第3章 質問紙調査概要
本章では、本論文で扱う質問紙調査の概要を説明する。
この調査は、「大学生の将来展望の有無に影響する要因は何か」を明らかにするために行った。調査対象者は富山大学に在籍する男女249名で、2011年7月に2011年度前期社会学実習の一環として実施した。調査対象者の詳しい内訳は以下の通りである。
表3−1 調査対象者の内訳
学部 |
男女 |
1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
計 |
人文 |
男 |
0 |
8 |
5 |
1 |
14 |
女 |
2 |
15 |
42 |
12 |
71 |
|
人間 発達 |
男 |
1 |
6 |
0 |
0 |
7 |
女 |
1 |
23 |
6 |
1 |
31 |
|
経 |
男 |
4 |
8 |
5 |
2 |
19 |
女 |
1 |
1 |
3 |
1 |
6 |
|
理 |
男 |
3 |
11 |
0 |
1 |
15 |
女 |
0 |
6 |
1 |
0 |
7 |
|
工 |
男 |
10 |
27 |
11 |
0 |
48 |
女 |
2 |
6 |
7 |
0 |
15 |
|
計 |
24 |
111 |
80 |
18 |
249 (未回答16含) |
次に、質問紙調査にどのような内容の質問が含まれたかの説明を行う。
◆調査項目
・本人の属性(学部・学年・性別)
・部活・サークル活動の経験(Q1) ・アルバイトの経験(Q2)
図3−1 部活・サークルの経験 図3−2 アルバイトの経験
・将来展望(4段階評価)
Q3-1 自分の将来について考える
Q3-2 将来に明るいイメージがある
Q3-3 将来にあきらめを感じることがある
Q3-4 将来の自分は今の自分よりも幸せになるだろう
Q3-5 将来の見通し・計画がすでに立っている
Q3-6 将来についていろいろ計画を立てるが一貫性がなく変化している
Q3-7 どんな人生を歩むかは、その時になって考えればよい
・職業選択条件(Q4、複数回答)
・将来について具体的に考え始めた時期(Q5、4段階)
・将来のための準備状況(Q6、複数回答)
(資格の取得、アルバイト、就職に関する情報収集、ビジネス雑誌の購読、ボランティア)
・授業態度(Q7、4段階評価)
Q7-1 体調不良以外で授業を欠席することはない
Q7-2 ノートをしっかりとっている
Q7-3 授業で分からないことがあれば、自分で調べる
Q7-4 人よりも良い成績をとりたい
Q7-5 勉強よりも、自分の長所を伸ばしたい
・価値観(Q8、4段階評価)
(自己啓発重視性、社会的名声重視性、協調性)
・自立性(Q9、4段階評価)
(精神的自立性と経済的自立性)
・人生は努力か運か(Q10、5段階評価)
・社会観(Q11、4段階評価)
(徒労感、不信感、絶望感、疎外感)
・社会での成功条件(Q12)
・あなたにとっての「勝ち組」「負け組」とは(自由記述)
以上、全設問の説明を大まかに行った。質問は、先行研究をそのまま引用したもの、先行研究を基に改良したもの、独自に作成したものがある。なお、詳しい質問文は巻末資料に載せてあるため、53Pから参照していただきたい。
調査票の配布、回収については、指導教員にお願いし、担当する授業で配布・回収してもらった手段と、社会学コースの学生に協力を募り、配布・回収までを依頼した手段の2通りがある。
結果の入力作業は、2011年度前期社会学実習で筆者のグループに所属した学生2名を含めた3名で分担した。統計ソフトはSPSSを使用し、249部で分析を行う。
ここで、2つある調査目的を再度述べておきたい。
まず、本調査を行う目的の1つは大学生の行動や心理的傾向を調査することにある。具体的には、サークル・アルバイト状況、授業態度、価値観や自立性、大学生の価値判断基準などである。学生間で将来展望の差が生じる要因には行動・心理的傾向が影響していると考えられる。そのため、彼らの行動・心理的傾向を把握することは将来展望の有無に影響を与える要因を明らかにするために必要となる。
調査目的の2つ目は、将来展望がない学生はどんな行動・心理的特徴があり、将来展望がないことに最も影響している要因は何かを明らかにしたい。これは、本論文で最も究明したいことであり、分析手順としては、因子分析を行った後に重回帰分析を行う2段階を踏む。
図3−3 将来展望との影響モデル
経験・行動 (サークル・アルバイト、 学業態度)
将来展望 社会と自己 (社会に対する思い、悲観的)
将来展望の有無の解明に至る流れとして、上(図3−3)にある通り、影響を受ける「将来展望」と、影響を与える3つの要因「経験・行動」「心理・価値観」「社会と自己」という合計4つのカテゴリー別にこれから論を進めていく。上図は幾度となく登場する重要な図であり、これに沿って論は展開される。
なお、これより第4章の節で記述する内容が多く複雑なため、構成内容を前もって説明しておきたい。始めに単純集計から読み取れる大学生の傾向を示したあと、因子抽出のためカテゴリーごとに行った因子分析の様子を説明する。将来展望との関連を調べる際に、様々な変数を考慮する必要があり、含まれる質問項目がどうしても膨大になってしまう。そこで、変数削減のため類似する質問を統合し、なるべく少ない数の因子を取り出すために因子分析を行う。
それを受けて、第4章第5節において因子を用いて重回帰分析を行い、将来展望に影響する要因を探っていく。
さらに、重回帰分析による将来展望への影響を探るものとは別に、大学生の判断基準に視点を置いた分析も行った。それについては第4章第6節を別に設けた。