2章      先行研究

 

メディア報道の分析については梅原恵子(2006)が新聞記事を使った分析を行っている。メディアの報道が、「少年犯罪の増加・凶悪化」という不安が募らせているという仮説を立てた梅原は、新聞を分析素材とし、その量的変化に注目して研究を行った。分析素材は19502005年の朝日新聞縮刷版の記事を五年ごとにピックアップし、それらの各年の159月の記事の全件数とその内の少年非行の件数を数えるという手法で収集した。少年非行の記事の割合と検挙人数を比較すると、多少ずれはあるが検挙人員に連動して記事件数が増減していたが、例外的に2000年だけは記事件数だけが爆発的に増加していた。これに関しては「いじめ」の増加と、西鉄バスジャック事件を始めとした容疑者が少年である殺人事件の発生、そしてその記事が意図的に多く報道されたことが関係していると述べている。さらに、少年犯罪と同じ時期に起きた「不登校」や「引きこもり」の増加が、「少年犯罪の増加・凶悪化」と関係づけられた可能性も析出した。以上のことから梅原は、近年の新聞報道での一つの事件に対する過剰な報道、また少年犯罪の記事は記事を書く側の影響で増加すること、少年犯罪以外でも、「少年犯罪の増加・凶悪化」のイメージを抱かせる記事があり、それが増加していることの三つが要因となって、人々の「少年犯罪の増加・凶悪化」の「現実」が創られたと述べている。

この研究では少年犯罪の記事の数をもとに少年犯罪のイメージがどのように形成されるのかを調査している。しかしイメージが形成される過程に重点を置いているため、実際に世論が変化しているのかについては触れられていない。そこで今回の調査ではまず世論から少年犯罪に対する認識を探り、新聞報道が世論に対してどのような影響を与えているかについて調査を行っていく。