1章 問題関心

 

今から10数年前、NHKで放送されたドキュメンタリー番組『エンデの遺言』を契機として、地域通貨という仕組みが日本で一気に広まりを見せた。コミュニティ活性化を主な目的としていたその多くが、一過性の流行となり、自然消滅へ向かった。

地域通貨は、経済的活性化とコミュニティの活性化、2つの可能性を秘めており、その独自性が人気を博した理由だ。しかし、コミュニティの活性化については、その面白さが理解されにくい。商店街という、経済的活性化を最優先に望むフィールドであれば、なおさらだ。本来、導入の契機となった地域通貨の可能性が断たれてしまうのは何故だろうか。

本稿では、地域通貨やそれを応用した仕組みについて、他県での成功例や富山県における類似例の比較から分析、実際の運用までを行うことで、富山の商店街におけるコミュニティの活性化の可能性を探る。

具体的には、まず一般に地域通貨とされる先例を取り上げ、その分析を通して地域通貨の問題点を指摘する。次に、実際に参加者となる人々に対して、類似例に倣った地域通貨の計画を提案し、彼らの反応や意見を踏まえた分析を行う。その上で、他の成功例の研究を進めるとともに、計画の中で不足する要素や改善の余地を考慮し、地域通貨を応用した第2の計画を提案し、実行に移す。その過程から結果までを細かく分析することで、富山の商店街をフィールドとした、地域通貨で解決可能な問題や残された課題などを考察していく。