第一章 問題関心

 

 

 戦後日本社会においては、核家族化、地域のつながりの希薄化が進行し、母親は子育てにおいて人の助けを求めることが困難になってきている。また、父親の家事・子育ての協力は十分とは言えず、母親の不安、負担は大きくなり、子育ての孤立化が問題とされている。

 国の子育て支援対策は、以前は仕事と子育ての両立の支援に重きを置いていたが、現在では社会全体で子育てを行う支援という意識が高まっているように感じられる。地域での子育て支援を促進させる事業の1つが2007年に始まった「地域子育て支援拠点事業」である。この事業は、子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育て不安、悩みを相談できる場を提供するものである。具体的には3つの実施形態で、それぞれの機能を活かして活動が行われている。「ひろば型」では、常設のひろばを開設し、子育て家庭の親とその子どもが気軽に集い、うち解けた雰囲気の中で語り合い、相互に交流を図る場を提供している。「センター型」では、地域の子育て支援情報の収集・提供が行われ、子育て全般に関する専門的な支援を行う拠点として機能しており、既存のネットワークや子育て支援活動を行う団体等と連携しながら、地域に出向いた地域支援活動を展開している。「児童館型」では、民営の児童館・児童センターにおいて、親と子の交流、つどいの場を設置し、身近で利用しやすい地域交流活動を展開している。

 本論文では「ひろば型」に注目して調査を行う。ひろば型には、「出張ひろば」や「ひろば機能拡充」などといった、多くの子育て家庭を支援しようという活動が含まれている。また、地域の子育て力を高める取組として、ボランティアの受け入れや世代間交流、父親サークルの育成など、室内だけではなく地域を巻き込んだ活動がある。このひろば型の制度の枠組みの整備が、実際のひろば型の活動にどのような影響を及ぼしているのかを調べていきたい。