第二章 先行研究

 

今回筆者が問題関心としている、「インターネット上のコミュニケーションとオフ会でのコミュニケーションの相互関係」に類似するものとして、オンラインコミュニケーションからFace to Faceの関係になった、あるファングループを調査した研究が存在する。そこには、そのファングループが結成しオフ会が開かれ、グループを再編するまでに、どのような「仲間感」を持ちながら関係を保持していったかが書かれている。以下にその論文を紹介する。

 

清水(2006)は、オンラインでのコミュニケーションを契機としてFace to Faceに至ったグループの事例に関連がありそうな概念として、「情報縁」と「選択縁」を挙げ、Face to Faceの関係に至る前のグループは「情報縁」の特徴をもっていたと述べている。

「情報縁」については、以下の説明をしている。

 

集団というのは、これまでなんらかの社会学的属性を共有していることが多かった。地縁、血縁、社縁、学校縁のどれもそうである。学校や会社のクラブやサークル(サッカーなど)もまた、そうした社会学的境界の外へ出るものではない。ところが電子メディアはそうした属性によるつながりを重要な要件とはしないという意味で、情報世界の縁、すなわち「情報縁」を出現させた。(池田謙一・柴内康文 19978』(清水200628

 

清水(2006)は、地縁や血縁、学校縁というような属性による繋がりを重要視しない電子メディアによって可能になった情報による繋がりを情報縁である、と捉えている。

「選択縁」については、次のように説明している。

 

上野千鶴子によると、社会集団の組み方は、文化人類学者の米山俊直氏が分類した血縁、地縁、社縁に加えて、選択縁に分けられるという。血縁、地縁、社縁は「選べない縁」であるのに対し、選択縁は「互いに相手を選び合う自由で多元的な人間関係」という意味での「選択縁」であるという。(清水 2006

 

清水(2006)の調査対象である、インターネットを通して作られたグループは、社会的属性に縛られない、多様な人々が集まるという「情報縁」の特徴を持っていたが、Face to Faceの関係を持つようになってからは、顔を合わせて集まることのできるメンバーのみが集まり、グループの再編によって顔を合わせない参加者やインターネットで幽霊メンバーのような参加者はグループから排除されていったという。初めは自由で開放的であった関係が、クローズドな関係に変化した(清水 2006)という。

  以上が、清水(2006)の研究をまとめたものである。清水は、現実世界における集団という概念を、インターネット上での集団にも当てはまるのではないか、と調査を進めた。その結果、インターネット上で知り合いFace to Faceの関係に至るまでのグループには「情報縁」が関係していたが、グループの再編により開放的であった関係がクローズドな関係に変化してからは、グループが「情報縁」の特徴を排除してクローズドな関係を求めるようになっていったと述べている。

  SNSの大きな利点として、見ず知らずの人であっても、趣味という共通点を通して繋がることができるという「情報縁」としての特徴が挙げられる。清水の調査では、オフ会によって顔見知りになった後は、クローズドな関係を求めるあまり、「情報縁」の特徴を排除していったという。このようなケースは、現在存在するSNSのコミュニティにおいても当てはまるのだろうか。

  SNSのオフ会の影響として、以上のことがいえるのかどうか、見ていきたい。