第三章 調査概要
第一節 雑誌選定
谷本(1998: 289)によると、「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」という恋愛と結婚を結びつける観念が18世紀から19世紀にかけて西欧で誕生し、高度経済成長期以降に日本に普及したという。これは、恋愛の先には結婚があり、恋愛の目的とは結婚というゴールにあるという考えである。これによって人々に「恋愛は結婚に結びつくべきだ」と広く認識されるようになった。
恋愛の目的が結婚をすることにあるということであるが、10代の恋愛はまだ結婚は視野に入っておらず、結婚と恋愛はなかなか結びつかないことが大抵であると思う。40代の恋愛は結婚を視野に入れ、他の世代よりも真剣に結婚を意識しながら恋愛をしていることが予想される。20代から30代は恋愛を気軽に楽しむことも、また結婚を視野に入れた恋愛をすることもあるだろうと考え、どちらの要素も含んだ構成がされていると思われるこの層を対象とした雑誌を選択したいと思う。
記事の内容としては年間を通して恋愛・結婚の記事や特集が多く組まれている雑誌を選び、本調査ではその中でも特にそれらの特集や記事が多くみられた「an・an」の1誌に絞って調査を行う。
第二節 「an・an」について
an・anは1970年3月に創刊されたマガジンワールドが発刊する女性誌である。平均発行部数は201,225部(2010年10月から2011年9月)で、最高発行部数は750,000部である。以下はマガジンワールドによる雑誌プロフィールである。
おしゃれもコスメもダイエットも占いも恋愛も…20代の女性が気になる話題は、すべてアンアンのテーマです。
週刊誌ならではのニュース性もプラスして、読めば必ず女っぷりが上がる日本一の女性誌。それが『アンアン』です。
(マガジンワールド 2012年6月)
「20代の女性が気になる話題は、すべてアンアンのテーマです。」とあることから、an・anは20代の女性をメインのターゲットとして作られていることが分かる。また、「あなたは大丈夫? 28歳からのエイジング危機!!」(2010/7/14)、「免疫力の低下が病気を招く!! アラサー女子・要注意の8大疾患。」(2010/5/12)、「アラサーモテ期説 Part 1 25〜38歳の男性に聞きました なんと100人中98人が28〜33歳の女性に魅力を感じています!!」、「アラサーモテ期説 Part 2 さらに詳しく…28〜33歳最強モテ期説を検証する。」(2011/2/2)、「やっぱりアラサーはモテ度No.1 !? ボクたち、大人の女性と恋したい」(2011/10/12)、「悩んでいるのはあなただけじゃない。アラサー女子を困らせる 7つのモンダイ。」、「貯金ゼロ、実は借金も…。アラサー女子の切実なお金危機!」(2010/7/21)というような見出しも見られ、「28歳」、「アラサー」という20代後半を意味する言葉が使われていることが分かる。このことから、an・anは20代でも特に20代後半の女性をメインのターゲットとしていることが分かる。
問題関心、先行研究で述べたように、1990年は「アッシーくん」の流行や男性問題の時代への突入の年であったことから、1990年が1つの転機であると考えられるので1990年と現代のan・anを比較する。なお1990年に発売された総数は50冊であったので、1990年は全50冊を対象とする。現代の方はできるだけ新しいものを使用したいため、2009年、2010年、2011年を対象とする。2009年1月5日号から2011年12月21日号までの全147冊を対象として調査を行う。