3章      世論の動向

 

 メディアの調査の入る前に、まず世論の動向を世論調査から探っていきたい。世論調査には新聞各社がその紙面上で行っているものから内閣府が行っているものまで多くのものが存在する。その中から今回は内閣府が行った『少年非行に関する世論調査』を使って分析を進めていく。その理由としては世論調査が一定の年数ごとに行われているだけでなく、設問の中に共通した質問が存在するため、世論調査の結果を比較することが可能だからである。

 内閣府が行った『少年非行に関する世論調査』のうち、「青少年による非行等の事件は増えているか」と「社会的に見て問題だと思う青少年による非行等」の質問は4回の世論調査で共通して使われている。そこで今回の調査ではこの2つの質問の結果を使用する。結果を見てみると、「少年非行は増加しているか」という項目は年によって大きく変化していることがわかる。図3-1はそれをグラフ化したものであり横軸は世論調査が行われた年、縦軸は回答者の割合を示している。なお20歳未満のデータは2001年までしか掲載されていなかったので、調査で使用するのは20歳以上を対象としたデータのみである。グラフをよく見ると「かなり増えている」と「ある程度増えている」という回答は、どちらかが減少するともう一方が増加している。そのため少年非行が増加していると考えている人の割合は2010年まではほぼ9割のままでほとんど変わっていない。2010年は増加していると答えた人の割合が減少し、ほとんど増えていないと答えた人が増加したが、それでも75%と高い結果が出ている。ではなぜ少年非行が増加していると考えている人の割合が高い水準で変化しなかったのだろうか。このことについては5章で検討していきたい。


 

3-1

出典:平成10年『青少年の非行等問題行動に関する世論調査』、平成13年『少年非行問題等に関する世論調査』、平成17年『少年非行等に関する世論調査』、平成22年『少年非行に関する世論調査』より作成

 

 「社会的に見て問題だと思う少年非行」の項目も年ごとに大きく変化している。図3-2はそれをグラフ化したものであり、横軸は世論調査が行われた年、縦軸は回答者の割合を示している。興味深いのがその内の「刃物を使った殺傷事件」、「性の非行」そして「強盗・恐喝」の3つの回答が「少年非行が増加しているか」という質問の「かなり増えている」という回答が2001年に減少しその後増加、減少と変化しているのと同じように減少、増加、減少と変化していることである。この2つの事には何か関連性があるのだろうか。「いじめの問題」はこの3つとは異なり、1998年に高い数値を示した後、2005年まで減少を続けているが2010年になると急激に増加した。これら以外の回答は1998年には他の回答と同様に高い数値を出しているが、2001年に減少したあとほぼ同じ数値を保っている。

3-2

出典:平成10年『青少年の非行等問題行動に関する世論調査』、平成13年『少年非行問題等に関する世論調査』、平成17年『少年非行等に関する世論調査』、平成22年『少年非行に関する世論調査』より作成