第一章 序章

 

第一節     問題関心

                      

「食」によるまちおこしは全国各地で盛んに行われている。伝統的な名産品を使ってまちおこしをする地域は多いが、特に最近では、「B級グルメ」を使ってまちおこしをしている地域が増えていると思われる。その要因は静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」の成功にある。地域の名前と地元で食されているB級グルメをブランド化して売り込む手法で富士宮市は一躍有名な市となり、大きな経済効果をもたらした。この富士宮市のように、地域のB級グルメでブランド化を図る団体が統合した全国的組織に「愛Bリーグ」がある。愛Bリーグは同じ加盟団体同士で情報を交換し、単独では解決できない問題を解消することが可能な組織であり、全国各地の地元の食が集結する日本最大級のイベント「B-1グランプリ」に出場することで、観光客の誘致や地域の活性化へと繋がっている。いまや、B級グルメでまちおこしをする団体にとって愛Bリーグに加盟し、まちおこしを展開していくことは有効な手段といえるだろう。

そのような流れの中で富山県高岡市が取り組んでいる「高岡コロッケ」の事例は他のB級グルメ団体の取り組みと異なる姿を見せていると思われる。高岡市では多種多様のコロッケが売られており、一見どれが高岡の代表するコロッケなのか分からない。また、愛Bリーグに加盟せず、様々な取り組みや、他県との繋がりを持って自分達の活動を展開している。よって、高岡コロッケのまちおこしは食材や料理をブランド化していく愛Bリーグのプロセスと違うのではないのだろうかと思われる。そこで、本論文では高岡コロッケの事例に着目し、高岡コロッケではどんなまちおこしの取り組みがされているのかを明らかにし、そこに、どのような方向性が読み取れるのかを探っていきたい。


 

第二節 調査概要

 

第一項 高岡コロッケの取り組み

 

本論文では富山県高岡市で取り組まれている高岡コロッケの事例を調査対象とする。高岡コロッケとは高岡で売られているコロッケを指し、高岡をコロッケの街として活性化させようとする取り組みである。2004年に高岡市の行政が運営するHP「カラーたかおか」でコロッケがまちおこしのコンテンツとして取り上げられ、その後、2006年に高岡コロッケ実行委員会が発足した。活動年数は富山県の他のB級グルメ活動団体と比較しても最も長い。現在はこの高岡コロッケ実行委員会が活動の主体となっており、高岡コロッケ実行委員会に加盟する店舗や企業は高岡市全域に広がっている。同じくコロッケでまちおこしを進める茨城県龍ヶ崎市、静岡県三島市と「三コロ会」を結成し、交流を深めている。2006年末から2年間愛Bリーグに在籍していた経験がある。2013113日に茨城県龍ケ崎市で開催された「第1回全国コロッケフェスティバル」に出場し、グランプリを獲得した。高岡コロッケのイメージキャラクターとして高岡出身の漫画家藤子・F・不二雄の漫画『キテレツ大百科』のキャラクター「コロ助」(コロッケが大好物)を起用している。

調査は高岡コロッケの取り組みの実態について詳しく知るために、活動の主体である高岡コロッケ実行委員会と2つの加盟店へインタビューを行った。加盟店へのインタビューには、加盟店の中でもコロッケの取り組みを比較的精力的に行っていた()インサイト、天の川倶楽部南条にインタビューを行った。

 

第二項 高岡コロッケ実行委員会

 

20066月に高岡商工会議所110周年を記念して高岡市、高岡商工会議所、富山新聞社等が集まって結成された。官民一体となって取り組んでおり、事務局は富山新聞社の高岡支社にある。運営資金などは行政の補助金やイベント時の協賛金などで賄っている。事務局が新聞社と言うこともあり、高岡コロッケに関する記事は随時、実行委員会のHPや富山新聞紙紙面に掲載され発信されている。

 

インタビュイー:松田篤氏(高岡コロッケ実行委員会事務局長/富山新聞高岡支社前支社長)

日時:2012123

場所:富山新聞高岡支社6F

 

インタビュイー:堀昌章氏(高岡コロッケ実行委員会事務局長/富山新聞高岡支社現支社長)

日時:20131017日、2013125

場所:富山新聞高岡市社3F

 

なお、堀氏は今年の8月に松田氏に代わり、富山新聞高岡支社支社長となり、コロッケ実行委員会の代表となった。また、堀氏は実行委員会を立ち上げた時の代表でもあり、再び実行委員会の代表へと戻られた。

 

第三項 ()インサイト

 

高岡市に本社がある商社である。道の駅万葉の里高岡を運営しており、店内のレストランでコロッケを販売している。2004年に「高岡大仏コロッケ」を作り、道の駅の主力商品となっている。店内で販売するだけでなく、県外へのイベント出店や、コロッケ関連グッズの販売など幅広い取り組みを行っており、精力的に活動をしている。

 

インタビュイー:金子俊英氏(常務取締役)

日時:2013813

場所:道の駅『万葉の里高岡』

 

第四項 天の川倶楽部南条

 

2003年創業の高岡市佐野にある定食屋である。有機無農薬を売りにした自家栽培の野菜で料理を提供している。2009年に自家栽培した紫イモで作った「紫イモコロッケ」を創作し、甘い味、体によいという特徴があり周囲からの人気を得ている。イベント参加も積極的に行い、同年、高岡市内で行われた「高岡B級グルメ博」のコロッケコンテストでは準優勝を獲得したこともある。

 

インタビュイー:笠井弘子氏(経営者)

日時:2013823

場所:天の川倶楽部南条