第六章 まとめ

 

本文ではここまで、新聞調査を通じて、児童虐待の加害者報道に関して、どのようなまなざしが存在し、作用しているかを調査した。

女性(母親)は母性を有しており、育児を喜びとし、また、そうした母性的行動を難なく行えるものであるとする母性神話をベースとしたまなざしは、同時に母親の役割から逸脱した女性を批判し、結果として女性にプレッシャーを与えかねない。

加害者女性を中心にまなざしが向けられることで、加害者男性の存在にはまなざしが向けられにくい傾向があり、それが今回の調査で見られたような報道上の男女差を生んだものと思われる。

何を児童虐待とするか、というまなざしは、虐待を発見、防止するという本来の目的から外れ、時にプレッシャーとなって親を追い詰め、まなざしのむけられない事態を隠ぺいしてしまうことがあると懸念される。

問題を見つめるまなざしがどのようなものか常に自問し、再考することが重要だといえるだろう。