1章 問題関心

近年、日本の少子高齢化は著しく進行している。厚生労働省によると、2011年には高齢化率は23.3%を記録し、今後もますます高齢化が進行することが予測されている。岡(2009)によると、平均寿命は1955年から2005年の半世紀に女性では18年、男性では15年ほど長くなり、2025年には男性81,4歳、女性88,2歳になると予測されている。このように高齢化が進行したことで高齢者たちは以前よりもたくさんの時間を持つことが可能になった。

それに合わせて現在100兆円にも上る医療や年金等の社会保障給付費と、横ばいの社会保険料との差額も拡大傾向にある。しかしながら社会の支え手である若者は減少傾向にあり、このような事情からも、高齢者の就労促進が社会的に重要なテーマとなってきていた。

高年齢者雇用安定法の改正により、高齢者の働く環境は改善されていると報道されてきた。しかし同時に年金制度の改正も行われ、実際には様々な内情があるに違いない。そこで今回は、おもに60歳定年後の高齢者の働き方を調査し、中小企業における制度変化の影響を調べることを目的とする。同時に、高齢者を雇用している中小企業自体にも調査を行うことによって、会社と高齢者の関わり方にも着目していきたい。

 制度の変更が、高齢者および中小企業にどのような影響をもたらしているのだろうか。まず、第2章では近年の高齢者雇用についての研究をもとに主な動向を確認した上で、公的年金制度及び高齢者雇用政策の流れを説明する。つまり、現在の日本における高齢労働者がどのような状況におかれているかを認識することを目的とする。そして第3章では調査した3つの企業及び2名の労働者についての説明をし、第4章で調査から得られた情報をまとめ中小企業における高齢者雇用の現状を分析していく。第5章では以上の調査から主張できることを論述していく。