第1章       序論

 

1節 問題関心

 近年、地方では人口減少や高齢化によって過疎地域の増加やそれらに伴う地域の活力低下など、地域において深刻な問題が起こりつつある。その解決策として行政や自治体、NPOなどが中心となり、都市から地方への移住・交流を促す動きも見られるようになった。

今回取り上げる、地域おこし協力隊は平成21年度から総務省が始めた事業であり、都市部から地方に13年ほど移住、もしくは住所を移転してもらい、そこで地域活性化を目的とした様々な活動を行うというものである。

地域おこし協力隊はその土地で生まれ育った地元の人とは違い、外から来た人である。地域での伝統や習わしを知らない地域おこし協力隊員は果たして地域にどういった影響を与えることができるのか。そしてこの制度の有効性はあるのだろうか。

今回は富山県立山町を例にインタビュー調査を用いて調査・研究していきたい。

 

2節 調査概要

インタビュー調査には、以下の方々に協力していただいた。

 

小島路生氏

20104月から富山県立山町新瀬戸地区で地域おこし協力隊員として活動をしている。神奈川県横浜市出身の37歳男性。アメリカの大学院で教育の修士号を取得後、青年海外協力隊員など発展途上国の支援を10年以上行ってきた。妻と5歳の娘がいる。1年目は立山町で単身赴任、現在は家族と生活している。1年目は役場の企画政策課が担当だった。2年目に入り商工観光課が担当になったが、夏ごろに企画政策課が担当に戻っている。インタビュー日時は20106月、20107月、20117月、201112月の計4回行った。

 

石崎鎌三氏

20114月から富山県立山町で地域おこし協力隊を元として作られた「特産品コーディネーター」として活動中の65歳。前職は流通業(主にマーケティング)の企業に勤務。妻と一緒に埼玉県から来た。インタビューは201110月に行った。

 

 A

 立山町新瀬戸地区に在住中の70代男性。10年ほど前に愛知県から移住してきた。インタビュー調査は20107月と201111月の2回行った。地域では小島氏の世話係をしている。201111月のインタビューにはA氏の妻にも参加してもらった。

 

 B

 立山町新瀬戸地区で新瀬戸公民館の館長をしている。他にも地域の組織の役員などもされている。インタビュー日時は20107月、2011年月11月の2回行った。

他に、立山町役場企画政策課および商工観光課の職員にもインタビューを行った。