2章 バーチャルアイドルとは

 

バーチャルアイドルとは、インターネットやゲーム・ソフトの中で活動しているアイドル風のキャラクターである。基本的な活動の場所はインターネットであり、その活動はユーザーの二次創作という形で行われている。あくまでキャラクターであるため、後述するバーチャルアイドルを生み出したクリプトン・フューチャー・メディアやバンダイナムコゲームスといった公式という存在が確固として存在するものの、ユーザーに提供した後の展開は基本的にユーザーに委ねられている。つまり、ユーザーによってプロデュースされることによって初めて、活動していくことができるアイドルと言える。

本論で扱うバーチャルアイドルは初音ミクとTHE IDOLM@STRのアイドルの2つである。初音ミク(以下ミク)とは、クリプトン・フューチャー・メディア発売の音声合成ソフト「VOCALOID」の、何人かのパッケージキャラクターの中の代表的な存在である。VOCALOIDとはあらかじめ組み込まれている音声データを調整することで、自由にしゃべらせたり歌を歌わせられるソフトで、ミクはその声の主といった位置づけのキャラクターである。VOCALOIDを使い自作または既存の歌をミク歌わせるユーザーは数多く存在し、ニコニコ動画等の動画投稿サイトにはその歌が投稿され制作者以外の人間も楽しむことが出来る。さらにユーザー開発のMikuMikuDance(以下MMD)という映像技術を得たことで、歌わせるだけだったミクというキャラクターを動かすことが出来るようにもなった。VOCALOIDMMDで作品の制作・投稿を行い、それによって一定の支持を得た人はプロデューサー(以下P)と呼ばれており、優れた 技術を持つPの中には商業デビューしている人も存在する。ファンに関しては、ミク自身にファンがいるというよりも、Pのファンが多いような印象を受ける。最近ではゲーム化や企業とコラボレーションした商品の発売などもされている。なお、本論ではVOCALOIDに関してはミクを中心として論を進めるが、基本的に他のVOCALOIDキャラクターに関しても同様であるとする。

もう一つのTHE IDOLM@STAR(以下アイドルマスター)とは、バンダイ・ナムコ社発売の育成シミュレーションRPGゲームの名称であり、それに関連したコンテンツ全体の総称である。ユーザーはプロデューサー(以下P)となって、登場アイドルを育成(プロデュース)しトップアイドルへと導いていく、というのがゲームの主な流れである。その過程でアイドルとのコミュニケーションやオーディションのイベントなどもあり、リアルな演出やストーリーでユーザーを楽しませている。二次創作ではゲームの音声やグラフィックが素材とされ、ジャンルはストーリー物やPVなど多岐にわたる。各アイドルの誕生日には、誕生祭と称して作品の投稿が激増したりもする。またこのコンテンツでは、「ユーザー=アイドルをプロデュースするプロデューサー」という観念が存在しており、ユーザーは自らを「〜P」と名乗っていることが多い。元々がアーケードゲームのためマイナーなコンテンツだったが、近年アニメ化や企業とのタイアップで以前よりは一般の人の目に触れる機会が出てきている。

以上二つのコンテンツを中心に論を進めていく。