第三章 先行研究

第一節 “ゆるさ”が情報交換を発展させる

現状、Twitterというものは比較的新しいものなので、それに関する研究はまだあまり存在しない。ただ、そのように数少ない中でもTwitterのコミュニケーションの特徴について、いくつかの指摘がある。以下よりそれらを紹介していく。

(2009)は、“ゆるい関係”が次々に生まれる、気楽なコミュニケーション形態はこれまでになかったものだと指摘している。例えば、誰かが「今夜どこかでビールが飲みたいな」とつぶやいたとすると、それを読んだ知り合いのユーザーたちが「実は私も」などと反応する。誘う方も、断られた時のことや、誰に声をかけるかといったことを考えずに済み、それに対しては反応したい人だけがつぶやきを返せばよい。また、このような「“ゆるい”つながりを生む仕組みを機能として具現化したのが『Retweet(リツイート、RT)である」とし、「ひとつのつぶやきを複数のユーザーが連鎖的に共有することを通して、ねずみ算式に多くのユーザーがつながる。口コミの伝播には、うってつけといえる。」と述べている。

 また、“ゆるいつながり”という点に関して、津田(2009)は、フォローが自由という観点から述べている。Twitterでは「この人の発言をウォッチしよう」と決めたらその場ですぐにフォローでき、それをやめるのも勝手で誰に断る必要もない。それに対しMixiなどの場合は友達リストに載せてもらうことをお願いするようなマイミク申請や、逆にそこから排除するマイミク解除など、「現実社会の面倒くさい人間関係に引きずられ、関係の構築が難しいところがある」と指摘している。このように、Twitterは面白いことを書く人を自分の趣味で集めたコレクションであり、気軽さ、ゆるさが長所であると同時に、そこにリプライなどをして深いコミュニケーションもとれると述べている。

 ここまで両者が述べていることを振り返ると、つぶやくという行為は相手を特定しないため、何も反応が返ってこない可能性があり、フォローに関しても相手がし返さない限り情報が一方向にしか流れない。このように、対話的でないためにユーザーの関係の持ち方もMixiのマイミクのように双方的なものでなく、誰かのモノローグをキャッチするという一方的なものになる。その、一方的な関係の積み重ねでネットワークができており、コミュニケーションが成立している。枝(2009)と津田(2009)はそれぞれ会話の在り方、人間関係の在り方という風に、異なる事例を挙げてゆるさを語っていたが、結果的に同じことを述べていると考える。このTwitterの特徴は、コミュニケーションとしては独特の不安定性や不思議さを持っているように見える。

 


 

第二節 時間軸の重要性

様々なツイートが時系列で並ぶタイムラインをホームページとするTwitterであるが、その時間軸の重要性についてもいくつかの指摘がある。林(2009)は、TwitterもブログやSNSと同様に「新しい情報が上」という構造を取り入れているが、相違点として情報を140字内に区切り、情報の鮮度を上げたことが挙げられると述べている。たとえば掲載されたばかりのブログ記事でも、30分かけて書かれた記事なら時間軸は30分巻き戻されるのに対し、Twitter140字のコミュニケーションでは数秒から数分前の情報が活発にやり取りされる。そしてこれを「人々の間に会話的やり取りを発生させるテンポ感だ」としている。

 また、津田(2009)も、140字という字数制限について言及しており、字数が限定されているからこそ、「いまなにしてる?」という問いが投稿のモチベーションとしてうまく機能している、と述べている。さらにTwitterの特徴として“リアルタイム性”を上げており、何かが起きた瞬間と、それが書かれた瞬間、そして、それが誰かの目に触れる瞬間がほぼ同じタイミングなため、非常に現代社会への結び付きが強く感じられるのだ、としている。

 以上本章で紹介してきたゆるさやリアルタイム性という特徴が、実際のコミュニケーションにどのような影響を与えているのか、調査のデータをもとにして詳細に分析していく。