだ。

 

<再雇用後の雇用区分>

 正社員とパートタイマーである、基本的に、定年前まで正社員だった人は正社員として再雇用し、パートだった人はパートとして再雇用する。しかし本人の希望により正社員からパートが良いという人は変更する。ただし、パートから正社員になる人はいない。

 

<対象者>

 60歳で定年退職する従業員。ただし、A社の元請け会社であるYKK2013年から定年年齢を段階的に引き上げ、最終的に65歳になるので、A社の定年年齢も65歳になる可能性がある。

<勤務日数・就業時間>

 個別に話し合う。ただし、2交代または3交代の勤務スケジュールが組まれている。

 

<仕事内容>

 全く変わらない。むしろ、60歳以上で働くには、同じ仕事でないと無理だという。新しいことにチャレンジするには、年齢が高すぎる。また高齢者ならではの位置づけはなく、仕事をする中で若い従業員に教える程度である。

 

<給与>

 定年前と変わらない。減ることはなく、ある意味では増えるかも知れないという。

 また退職金については特に用意しておらず、65歳で辞める時に慰労金という形で会社から支払う人もいるといった状況である。

 

2節 B

 所在地:富山県

 営業品目:真空容器、真空用部品、各種製罐加工、基板搬送用治具、組立、車椅子

従業員数:65名(現在は60歳以上の従業員はいない)

インタビュイー:総務部 b1さん

 

<再雇用を導入した時期>

 2006年、労働基準監督署に再雇用制度を申請した。B社は工業団地内にあり、その工業団地内の会社向けに再雇用制度に関しての説明会が行われた。その機会にほとんどの工業団地内の会社が再雇用を導入したという。再雇用するにあたって、希望する人を全て再雇用する場合と条件を付けて再雇用する場合があるが、B社は条件を付けないことにした。

 

<再雇用後の雇用区分>

 基本的には正社員であるが、個々の事情に応じて柔軟に対応している。

 

<対象者>

60歳で定年退職する従業員で、再雇用を希望する人。契約の上限年齢は65歳で、契約は1年ごとに自動更新される。つまり、辞めたいと言わない限りは65歳まで自動的に働くことになる。

 

<勤務日数・就業時間>

 従業員の意見を尊重して話し合いで決定する。フルタイム(8時間)では働けない場合は勤務時間を減らし、残業はせず、必ず定時で上がりたいという場合はその通りにする。

 

<仕事内容>

 基本的には変えないが、高齢者から申し出がある場合は変更するという。体力の衰えによって以前と同じような仕事が出来ない場合が多く、その場合は現場における雑用をするという。仕事内容についてはお互いに納得するまで話し合いを重ねる。

 

<給与>

 仕事内容に応じて支給。定年前よりは減額する。同じ金額だと、60歳を過ぎても給与に見合う仕事をこなさなくてはならない。ただし定年後も第1戦で働きたいという人にはそれなりの仕事をしてもらい、給与も定年前に比べるとあまり減額しない。基本的には、定年前の給与の70%よりは下がってしまう。

 退職金は。60歳の定年の時点で支払われる。

 

3節 C

所在地:富山県

業種:金属製品製造業

従業員数:81(60歳代8名 最高齢70)

インタビュイー:総務部 c1さん

 

<再雇用を導入した時期>

 2002年。

 

<対象者>

 60歳で定年退職する従業員で、再雇用を希望する者。65歳までは自動的に契約されるため5年間の雇用は保証される。その後は個別に話し合って決めていく。

 

<勤務日数・就業時間>

 基本的にはフルタイム(8時間)であり、再雇用だからといって勤務時間が短くなるわけではない。定年前と同じ条件で働いてもらうという。

 

<仕事内容>

 今までと全く同じ。定年前まで部下だった人が、定年後は上司になることもあるが、そのことに関しての大きなトラブルは今のところないという。

 

<給与>

 定年の境に変わることはなく、65歳までは同じ給与額である。ただし、65歳を過ぎたら見直しをし、それまでと比べると減額してしまう。

 退職金は60歳の時点で支払われる。

 

4節 従業員へのインタビュー

 A社で働く2名の方にインタビューを行った。

 

1項 Xさん(63歳/女性)

 魚津市出身で、現在はA社の近くに住んでいる。30年ほど和裁の仕事をしていたが、時代とともに仕事が減少し、50歳の時にA社で仕事を始める。きっかけは息子さんがA社の専務(a2さん)と同級生であったため、誘われたことである。現在は夫と長男夫婦と孫の5人で暮らしている。また兼業農家であり、仕事の合間に田んぼの管理も行っている。

 

【再雇用の状況】

 定年前からずっとパートとして働いており、始業時間は9時である。終業時間はその日の仕事の状況によって変化するが、早くて15時であり、遅くても17時には終わる。Xさんはパートのため厚生年金がなく、また国民年金も65歳から支給のため現在は年金の受給がなく、働くことは必須となっている。

 

2項 Yさん(52歳/女性)

 高校卒業後、製造業の富山工場で20数年間勤める。入社当初は製造業だったこともあり、現場で働いていたが、後に品質管理の仕事を行うようになる。その後会社の業績が悪化したため、会社都合で退職し、A社に勤めるようになった。10年間事務職として勤務したが、最近は近眼と老眼の影響でパソコンを使う作業に困難さを感じており、60歳まで働けるか不安に感じているという。しかし、現場でもいいので、使ってもらえるなら働けるだけ働きたいという思いがある。現在は母親、夫、長男と4人で暮らしている。

 

【仕事内容】

 A社に来てからずっと、総務の仕事に就いている。しかしほとんど生産管理の仕事をしており、また品質管理の仕事をすることもある。また現場で人が足りなくなった時は応援に行き、その経験から電話対応等も迅速に行えるようになったという。

 

【理想像】

 自分が目標としている姿は、威張って近寄りがたい感じでもなく、「Yさんに聞いたら何でも分かるんやぜ」と思ってもらえるような先輩だという。和気あいあいとやりながらも、ちょっと芯のある先輩を目指し、後輩の指導に尽力している。