第三章 調査概要

 

 

第一節 調査方法

 

地域子育て支援拠点事業ひろば型として活動を行っている実施団体は様々であり、それぞれの特性を活かした活動を行うことができる。そこで今回は、地域子育て支援拠点事業ひろば型として活動を行っているひろばの中でも、NPO団体が実施するひろば、保育園が実施するひろば、企業が実施するひろばの3つの実施団体を取り上げ、調査を行った。

 それぞれのひろばへ行き、スタッフへのインタビューや、ひろば開設時間内のフィールドワークなどの調査を行った。調査方法、調査協力者は以下の通りである。

 

親子よろこびの広場 あさがお(NPO団体が実施するひろば、以下「あさがお」と表記)

・スタッフインタビュー2回(調査協力者:理事・事務局長 川上由枝さん)

・利用者インタビュー(9名。数回にわけてグループインタビュー)

・フィールドワーク

 

中加積保育園 ちびっ子広場(保育園が実施するひろば、以下「中加積保育園」と表記)

・保育園園長インタビュー調査1回(調査協力者:中加積保育園園長 柳溪暁秀さん)

・スタッフインタビュー2回(調査協力者:ひろば担当スタッフ 青木祐紀さん)

 

ハーツきっず羽水 ひよこるーむ(企業が実施するひろば、以下「ハーツきっず」と表記)

・スタッフインタビュー2回(調査協力者:施設長 前川雅美さん)

・フィールドワーク

FAXでの質問紙調査(調査協力者:福井県民生活協同組合 子育て支援グループ課長  堀内守さん)

 

 

第二節 調査対象

 

第一項 親子よろこびの広場 あさがお

 

所在地:石川県白山市

実施団体:NPO法人おやこの広場 あさがお

利用料:無料

休館日:日曜及び祝祭日、年末年始、施設点検日

開設時間:午前9時30分〜午後4時(水曜土曜は午後3時まで)

 

 このひろばは、NPO法人 おやこの広場あさがおが石川県白山市から委託を受けて運営している。2002年に「敬宮愛子様ご誕生記念親子よろこびの広場事業」を(財)いしかわ子育て支援財団が請け、松任市(現白山市)のプラスあさがお内に「親子よろこびの広場あさがお」を開設した。モデル事業として始まり、その後もひろばのニーズが高いので継続させることとし、そのときに利用者の意見を取り入れ、柔軟な形で対応できるスタイルにするために、NPO法人として運営していくことに決定した。2010年にはプラスあさがおが閉鎖となり、サンライフ松任内に移転した。

 「ふれあい 支えあい 学びあい 分かちあい 育ちあい」という5つをあげて、スタッフ、母親たち、子どもたち、地域の人々、みんなで子どもを育てるという意識で活動している。自分の子どもだけではなく、みんなの子どもたちも一緒に育て、自分たちも成長するような関係を築いている。

 

<スタッフ>

 スタッフは常勤4名、非常勤3名、相談員6名である。利用者からスタッフになった人もいる。

 保育士資格を持っているスタッフは2名である。深い知識よりも親しみやすさを重視しているため、保育士の資格の必要はないと考えている。資格があるからこそハードルが生じる部分もあるので、それよりもお母さんの気持ちにいかに寄り添っていけるかを重視している。

利用者が多いときは、スタッフだけではつらいときがある。また、人が足りていないため、昼間はスタッフ、夜は事務局長というように、一人の仕事量が増えている。

 

<利用者>

 一日に約60人の親子が利用している。親は専業主婦、または育児休暇を取っている人が多い。利用のきっかけは紹介、イベント時などに配られるパンフレット、赤ちゃん訪問や検診の場での紹介などがある。利用者でNPOの主旨に賛同している個人または団体には、正会員登録をしてもらっている(現在約210個人団体)。正会員は運営や総会に参加することができる。また、NPOの活動の目的に賛同し、応援している個人または団体には、賛助会員登録をしてもらっている(現在約70個人団体)。

 

<空間>

 1フロアーでしきりがない。安全であること、清潔であること、配慮されている空間を大事にしている。

子どもが安心して遊べる、大人が安心できる場所、友達ができる環境で、家にいては学べないことを学ぶことができる。家庭にあるキャラクターおもちゃとは違ったおもちゃをおくことで、家庭とはまた違った空間を作っている。また、イベント活動などで特別な日を作ることで、行きたくなるような空間を作っている。

 子どもたち向けに作られた場所ではないが、あるものを利用していかによく機能させるかを課題としている。水周りやトイレはひろばを出て共有のトイレに行かなくてはいけない、暖房・空調などで整っていない部分があるなど、便利とは言えないところもある。

 

<繋がり>

 相談員や助産師、保健師、小児科の医師など、子育てに関係のある人との繋がりがある他に、行政、大学教員、他のひろばのスタッフ、保育園の保育士、子育てに限らず地域の活動をしている人たちとも積極的に交流をしている。特に繋がりが大きいのが以前ひろばがあった商店街の人たちであり、移転してからも関係が深い。移転してからは新しい環境でのいろんな関係を築いている。

 

 

第二項 中加積保育園 ちびっ子広場

 

所在地:富山県滑川市

実施団体:中加積保育園         

利用料:無料

利用日:週4日

開設時間:午前9時〜午後3時

 

 このひろばは、富山県滑川市にある中加積保育園が実施している。中加積保育園では、2003年度から子育て支援室を開放し、未入園児親子の子育て支援としてちびっ子広場を開設し、ミニサロンとして活動していた。2010年にはミニサロンからひろば型に移行し、活動している。

 ミニサロンは、在園児の兄弟とお母さんを招待するような形で始められ、そこから在園児の兄弟以外にも広まっていった。月に4回くらいの頻度で開かれ、開設時間も午前中だけという短い時間だった。ミニサロンでは担当の先生を常につけることはできず、お母さん主体の活動が中心であった。

 園長先生は保育園は在園児の子育て・保育だけではなく、在園児以外の親子への支援もしなくてはいけないと考えていた。そこで、センター型への移行を試みた。しかし、市がセンター型として活動していくことを拒み、ひろば型でならば活動をしてもいいということで、ひろば型に移行した。移行するために定款を変え、事業を変更した。

移行する準備として、このひろばでしかできない、お母さんたちが飽きない活動内容を考えた。それは保育園内にあることを活かした園児の交流が含まれるプログラムである。ひろば型に移行してからは、担当の保育士がついているので、いつでも相談することができたり、子どもの遊ばせ方の話ができるようになり、利用者が来やすいようになった。ミニサロン時のお母さん主体の活動も時々取り入れている。

 

<園長・柳溪暁秀さんの考え>

 地域子育て支援拠点事業は3つの型に分けられているが、それらは1つのくくりでよく、どの型も保護者に子育てのいろんなことを提供するところと考えられており、3つの型は意識されていない。

 柳溪暁秀さんの子育て支援への思いは、図2−1の年表にある1994年のエンゼルプラン以前からあるもので、どういう形で活動するかはわからなかったが、支援をしなくてはいけないとずっと考えていた。それを実際に形にして活動したものがミニサロン・ちびっ子ひろばであった。

 

<スタッフ>

 常任のスタッフは2名で、そのうち保育士資格を持っているスタッフは1名である。役割の区別はなく、臨機応変に対応している。また、相談事によっては主任の先生や看護師、栄養士も協力している。

 スタッフの青木祐紀さんは常に笑顔でいることと、相談をちゃんと聞くことを心がけている。悩みを少しでも軽減しようとしているが、専門的な感じではなく、近所のお母さんたちが集まって喋っている雰囲気で活動している。

 

<利用者>

 一日に約5組の親子が利用しており、同じメンバーが集まることが多い。イベント活動時は10組以上が利用する。子どもは保育園に入っていない2歳以下の子どもが多く、保育園内を自由に動き回っている。

 ダイレクトメールやホームページ、チラシを見てくる人が多い。ダイレクトメールは、夏祭り、運動会、新入園児を集めるときに送っている。チラシは健康センターへ行ったときに配っている。

 

<空間>

 ちびっ子ひろばは保育園の一室を使っている。利用者がひろばに来たら名前を記入するノートが置いてある。富山県の子育て情報が載ったパンフレットやチラシがたくさん置いてあり、自由に持ち帰ることができる。オムツがえコーナーにあるものは自由に使うことができる。おもちゃ(主に小さいもの)や絵本がある。

 子育て支援室は遊戯室のような感じで、大きいおもちゃやマットなどがある。

 

 

第三項 ハーツきっず羽水

 

所在地:福井県福井市

実施団体:福井県民生活協同組合

利用料:無料

休館日:日曜及び祝祭日、GW、お盆

開設時間:午前10時〜午後4時(火曜、金曜は時間変更あり*

*火曜日はハーツ羽水組合員集会室で月2回定期開催(午前10時〜午後3時)

それ以外の場合はきっず羽水でPM開催(午後12時〜午後5時)

*金曜日はPM開催(午後12時〜午後5時)

 

<実施団体>

 ハーツきっずは福井県民生活協同組合の子育て支援グループの活動で、県内に5施設ある。2012年春にはもう1施設増える。ひろば事業を行うひよこるーむ(4施設)、一時預かりを行ううさぎるーむ(5施設)、2歳児プレ保育を行うこりするーむ(4施設)が主な活動である。2002年に子育て支援事業としてハーツさばえで週1回子育てひろばを開いたのが始まりである。

 ハーツきっず羽水は2005年にオープンし、5施設中最初にひろばが作られた。県民せいきょうのお店「ハーツ」の一角に子どもが遊べる場を提供していたが、利用者や組合員の声からつどいの広場を作ることになった。当時アルバイトとして働くことになった前川雅美さんは、ひろばがどういったものかわからないまま仕事をしているうちに仕事が楽しくなり、利用者の声を聞き必要性を感じるようになった。

 

<スタッフ>

 ハーツきっず羽水では11名のスタッフが働いている(施設長1名、パート2名、アルバイト6名、事務2名)。そのうちひろば担当はパート1名、アルバイト2名。ひろば担当と一時預かり担当は決められているが、スタッフの人数が足りなかったときなどは柔軟に対応している。事務のスタッフ以外は保育士資格を持っているため、子育てのヒントやアドバイスを伝えることができたり、相談に乗れたりできる。

 広報活動に力をいれている。お店にチラシを置いたり、DVDを流してもらったり、福井県民生協の店で店内放送をしてもらったり、子どもがくるような施設にチラシを置かせてもらったりして、施設を知らせる活動をしている。

 

<利用者>

一日に約10組、多いときには約20組の親子が利用している。イベント活動時には約15組の親子が利用している。

 お母さんは20代が多く、専業主婦や育児休暇の人が利用する。子どもは0歳児、1歳児が多い。2歳児くらいになると赤ちゃんが多いひろばで遊ぶのは危ないと感じ、市の施設のほうに行く利用者もいる。

 転勤してきた人が多く、子どもが多い地域にあるため、友達づくりや情報を得るために利用する人が多い。

利用者は口コミや、保健センターでの紹介、チラシなどをきっかけに利用するようになる。

 近々もう1施設増える予定があるため、ここでは今後利用者が少し減るのではないかと考えている。

 

<空間>

 ひろばは16坪。抗菌の砂を置いた砂場もある。入り口のフェンスは動物が入らないような工夫がされている。床をはって歩いたり、寝転がって遊ぶことができる、子どもを囲んで、お母さん同士がゆっくり話し合える、目に入るところで子どもが遊んでいる、安心できる空間を心掛けている。