第六章    考察

 

ここまで高岡コロッケの取り組みを見て、高岡コロッケの取り組みは愛Bリーグに加盟してブランド化を図るまちおこし団体と異なる道をたどっているといえる。その理由は高岡コロッケそのものがブランド化を目指した商品でないからだ。B級ご当地グルメとしてブランド化するということは地域で食されている料理に地域名をつけることで他との差異を生みだし付加価値を産むものである。しかし、高岡コロッケの場合、高岡で売られているコロッケ全てを高岡コロッケと呼ぶことができるため、飲食店の方が創意工夫して作ったコロッケもスーパーで売られているコロッケも「高岡コロッケ」と主張することができる。よって、「高岡コロッケ」にブランド力があるとは言えないだろう。そもそも、高岡コロッケの事例は2004年に始まり、その頃はまだ愛Bリーグも発足しておらず、B級ご当地グルメとしてブランド化する試みは世間に浸透してはいなかった。高岡コロッケのまちおこしの目的は高岡のコロッケをブランド化していくというより、飲食店や企業がそれぞれの創作コロッケを作って、色んなコロッケを食べられるまちとして発信していこうという目的があったのではないかと考えられる。

また、地域ブランド化には競争という要素が色濃く含まれる。この点は、矢部(2006)でも指摘されている。矢部はまちおこしや地域づくりは地域間競争というモデルと強い親和性があると論じている。愛Bリーグの組織体制やB-1グランプリにも競争という要素が含まれており、先行研究の吉野・松尾(2013)では、まちおこし団体同士の協同的かつ競争的な関係を通して、B級ご当地グルメの競争力が創造されると述べられている。B-1グランプリはまちおこしの成果を披露する場でもあるが、全国のB級グルメ団体が集まるため、その中で注目されるには成績上位に入る必要がある。よって、まちおこし団体は、より優れたB級ご当地グルメを作り、より強いブランド力をつけて他地域と競争していくことが必要になる。高岡コロッケは愛Bリーグから脱退はしたが、茨城県で開催されたコロッケフェスティバルに出場して他団体と競ってグランプリを受賞しているため、競争システムをまちおこしに全く取り入れていない訳ではない。だが、高岡コロッケは、イベントでは他団体のB級グルメと競って勝つことを重視するのではなく、まちおこしの活動を披露する機会として多くの人に知ってもらいたいと考えている。よって、愛Bリーグのまちおこし団体と違って、B級グルメを他の地域より優れたものにしようという考えは持っていないということがいえる。

確かに、競争システムも有効かつ有意義だろう。だが、全ての地域がその中で生き残っていけるとは限らない。地元の食材や地元に根付いた料理とは違って、高岡コロッケの事例のように創作コロッケを作ってまちおこしをしていく例では、創作コロッケは他の地域にもあるため、よその地域との段違いの差はつけられないだろう。よって、地域間競争の中ではブランド力を持つ団体と差をつけられてしまい、負けてしまう可能性が高い。しかし、高岡コロッケの事例では、創作コロッケ作りに企業や市民が参加しやすい雰囲気をつくり、コストの投入をかけずに活動が行政から民間へと広がるプロセスが確認された。また、高岡コロッケ実行委員会は愛Bリーグを脱退したが、現在は三コロ会とも交流を深め、共同でグルメイベントを開催した。そして、同イベントではグランプリを獲得し、新たにネット販売を始める動きを見せており、自分達のネットワークで活動を広げている。市内ではラッピングバスの運行やCLUBふみたんの発行等他にも多彩なまちおこし活動を展開している。このように、2004年から現在まで活動を継続して行えていることはまちおこしの形の一つとして成立しているのではないかと考えられる。よって、高岡コロッケの事例は、愛Bリーグに加盟してブランド化を図るまちおこし団体と異なる道をたどってはいるが、地域間競争の時代の中でも生き残っていける可能性があるといってよいのではないだろうか。ブランド化を図る団体の地域間競争だけが地域活性化の全てではないということを示しているのが、高岡コロッケの事例なのではないかと考える。