2章 先行研究

山田実季「富山市における学童に関する公的支援事業の役割―子育て支援としての可能性―」2005

 論文のテーマは「学童期」を対象とした子育て支援(=学童保育)についてであり、子育て支援としての特徴づけをしている。富山市内の3か所の施設へのインタビューから、放課後児童健全育成事業と地域児童健全育成事業、それぞれについて子育て支援としての有効性と限界を考察している。

地域児童健全育成事業の有効性として、子育ての先輩であり、身近で気軽な相談相手となってくれる@「おばちゃん」という指導員の存在、一人っ子や遊び相手のいない子にとって役に立つA他の子どもたちとの交流、親の急なニーズにも対応できるといったB利用のフレキシビリティ、C習い事や塾へ行くまでの子どもの時間の有効活用を挙げている。その一方、限界として、事業の目的が「子供たちの自由な遊び場の提供」であるため、各自で安全に帰宅できる時間ということを考えると、利用時間の延長がしにくいといったことから、早い閉園時間になっている点が挙げられている。

他方、放課後児童健全育成事業の有効性として、親にとって安心できる、信頼しやすいといったことから、@専門性を持った(経験豊かな)指導員、A公営の施設における無料での保育、B民営の施設における遅い閉園時間、C高学年保育への対応を挙げている。限界としては、富山市においては、70以上の小学校に対して実施施設は全部で22ヶ所しかないということや、住んでいる地域によって受けられるサービスが異なることから、施設数の少なさと分布・経営形態の地域差を指摘している。

それぞれの事業の支援の性質として、放課後児童健全育成事業では、親に直接関わってくる、サービス面での有効性が多いこと、一方、地域児童健全育成事業においては、同じく親にとってのサービス的なものもあるが、多くは子どもにとって有利に働いてくるものだといえる、とまとめている。

この論文では、各調査対象の大まかな一日の流れや、子どもの様子などは調査、記述されているが、各事業の設立経緯や、事業側から提供されているサービス・活動に関しては記述があまり見られないため、本論文ではその点に注目して調査を進めたいと思う。