第五章 質的分析

 

ここからは、量的分析において確認できた1990年における知識・教養のある男性の登場や、現代には容姿の整った男性や年下男性が取り上げられるようになったということについて、1990年と現代の記事の内容にまで踏み込んだ分析をしていく。

 

 

第一節 知識・教養・年上・仕事

 

1990年の男性に求められていた魅力であると思われる「知識・教養」と「年上」ということについての1990年と現代の言説を見ていきたい。また、知識、教養や年上について語られる際、「仕事」という言葉が用いられることが多いように見受けられるので、新たに「仕事」という観点を含めたい。「知識・教養」、「年上」、「仕事」という3つの観点を設けて分析していく。

 

 

第一項 1990年の男性についての語り

 

はじめに、知識・教養のある男性についての語りの記事内容を見ていく。199061日号の特集「目的別に男を選ぶ。」内の記事「教養のある男性、なぜ欲しいのか。そしてどう見つける?」では、知識・教養のある男性について女性たちのこのような語りが取り上げられている。なおカッコ内は女性の職業である。

 

 

10歳ぐらい年上で常識人と接すると、仕事の手順から食事マナーまで、きちんとしてて気持ちがいいんです。

一緒にいて自己反省する部分もあるし、こうでなくっちゃ人を引っぱっていけない…と触発されます。

(プロダクション社長)

 

インテリ男は会話がうまいし聞き上手。ほめ言葉もさりげないから自分を気持ち良くさせてくれるし、

第一賢くなること間違いなし。知らぬ間にマナーを直されたり等、内面的プラス表面的なでこぼこを取ってくれる。

(オリエント航空販売促進部)

 

たとえば外人を迎えるときのマナーとか、パーフェクトにできる男性がそばにいてくれると、

凄く勉強になります。                         (『クラランス』マーケティング&PR部)

 

 

相手から吸収するだけではなく対等に話をするために自ら進んで勉強しようという気になりますから。(プロデューサー)

 

 

自分が女である事にあぐらをかいていてはまずいぞ、と思わせてくれたり向学心を刺激されたり!(プランナー)

 

 

 

知識や教養のある男性について、「勉強になる」「向学心を刺激される」というような語りが取り上げられていた。1990年の誌面には、女性はマナーなど知識、教養を持った男性と接することが刺激となり勉強となっていたということが描かれている。

 

続いて、年上男性についての語りについて見ていく。199061日号の特集「目的別に男を選ぶ。」内の記事「きっと役に立つ、男の正しい選び方」では、年上男性の魅力について女性たちのこのような語りが取り上げられている。カッコ内には話し手である女性の職業を記載する。

 

 

仕事の悩みや相談ごとを受けてもらうのは、やっぱり年上。決断力とか、バイタリティーとか、

大人の男のパワーを見せられると、こっちも元気になれるし。(デザイナー)

 

 

仕事のアドバイスや、不動産、銀行関係の契約の相談に乗ってもらったり、

年上の人には実用面でお世話になるってかんじです。(イラストレーター)

 

 

甘えん坊で超ウルトラわがままだから、年上の人といる方がラクチン。年上のおまかせコースに乗って、あちこち連れてってもらうのが安心感がありますね。

年上の人には、“どっか連れてってぇ〜”というだけで、こっちからあれこれ言わず、全面的におまかせするのがいいみたい。(ミュージシャン)

 

 

仕事のお付き合いは、ほとんど年上の人。話の内容は楽しいし勉強になることも多いですね。

相談を持ちかけても、いろいろアドバイスしてくれるし、安心できる存在です。(タレント)

 

 

 

年上男性は、仕事ができ、いろいろなことについてアドバイスをくれる、勉強になる、安心感がもてる、遊びの際にもリードしてくれるなど、頼りになるところが魅力として挙がっている。またほとんどの女性が「仕事」という言葉を挙げており、仕事のアドバイスや悩み、相談に乗ってくれることを挙げていることから、特に「仕事ができる」ということが年上男性の魅力として取り上げられていることが分かる。

 

 

1990年の誌面には、知識・教養を持った男性と接することでそれらを学び、それによって自分自身を成長させている女性たちが描かれていた。また、年上男性については仕事面でアドバイスをくれるなど、仕事ができて頼りになるところが魅力だとして取り上げられていた。

しかし、現代においては女性が男性に知識や教養を求める言説、年上男性の魅力を語る言説は減っており、それに代わり男性側が女性にそれらを求める言説が増えているように感じられる。つまり、現代は男性が女性に知識・教養や頼りがいを求める傾向にあるのではないだろうか。以下でそのことについて検証していきたい。

 

 

 

第二項 現代の女性についての語り

 

20091111日号の特集「U-21限定 抱きしめたい。その魅力。年下の男」内の記事「彼女たちのどこがいいの?何歳上までOKなの?僕たちが年上女性を好きな理由。」では、10代から20代の一般男性による年上女性の魅力についての語りが取り上げられている。

また20111019日号の特集「大人恋愛のルール」内の記事「やっぱりアラサ―はモテ度No.1!? ボクたち、大人の女性と恋したい」において、2535歳の男性によるアラサー女性の魅力についての語りが取り上げられている。これらの2つの記事で挙げられていた女性の魅力を4つにまとめた。以下にそのデータを挙げる。カッコ内には掲載年、男性の年齢、職業を記載する。

 

 

魅力(1)『仕事ができる』

・仕事でトラブルがあったときに、それを要領よくこなすところ。(201126 販売)

・仕事とか何でもできて、かっこいい。(200924 不明)

 

魅力(2)『精神的な自立』

・悩みをむやみに人に言わない。(2011 27 販売)

・他人に依存しない。(2011 33 SE

・辛いことがあっても、顔に出さない。(2011 35 ライター)

 ・どんなときでも落ち着いて物事に対応している。(2011 28 会社員)

・落ち着いていて、リードしてくれそう。(2011 19 不明)

 ・決断力がある。(2011 32 広告)

・年上だと、相手の仕事も仕事で忙しいのでこちらの忙しさを理解してくれる。(2009 22 不明)

 

魅力(3)『知識・経験が多い』

・知識や経験が多い分、発言に説得力がある。真剣な相談をメールしたら、長文で返信してくれて、僕の悩みは一気に解決しました。(2009 16 学生)

・学生時代に付き合っていた社会人の彼女に常識やマナーなどを教わりました。(2010 30 広告)

 

魅力(4)『成長できる』

・尊敬→好きがいつものパターン。付き合うことでお互いに成長したい。(2009 26歳会社員)

・お互いに時間を自由に使える。成長できる。(2009 22 不明)

 

 

 

魅力(1)の『仕事ができる』という点は、1990年に女性が年上男性に同じことを魅力として感じていたことが第一項で確認できている。また、魅力(2)の『精神的な自立』の中の「決断力がある」という言説だが、第一項で取り上げた年上男性についての語りの中に「仕事の悩みや相談ごとを受けてもらうのは、やっぱり年上。決断力とか、バイタリティーとか、大人の男のパワーを見せられると、こっちも元気になれるし。」という言説があったことから、同じことが魅力として語られていることが分かる。魅力(3)の『知識・経験が多い』という魅力についても、第一項において女性が同じことを男性に感じていたことが確認できている。魅力(4)の『成長できる』といった言説も、接することで成長できるという点でかつての女性たちの考え方と一致していることが分かる。つまり、1990年の男性と同じ魅力をもった女性が魅力的であるということが現代の誌面に描かれているのである。

 

 

1990年の女性が当時の男性に感じていた魅力と、現代において男性が女性に感じている魅力は「知識や経験が多い分仕事もできてマナーもあり、接することで自分自身が成長できる」という点で一致していることが分かった。

さらに、現代の誌面に知識・教養をもった男性有名人が登場しなくなったことや、女性たちが知識をつけ仕事ができるようになったことによって、現代の女性たちは必ずしも知識や教養のある男性のことを「魅力的だ」と感じなくなっていることが予想される。そのため現代には「知識・教養」に代わる新たな魅力が存在していることが考えられる。それが「容姿」なのではないだろうか。第四章の第三節でも述べたように、容姿が注目される男性有名人の登場やイケメンという容姿に関した呼称が使われるようになったという変化からも、新たな魅力は「容姿」であることが考えられる。そこで次に「容姿」についての分析をしていく。

 

 

 

第二節 容姿について

 

現代において知識・教養に代わる新たな魅力は「容姿」なのではないだろうかということから、容姿に関する記事内容を分析する。

 

第一項 俳優・アイドル・スポーツ選手の体

 

2010年から年に1回のペースで「オトコノカラダ」という特集が組まれるようになった。内容としては男性有名人のグラビアで、俳優や歌手、スポーツ選手たちの鍛え上げられた身体が掲載されている。以下に2010年と2011年の目次を挙げる。なお、Pはページ数である。

 

 

2010120日号

オトコノカラダ

P16 櫻井

P24 瞬きできない! アスリートのカラダ

P30 萌えるカラダは8タイプ!? 徹底分析!好きな体型ランキング。

P38 ファインダー越しの色気が最高! 女性写真家×U-21男子セッション

P42 超新星〈グァンス〉の超美体 極上SEXY! 韓流スターの体はなぜ美しいのか。

P48噂の「アバクロ」銀座店は美体イケメンの宝庫です!!

P53 読者アンケートで本音が続々!?「私、男のカラダのココが好き!

P60親切、ハンサム、ナイスバディイケメントレーナーに指導されたい!

P65女性誌初登場! 妄撮®男子

P92 何気なくチラ見した鎖骨やお尻に、思わず目がクギ付け!! 顔より重視する!? 萌えパーツ。

 

201139日号

オトコノカラダ 

P20  specialグラビア 城田  

P26  大東俊介 

P30  瀬戸康史 

P34  中村  

P40  磨きぬかれたアスリートの美しいカラダ 

P44  しなやかが好き? マッチョが好き? まぶしすぎる韓流ボディの秘密。 

P53  ホントは、みんな知りたい。 今まで誰も教えてくれなかった男と女 カラダ相性の真実。 

P66  妄撮(R)男子 神楽坂物語 

P72  今すぐ抱きしめられたい! 精悍で逞しい平岡祐太のカラダ。 

P88  もし、この指に触れられたら… オトコノテ 

P90  ふとした瞬間、“ドキッとする… オトコノパーツ 

P92  重なり合うと、熱い体温を感じる… オトコノハダ 

P94  彼のカラダって、こうなってるの!? オトコの体がよくわかる ラブコラム集 

P102  総勢44人からグランプリを選出!! オトコノハダカ。 総集編

 

 

2010120日号の24ページの「瞬きできない! アスリートのカラダ」、また92ページ には「何気なくチラ見した鎖骨やお尻に、思わず目がクギ付け!! 顔より重視する!? 萌えパーツ。」とあり、「瞬きできない」や「思わず目がクギ付け」などという表現が見られ、男性の体を注視している表現が使われていることが分かる。また、201139日号では88ページ以降に「もし、この指に触れられたら… オトコノテ」、「ふとした瞬間、“ドキッとする… オトコノパーツ」、「重なり合うと、熱い体温を感じる… オトコノハダ」という内容が続き、男性の手、パーツ、肌など細かいところにまで注目した内容が取り上げられていることが分かる。

この特集に登場する男性有名人の職業に注目してみると、2010120号の巻頭に登場する「櫻井翔」はアイドルグループ「嵐」のメンバーである。また、同号の42ページに登場する「グァンス」は韓国のヴォーカル・ダンスグループ「超新星」のメンバーである。このことから、俳優やスポーツ選手、アイドルなど様々な職業の男性たちのグラビアが掲載されていることが確認できる。

 

さらに男性のグラビア関連で、2010120日号から「オトコノハダカ。」という連載が始まっているのである。「オトコノカラダ」が年に一回の男性有名人のグラビアであるのに対し、「オトコノハダカ。」は一般の男性のグラビアを掲載するコーナーである。2010106日号までの間の不定期の連載であったが、一般男性のグラビア連載までもが存在していたのである。このことから現代では有名人や職業、一般男性に関係なく「男性の体」が見られる対象として取り上げられていることが分かる。

 

 

 

第二項 お笑い芸人の容姿

 

201091日号には「爆笑トークでモテ男街道まっしぐら。発表!芸人モテモテランキング。」という記事がある。1500人の女性読者にアンケートを行い、お笑い芸人に関する様々な質問をランキング形式で発表している。その中で容姿がポイントとなっているランキングの例を以下で紹介する。

 

彼にしたい芸人(カッコ内はコンビ名)

1位 徳井義実(チュートリアル) 

2位 若林正恭(オードリー)

3位 藤原一裕(ライセンス)

4位 春日俊彰(オードリー)

5位 設楽 統(バナナマン)

 

 

1位の徳井についての解説は、「ルックス、トーク、男のエロス。三拍子すべて揃った最強のモテ男。」である。5位の設楽についても「とにかくかっこいい」とルックスを支持する人が多数であったと解説されている。また、「ぶちゃいくだけど彼にしたい芸人」というランキングも掲載されており、このことからもお笑い芸人にルックスが求められていることが分かる。さらに、「このパーツさえあれば付き合える、という芸人は?」というランキングでは、お笑い芸人たちの手や目がきれいであると細かい体の一部まで評価されており、お笑い芸人とはいえ体の一部まで見られているということが分かる。

第一項、第二項より、歌手、俳優、スポーツ選手、お笑い芸人など現代の誌面を飾る男性有名人たちは、顔や体など容姿が注目されていることが確認できた。楽曲や演技、記録、笑いのセンスなど職業の内容自体も大切であるが、容姿も魅力の1つとなっていることが現代の誌面には描かれていた。

 

 

 

第三節 女性の積極性

 

同章第一節の第一項でも述べたが、1990年において年上男性は頼りがいのあるところが魅力として取り上げられていた。そんな年上男性に比べて年下男性は知識や経験も少ないことが予想され、頼りがいに欠けることが考えられる。しかしそれでも現代で年下男性が取り上げられるということは、女性が男性をリードできるようになっているということなのではないだろうか。そこで、女性が男性や恋愛に対して積極的である表現の見出しを年代ごとにまとめて分析していく。以下がそのデータである。なおカッコ内には号数を記載する。

 

 

1990

・目的別に男を選ぶ!(1990/6/1

・きっと役に立つ、男の正しい選び方。(1990/6/1

・さよならは、私から言う(1990/3/16)。

・こんどの恋は、私がみつけた。(1990/3/23

 

 

現代

・彼のハートに絶対着火!女ですもの、たくらみの一つや二つ。(2009/1/5

・攻略不可能の噂が絶えません…。“燃えない男子”の緊急着火対策。(2009/1/5

・待っているだけじゃ春は来ない。結婚したいなら即アクションを。(2009/1/28

・煮えきらない男に、5手でプロポーズを言わせる秘法。(2009/1/28

・「気がきく!楽しい!癒される。理想の同棲相手を育成するには?2009/5/27

・「一緒に住もう」の一言が聞きたくて。優柔オトコを決心させる13の技。(2009/5/27

・チェックリストで見えてくる、間違いのない男選びの最新基準。(2009/7/1

・「探す」より「育てる」ほうがラク?いい男は自力で育成すべし! 2009/7/1

・狙った男を一撃命中!女子タイプ別スナイパー大作戦。(2009/9/23

・白馬の王子様を待っていても来ません。“愛され待ち”から今こそ脱出!(2009/9/23

・彼女もち、超年下、モテ男を中心に。高難易度のオトコは、こう落とす。(2009/9/23

・モテ女が使う、男に刺さるキラーワード集。瞬殺!「私はこの一言で男を落としました。」(2010/2/17

・奥手な彼にOKサインを送ろう!(2011/1/4

・落としたいなら知っておくべき!モテ男攻略7か条。(2010/9/1

・男っぷりはその仕事に出ます!  職業別・狙いめ男子の落とし方。(2011/9/14

20歳から55歳まで完全分析!  “年齢ゾーン別”男の攻め方。(2011/9/14

・モテ男!? 彼女あり…!?  ムリめ男子を振り向かせる! 2011/9/14

・いちばんやっかいなタイプ!?  恋愛欲求が低い男子の攻略法。(2011/9/14

 

 

現代は「言わせる」、「振り向かせる」、「こう落とす」など、1990年に比べて女性側が熱くなって積極的であるような表現が使われている。

2009128日号の「待っているだけじゃ春は来ない。結婚したいなら即アクションを。」や2009923日号の「白馬の王子様を待っていても来ません。“愛され待ち”から今こそ脱出!」といった見出しから、女性はこれまで男性がアプローチしてきてくれるのを待っていた傾向にあったことが分かる。そして「即アクションを」や「今こそ脱出」など、現代では行動を起こして現状を変えることを女性たちに促すような表現が使われている。一方男性たちは「燃えない男子」、「煮えきらない男」、「優柔オトコ」、「恋愛欲求が低い男子」などと表現されていることから、恋愛や女性に消極的な男性が想像される。これらの見出しの表現から、控えめな男性の姿と積極的な女性の姿を読み取ることができる。

そしてこれらの見出しの中から、男性に対する女性の積極性を示す「言葉」に着目していく。特に特徴的な言葉として、「選ぶ」、「落とす」、「育てる」の3つの言葉に注目したい。

 

 

(1)選ぶ

まず1つ目に「選ぶ」という言葉について見ていく。この「選ぶ」は1990年と現代のどちらの見出しにも使用されていた言葉である。1990年では61日号の「目的別に男を選ぶ!」と「きっと役に立つ、男の正しい選び方。」の2つの見出しに使用されている。現代では200971日の「チェックリストで見えてくる、間違いのない男選びの最新基準。」と「見る目確かな10賢人が推薦!今選ぶべき男とは?」、2011914日号の「オトコの選び方・落とし方」の3つの見出しに使用されている。

199061日号の特集「目的別に男を選ぶ。」内の記事「目的別に男を選ぶ!」ではまず、「もっと自分が磨かれるような男友達との関係を持とう」、「男の友達を持つことは、自分の生活を拡大したり自分自身を成長させたり、それ以上に、恋愛をするときのためにも役立つ。もちろん、その男友達と恋愛に移行してもいいし。」とあり、この特集の趣旨が恋愛のための男選びについてよりも自分自身を高めることが目的の男選びについての記事であることを述べている。また同号の「きっと役に立つ、正しい男の選び方。」では、「どんな男性がどんな時に必要なのか、男を正しく選ぶことで、さらに自分をレベルアップ。」とあり、スポーツマンやギャンブル上手な男、外国人男性などと交流することがどのように役立つのかを紹介している。このことから、1990年における「男選び」の特集は、恋人選びではなく、女性たちがその時々で目的にあった男性を選ぶことで自分を磨き、高めよう、という趣旨であることが分かる。

一方、200971日号の特集「男を見る目をとことん磨く!」の中の「チェックリストで見えてくる、間違いのない男選びの最新基準。」という記事には、「自分の恋愛傾向にクセがないかチェックしていきましょう。」とあり、この記事の男選びの内容が恋愛対象の男性を選ぶことにあるということが分かる。また2011914日号の特集「オトコの選び方・落とし方」のサブタイトルには、「気になる彼の職業は?年代は?彼女の有無は?」とあり、こちらも恋愛についての内容であることが分かる。現代における男選びの特集や記事は、恋愛対象となる男性の選び方について取り上げているのである。

1990年と現代のどちらの時代にも「男を選ぶ」という感覚が存在しており、特集されているのだが、記事の趣旨が自分を高める男友達を選ぶことと恋人を選ぶことというように異なっているのである。

 

 

(2)「落とす」

「落とす」は現代のみに使用されていた言葉で、5つの見出しに使用されていた。「落としたいなら知っておくべき!」、「高難易度のオトコは、こう落とす。」、「私はこのひと言で男を落としました」、「ターゲットの彼を落とすために」、「狙いめ男子の落とし方。」というような使い方がされており、積極的な女性が想像できる表現である。

200991日号「モテ男の落とし方。」と2011914日号「【ターゲット別大分析】気になる彼の職業は? 年代は? 彼女の有無は?  オトコの選び方・落とし方 」では「男を落とす」ことをテーマに大きな特集を組んでいる。

 

以下にその2つの特集の目次を挙げる。なおPはページ数である。

 

 

201091日号「モテ男の落とし方」

P20 落としたいなら知っておくべき!モテ男攻略7か条。

P22 その行動パターン、恋愛気質、Sexまで…。100人の女子アンケートで判明したいまどきのモテ男 徹底分析!

P30 なんでそんなことが言えるのぉ!?モテ男が発した爆笑の語録集。

P34 実践テク モテ男が陥落する最強メソッド×4

P42 イケメン88人アンケートで判明!モテ男が落ちた瞬間とは?

P46 緊急対談・小原正子×トリンドル玲奈あなたの周りにも潜んでます。非モテの皮をかぶったモテ男。

 

 

モテている男性は競争率が高いということであり、その競争率が高い男性たちの生態を分析し、落とすための方法を特集している。38ページからは実践テクニックとして、

モテ男の意見を参考にした「メール」、「合コン」、「デート」におけるテクニック、モテ男を落とす「フレーズ」を紹介している。

 

 

2011914日号

「【ターゲット別大分析】気になる彼の職業は? 年代は? 彼女の有無は?  オトコの選び方・落とし方」

P18 ターゲットの彼を落とすためにあなた自身の武器と弱点を知ろう! 

P22 男っぷりはその仕事に出ます!  職業別・狙いめ男子の落とし方。 

P28 20歳から55歳まで完全分析!  “年齢ゾーン別”男の攻め方。 

P32 モテ男!? 彼女あり…!?  ムリめ男子を振り向かせる! 

P36 いちばんやっかいなタイプ!?  恋愛欲求が低い男子の攻略法。 

P38 肉食と草食の両刀遣いが魅力!  韓国男子を恋人にしたい。 

P42 いま、とっても増えています。 “年の差恋愛”という選択。 

P45 読者300人の実録!  私、ダメ男と恋してます…。 

P86 これをされるとたまらない… オトコが萌える仕草、大研究。 

P92 付き合ってからが本番です。 恋愛関係を長続きさせる方法。 

 

 

22ページの「男っぷりはその仕事に出ます!  職業別・狙いめ男子の落とし方。」では、男性の職業を「研究職・SE」、「上級公務員」、「銀行・商社マン」、「警察・消防・自衛官」、「営業・マスコミ」、「企業経営者」、「医師」、「弁護士・税理士・公認会計士」の8つのカテゴリーに分け、それぞれの「性格」、「恋愛観」、「コンプレックス」、「デートパターン」、「生息地」、「好きなタイプ」について分析している。

36ページからの「20歳から55歳まで完全分析! “年齢ゾーン別”男の攻め方。」では、男は育った時代背景で全く価値観が違うという考えのもと、22歳から55歳の特徴を世代ごとに細かく分析している。各時代の男性たちの「狩り方」として「飲み会テク」、「ケータイ使いのポイント」、「攻めファッション」、「殺し文句」、「セックスの好み」、「コンプレックスと地雷」を紹介している。

このように男性を職業、年代別などにカテゴリー分けし、生態分析から攻略法まで詳細な情報が掲載されており、「殺し文句」をはじめ「狩る」や「攻め」など積極的な言葉が使用されることによって、恋愛に積極的になっている女性の姿が表現されている。

 

男性を「落とす」記事について見ていくと、競争率の高いモテ男を落とすための攻略法や、彼女がいる男性を落とすための記事など、発展する可能性が低いと思われる男性へ挑戦する女性に向けた内容の記事も見られた。また「私はこの一言で男を落としました。」というような見出しも見られ、女性が積極的に恋愛をしている様子が描かれていることが分かった。このように、現代のみに使用されていた「落とす」という言葉は、女性の積極性を示す新たな表現であると言える。

 

 

(3)「育てる」

 「育てる」もまた現代のみに見られた言葉である。「気がきく!楽しい!癒される。理想の同棲相手を育成するには?」、「探すより育てる方がラク?いい男は自力で育成すべし!」というように2つの見出しに使用されていた。この見出しからも分かるように、「育てる」とは理想の男性が見つからないのであれば女性が自分で男性を育て上げればよい、という考え方である。2011914日号「オトコの選び方・落とし方」内の記事、「いま、とっても増えています。“年の差恋愛”という選択。」において、恋人を自分好みに育てたという女性の実例が紹介されている。以下にその詳細と女性のコメントを挙げる。

 

 

女性:50歳 会社経営

男性:32歳 バーテンダー

出会いのきっかけ:彼女が逆ナンパ

交際期間:2

 

 

バーで隣に座った彼のことが気に入って、その夜にさっそくお持ち帰り。私、面食いなの。欲しいものは自分の力で手に入れなくちゃね。男からのアプローチを待ったりはしません。

彼、イケメンといってもファッションセンスはゼロ。でもそれでいいの。若い女の子は『恋人にするならオシャレな男がいい』とか言うけど、服装なんて自分好みに染めてしまえばいい。

その点、彼は背が高くて手足が長いから、着飾り甲斐があるの。男を選ぶときは、そういう素質を見ないとね。バブル世代に比べたら彼の収入は多くはないし、野心も覇気もない。

それでも日本の社会はいまだに『男が女を養うもの』と思い込んでるでしょ?若い男の子にはそれが大きなプレッシャーになっているんだな、と彼を見ていて感じますね。

つまりそのプレッシャーを取り除きながらとことん甘えさせれば、私から離れられなくなる。まるで子育てと笑う人もいるけど、自分好みの理想の男性に育てられるから楽しいの。

 

 

出会った当初、面食いであるこの女性は彼の顔は好みだがファッションセンスには納得していなかった。完璧な理想の男性ではなかったが、自ら積極的にアプローチをしかけ、交際をスタートさせた。そこから彼を自分の理想の男性に育て上げ、そのことを楽しんでいるという体験談である。

「育てる」という言葉の表現自体も新しいものであるが、「男性を育てる」という発想自体が1990年には存在していなかった新しい考え方であると言える。そして女性は男性を自分で育てようと思える、さらには実際に自分の理想の男性に育てることができるまでに成長したことが現代の誌面には描かれているのである。

 

 

現代の見出しには、「高難易度のオトコは、こう落とす」や「ムリめ男子を振り向かせる!」など女性側が積極的になっている表現がいくつも見られた。それに引きかえ1990年の見出しに見られた積極的な表現は「選ぶ」のみであった。また1990年の男性を選ぶ記事の内容は、女性たちが自分自身が成長するために、自分磨きを一番の目的として男性を選ぶという内容であったのだが、それが現代では恋人を選ぶという目的の内容に変化して取り上げられていることが分かった。さらに、現代の見出しには男を「落とす」という新たな言葉が見られ、それについて大きな特集も組まれていた。また、落とした男性を女性が自分の理想の男性に「育てる」という新たな発想が登場していることが分かった。