第四章 分析
ブログと発言小町において、「草食男子」はどのように語られているのか。男性と女性の語りをそれぞれ抜き出し、「草食男子」のイメージや、「草食男子」の評価に男女でどのような違いがあるのか、また共通した語りはあるのか例を挙げながら分析していく。
第一節 「草食男子」の語りの特徴
ブログや発言小町において、「草食男子」を語るとき、まず「草食男子」とは一体何なのか、ということが話題になる。「草食男子」の名付け親である深澤が定めた「協調性が高く、家庭的で優しいが、恋愛やセックスには積極的でない」という意味は、「草食男子」の一般的な定義としてブログや発言小町内でも引用されて語られることが多い。またメディアで広まっていく中で、「草食男子」の言葉の意味は拡大解釈されていき、多様性を持ったので、人々の語りも実に様々である。しかし、多様なイメージや受け取り方をされる「草食男子」の語りのなかにも、いくつかの特徴がみられた。その特徴とは、ブログや発言小町において「草食男子」は、（１）女性に対する消極性 （２）男らしさ （３）優しい男性 というキーワードとともに語られることが多いということであった。それでは具体的にどのような語りが見られたのか、以下に（１）（２）（３）それぞれ例を挙げて分析していく。
第二節 「草食男子」と女性に対する消極性
「草食男子」と女性に対する積極性の語りについて、男性と女性に分けてそれぞれ例を挙げていく。なお、以下のデータはブログと発言小町から引用したものである。また、それぞれの例の最後には、ブログの場合は、ブログのタイトル名と日付を、発言小町の場合はトピック名と日付と投稿者については投稿内容から分かる、投稿者の属性を記載する。
まず、男性の発言について例を挙げていく。
以下は、発言小町における、「草食男子はモテたいという意識のない男性だという認識をもち、やたらと女性にモテたがる男性はどんなメリットがあってそう思うのか、女性にモテたいと思う人の意見を聞きたい」というトピックに対するレスである。
自分からは全く動かない草食系ですが、たまに女性にチヤホヤされると単純にうれしいし楽しいです。
別にチヤホヤされるために何かしたりはしませんけどねぇ～
付き合いたいとまでは思わないのでこちらから積極的なアプローチはしませんが
（発言小町「どうして中年男性はやたらと女性にモテたがるのか」2009年5月
自称草食男子）
モテたい＝みんなからちやほやされたい。自分がモテることで羨むヤツがいてもしょうがない。
草食系＝特別もてはやされる必要ない。けどみんな平和にのんびり安心して暮らしたい。
こんなところでしょうか？
（発言小町「どうして中年男性はやたらと女性にモテたがるのか」2009年5月 男性）
草食男子が女性に対して消極的であることについて、草食系は特別もてはやされる必要はないと感じているのでは？という男性の意見があった。また、チヤホヤされるために何かすることもないし、自ら積極的にアプローチすることもないということから、草食男子には女性からもてはやされたいという欲求はなく、そのために、こちらから無理して積極的になる必要もないと感じている。
さらに、発言小町においては、「アクションを起こさないのが草食男子だとしたらなぜ恋愛に積極的にならないのか？」と意見を求める既婚３０代女性のトピックに対して、草食男子を息子に持つ母親が、息子の証言をもとにレスしているものがあった。
うちの息子が草食系男子だと思います。彼女…欲しいと思うけど、出来なかったら出来ないでいいや。
俺の事を好きな人が日本にいなかったら、海外にいるかもしれない。それでもいなかったら、猫を飼う。何か恋愛自体がめんどくさいみたいで、何も行動しません。
ひょうひょうと生きていると言うか、柳みたいな感じなんですよね～
性格は明るく社交的なんですが、基本的にひとりが気楽と言ってます。
（発言小町「草食系男子はなぜ草食？」2009年4月 草食男子の母）
また、ブログの中には、恋愛カウンセラーの男性が、女性たちに「草食男子」の攻略法を指南するという内容で、「草食男子」が恋愛に積極的になれないことについての解釈を述べているものがあった。
なぜ、恋愛に積極的になれないのでしょうか？確かに、恋愛をすると色々と問題も出てきたりもあるとは思うけど、そういうことが、めんどくさいと思うんでしょうね。
それなら、恋愛しないで自由気ままに過ごしている方がいいと思うんでしょう。
私自身は、相手（女性）によって積極的になるときと、消極的になるときがあると感じている。
（ブログ「男と女の心のヘルス－癒しの心理学」2009年03月）
草食男子が恋愛に積極的になれないのは、恋愛自体を面倒くさく感じており、一人が気楽で自由気ままに過ごす方がいいと考える傾向があるからだと述べられている。恋愛が面倒で一人で過ごす方が気楽だと考えるからこそ、女性に積極的にアプローチしたいという願望や、しなければならないという観念は持っていないのである。
他のブログでは、自称草食男子の男性が、「草食男子」の実態について綴っていた。女性に対して積極的でないのはなぜか、「草食男子」として、自らの考えを述べている。
「草食系男子」と言われる男性は、とても繊細で、人を傷つける事が嫌いで、同時に傷つけられる事も極度に恐れる傾向があります。 ですから、恋愛に関して自分から積極的にアプローチする事を好まないという、草食系男子の最も特徴的な行動パターンに繋がります。本当に彼女が好きだった場合、その彼女に直接的なアプローチをして、拒否された場合、どんな男性でも少なからず傷つきますが、草食系男子は、その〝拒否された場合〟を想像してしまい、結果を恐れて、結局“何もしない”わけです。
（ブログ「草食男子の実態」2011年1月）
草食男子は、人を傷つけることが嫌いで、同時に傷つけられることも極度に恐れるという自称草食男子の男性。この「繊細さ」が、自分から積極的にアプローチできないという草食男子の行動パターンを生みだしていると述べている。草食男子の女性に対する消極性について、慎重になりすぎて積極的にアプローチできないが、だからといって無理に積極的になろうとはせず、「人を傷つけることも傷つけられることも嫌う」という草食男子の考え方を、ありのままの姿として受け入れているようとしているようにみえる。
では、次に女性の発言について例を挙げていく。
はじめに、発言小町における26歳女性のトピックに対するレスを見てみる。この女性は、「気になる男性がいるが、相手が積極的でない。男性を草食男子だと思えば、積極的でないことに不安を覚えることなく、恋愛関係として発展していけるのだろうか」という内容のトピックを立てている。これに対して、ある女性から「恋愛関係において、男性からアクションがあることが当たり前だと考えてはいけない」という内容のレスがついた。
男から誘うべきとか、興味があるなら頻繁に連絡くれる筈という固定概念は棄てて下さい。
（発言小町「どうなのかな（気になる人がいるけど・・・）」2010年4月 女性）
次は、草食男子を夫にもつ40代女性による、「草食男子のイメージはシマウマでとても良い」というトピックとそのレスを見てみる。トピック主の女性は、理系頭脳・マイホームパパ・機械に強い・甘い誘惑にも負けないというイメージの草食男子が好きだと述べるが、これに対し、シマウマのイメージは優柔不断・頼りない・おとなしいなどいいイメージがないというレスがついた。このレスに対してトピック主の女性は、悪いイメージは、自身がカバーするのでよいと言い切っている。
優柔不断はウチのシマウマに限り当たってる！でも私が即決するからいいの！
不倫は、長引くどころか、そんな何のお得にもならないこと最初からしないのよ。シマウマ君は。
あ、頼りにはなるよ！すごく。少なくとも私の半径３メートルのライオン君よりかなり頼りになる！
大人しいのは、そこがいいんじゃん！男は黙って○○！
（発言小町「草食系男子はシマウマ。肉食系男子はライオン。」2011年7月
夫が草食男子の女性)
以下は、20代後半女性が、「草食男子」に告白する際のアドバイスを聞くというトピックに対するレスである。「草食男子」と付き合う女性が、草食男子の証言を交えながら、自身の体験を語りトピック主にアドバイスする。
かくいう私（３１）ですが、誰が見ても草食系男子（２９歳見た目が女の子みたいにキレイでおとなしいタイプ）と付き合っていますが、最初はまったく意味不明。何考えてるのかな～とか、とにかくサッパリ、読めない～この人～。って感じ。でも、何度か会ってるうちになんだか読めてきたので、グイグイ誘ってみたり、二人で飲みにいく機会を無理やり作ったりして、私から告白しちゃいましたよ。
彼から誘うのは勇気がいるので、mikaが誘ってくれるから嬉しかったし付き合いたかったけど、断られるのが怖くて言えなかったと。
（発言小町「肉食女子が草食男子に告白します」2010年2月 草食男子と付き合う女性）
同じく20代後半女性が、「草食男子」に告白する際のアドバイスを聞くというトピックに対するレスである。「草食男子」と付き合う年上女性が、草食男子との付き合い方について自身の体験をもとにアドバイスする。
１.安らげる女性がいいみたい。草食系は感情表現が苦手でストレス溜まりやすい人多いので。
2.がっつくと引いてしまいます。我慢してください！たまにちょっかいだす位で好意は出さないで。
3.彼氏は出会い～付き合い初期まで頑なに敬語でした、私はすぐにタメ口で話してたのに…。真面目な人は敬語率高いですよ。
4.メルアド・飲み・デート・お泊まり等、誘ったのは全部私でしたし、電話も彼からかかってきたことはありませんでした。
ただ、↑のように最初のきっかけを作ったのは全部私ですが、彼が全部自分で選択した結果かのようにうまいことやりました（笑）
（発言小町「肉食女子が草食男子に告白します」2010年2月 草食男子の年上彼女）
草食男子が夫や彼氏である女性は、草食男子が女性に対して消極的であることを認識したうえで、自らが積極的に行動するようにしている。女性から会う機会を無理やりつくってぐいぐい誘ったり、最初のきっかけをつくることで男性が選択したかのように思わせたり、優柔不断な草食男子に対しては女性が即決することで、草食男子との恋人や夫婦関係はうまくいっているようである。草食男子に対しては、男性から誘うべきというような固定概念を捨て、無理に積極性を求めることもせず、むしろ女性が積極的になればよいという考え方をもっているようである。
次に挙げるのは、「俺についてこいという肉食男子が苦手で、まどろこっしくても一生懸命な草食男子が好きだ」という女性のトピックに対するレスである。草食男子と付き合ったことのある女性が草食男子の良いところと不満の両方を述べている。
そうだなぁ、草食系の良いところは、ケンカも殆どしなかったし、心穏やかに過ごせたとこかなぁ？
この部分は良かったと思います。
でも頼りない部分は確かにあって、物事を決めたりなんかは全部私がしなきゃいけなかったのがちょっとね…って感じでした。
（発言小町「草食な男性のほうが全然イイ」2010年4月 草食男子が元彼氏）
また、女性が語り手のブログには、以下のようなものがあった。
「草食男子に関する考察」という記事タイトルで、草食男子は自分に自信がなく、恋愛にがつがつしない男性のことだと自身で定義を調べたうえで、草食男子を否定的に捉えている。
どうやら従来の古典的男性像から対極にある男性、と言う位置付けらしい。
しかし、しかーしである！
女性はどんどん押してくれる男性を求めているのである！
だって考えてみそ、どこの世界に男性を押し捲って恋人を得たいなどと言う女性が居るだろうか？
女と生まれたからには誰だって「どうか僕とお付き合いして下さいっ！」と、望まれて付き合いたいのである。（ぎこちなくても良いんだよー！そして情熱的なほどイイ）
（ブログ「オタリーマンのための恋愛・婚活講座」2009年4月）
さらに、他の女性は「草食男子な彼」という記事タイトルで、草食男子の彼氏に対する不満を述べている。草食男子の彼氏に大切にされていることをありがたく思うと同時に男性の言動に物足りなさを感じているようである。
私の彼は、いわゆる草食男子。
普段からニコニコしてて、私のこと気遣ってくれて、本当にいい人です。
でも、物足りなくかんじることもよくあるかな。
大切にされてるのはよくわかるけど、愛情表現が足りないんだよねー。
まあこれこそが草食男子なんだけどね。
大切にしてくれるのはうれしいけど、もうちょっと積極的になってほしいかな？
たまにさみしくなっちゃうよー＞＜
（ブログ「sanmaの日記」2010年9月）
最後に、「誘ってくれない草食男子」という記事タイトルのブログを例に挙げる。草食男子が彼氏であるこの女性は、男性に積極性がないことや優柔不断な態度が気に食わない様子が見られる。
草食男子は全然デートに誘ってくれません。
もう常に自分から誘っています。むしろ仕切る勢いです。
デートの話題がなくなったり、行く場所がなくなったりしたとき
相手の「どっちでもいいよ」という優柔不断な態度に
「一緒にいたくないわけ？！」とカチンときて
「もう帰る！」というと、あっさり「わかった」。
えぇー。ちょっとはひきとめてほしい。。。
（ブログ「草食男子と肉食女子、時々女磨き」2010年10月）
草食男子と付き合う女性は、心穏やかに過ごすことができ、大切に扱ってくれるという点で草食男子に肯定的である。しかし、愛情表現が足りないと感じたり、優柔不断な態度にカチンときたりと草食男子に否定的な面も見られる。物事を決めたりデートに誘うことは女性が行うことが多く、このことに不満を感じている女性が多いようにみえる。男性が消極的であるがゆえに女性に積極性が求められる状況を、男性自身に打破してほしいというように、女性らは男性に積極性を求めているようにみえる。
男性は、多数の女性からちやほやされることは望まず、また、恋愛自体がめんどうだと感じるがゆえに積極的にはならないと考えることがわかる。そして、それらの男性は女性に対して積極的になろう、ならなければならないといった願望や欲望は感じておらず、ありのままでいようと考える傾向がある。また、自分や相手を傷つけたくないと、恐れるがゆえに積極的になれないと考えるのは、自称草食男子に多く、これらの男性も無理に積極的になろうとは考えず、ありのままの自分を受け入れている。多数の男性は、草食男子が女性に消極的であることを、否定的に受け止めてはいないようである。自称草食男子もその他の男性も、草食男子が消極的である理由を分析し、ありのままでいいのではないかと考えているようだ。
一方女性は、評価が分かれる。女性の語りは草食男子が夫や恋人である場合が多く、その語りは実体験を含むものが多かったが、皆、草食男子は女性に対して消極的な男性であるという共通の認識を持っていた。そして、草食男子の消極性を否定的に捉えつつも、男性が消極的ならば無理に積極性を求めようとはせずに、女性が積極的になればよいという考えと、男性には積極的であってほしいと願望を含んだ2通りの考えも持つことが分かった。
男性は、草食男子の消極性を否定的に語ることはなかったが、女性については消極性を否定的に捉える傾向があった。しかし、否定的に捉えたうえで、積極性を男性に求めるか、女性自身に求めるかという点で意見が分かれていた。
第三節 「草食男子」と男らしさ
「草食男子」と男らしさの語りについて、男性と女性に分けてそれぞれ例を挙げていく。なお、以下のデータはブログと発言小町から引用したものである。また、それぞれの例の最後には、ブログの場合は、ブログのタイトル名と日付を、発言小町の場合はトピック名と日付と投稿者については投稿内容か分かる属性を記載する。
まず、男性の発言について例を挙げていく。
以下は、発言小町における、３０代半ば独身彼女なしの男性によるトピックで、この男性は「草食系」と言われることを嫌っている。
私は、「草食系だね」とよくいわれます。その言葉と同時に「苦労したことないよね」「楽な人生だな、俺もそうなりたいよ」「悩みがなくていいなぁ」ともいわれます。
女性は「草食系はちょっと・・・（マザコンは嫌）」話しかける前から引かれてしまい、まともに仕事以外で話したことはありません。
ここで一言申したい。「草食系」っていわないでほしいのです。「草食系」という言葉だけでアプローチしてもマザコンに見られ、相手にしてもらえないようです。
一方で「草食系」といわれるとついついよけいな反論はしてはいけないという思考が働き「そうなんですよ～」といってしまうのです。
（発言小町「草食系っていわないで！！」2010年5月 草食男子と言われる男性）
トピック主の、「草食系」いわれるとつい余計な反論をしてはいけないという思考が働き「そうなんですよ～」といってしまう。という発言に対して、ある男性は以下のようにレスしている。
私なら「いい加減にね、次言ったら怒るからね」と言うと思います。
男らしく見せたいのなら、言うべきことは言う。
（発言小町「草食系っていわないで！！」2010年5月 男性）
また、「草食男子ブログ」というブログでは、周りから草食男子と呼ばれる男性が、男らしい男子を目指すことを書いたものがあった。
草食男子と呼ばれる私のブログなんですが、
なんで草食系と呼ばれているのか自分でも分かりません。
見た目の問題もあるかもしれない。頼りない所があるかもしれない。
女の子に積極的じゃないのかもしれない。
草食系と呼ばれて嬉しい男子は、いるんでしょうか！？
なんかバカにされて嫌な気分になる事が私は多いです。
ただいろんな人に聞いても、あなたは草食系だね。といわれるので、
一度、草食男子を受け入れてみることにして私は、このブログを始めてみました。
今は草食と言われているが、男らしい男子を目指していきます！
（ブログ「草食男子ブログ」2011年4月）
さらに、「草食男子諸君！」というタイトルのブログ記事では、チョコレート好きな男性が自分で食べるために何十万円ぶんものチョコレートを買いこんでいる姿をテレビで見たという書き手の男性が、「男子がそんなことをするなんて普通ありえない！」と驚き呆れ、これでは草食男子と呼ばれても仕方ないと述べている。そして、男性は以下のような文で記事を締めくくっている。
草食系男子諸君、男は決めるときはビシッと決めて、女性から憧れのまなざしでみられるぐらい、しっかりしなきゃだめだよ！！
肉食系女子などと言われていますが、彼女たちも男性がもっと強くなることを願っているはず。
もっと存在感のある男になろうぜ！！
（ブログ「life is beautiful」2010年1月）
草食男子と呼ばれることは、頼りない・マザコン・バカにされているなどマイナスイメージが付随すると男性は感じているようだ。周りからは草食系と言われるが自身では草食男子だと思っていない男性の場合、草食男子と呼ばれることは、喜ばしいことではなく屈辱的であるようにみえる。自身にマイナスイメージを付けられることを嫌い、草食男子と呼ばれることに否定的な男性は、もっと男らしく見られたい・男らしくありたいという願望をもつことがわかる。さらに、草食男子と呼ばれない男性であっても、草食男子に対して男は決めるときはビシッと決めて、女性から憧れられるようにしっかりすべきだと述べ、男性は強くなることが望ましいと考えていることが分かる。
では、次に女性の発言について例を挙げていく。
以下は、独身女性が綴ったブログ記事である。書き手の女性が、あるお店に並んでいる際、前にいた他の女性が倒れてしまうというアクシデントが起きた。記事では、そのとき周りにいた男性たちの行動について不満が述べられている。
自分から動く勇気がなかったのか？後から仲間に茶化されるのが恥ずかしかったのか？
非常事態とはいえ、女の子に触るの気が引けたのか？それでも･･･それでもさぁ～
男が6人もいて6人共なんて、情けない話だよ。お姫様抱っこした女の子が一番男らしかったよ･･･。
「悪い人じゃないけど、男らしくない」こういう男性 ほんっとに多いと思う。
『草食系男子』なんてマスコミが勝手に作った言葉でしょ。勝手に流行らせて
勝手に浸透させて
だから、そんな場面になっても「俺達、草食系だからさ･･･」と言い訳に使えるもんね
都合のいい言葉だよね
（ブログ「ひっそりと生きる独女の生活」2011年8月）
その他に「恋愛日記」というブログ男性占い師が書くブログでは、草食男子とはどのような男性のことか？という記事に対して、女性の意見を聞いているものがあった。以下は、その記事に寄せられた女性のコメントである。
イメージですが、女っぽい性格の男性ですかね？？ それと本来の男性らしさがあまりない、細身で食も細いイメージです(￣～￣)ξ やっぱり男性はモリモリ食べて、少し強引な所があるぐらいが魅力的です(*´∀｀*)
（ブログ「恋愛日記」2009年7月）
次に挙げるのは、発言小町における「草食男子のイメージはシマウマでとても良い」というトピックについたレスである。トピック主の女性は、「理系頭脳・マイホームパパ・機械に強い・甘い誘惑にも負けないというイメージの草食男子が好きだ」と述べるが、これに対し、草食系の男性にプロポーズされたことのある女性は、草食系は無理というタイトルをつけ、レスしている。
実際今の夫との結婚前にすごく条件のよい、草食系の方にプロポーズされましたが、ダメでした。理由は頼りがいがない、面白みがない…体力がない…確かに大切にしてくれそうで子煩悩そうでしたが、なんだか彼の気持ちが重く感じました。
今の夫はどちらかと言えば肉食獣ですが、大切にしてくれるし、男らしいし、背も高く40過ぎても筋肉質、優しく面白い子煩悩だしで満足してます。
（発言小町「草食系男子はシマウマ。肉食系男子はライオン。」2011年7月
肉食系の夫を持つ女性）
女性は、草食男子には男らしさが欠けていると考えている。アクシデントに対して率先的に行動できない男性、女っぽい性格で食が細いというイメージの男性、頼りがいがなく体力のない男性。これらの男性は男らしくないと見なされ、女性たちの不満を生み出しているようにもみえる。女性は男性に、頼りがいや体力、強引に引っ張っていくような意志の強さや行動力などといった男らしさを求めているようだ。
男性は、「草食男子」と呼ばれることについて、頼りない・苦労しない・マザコンのようだというように、男性にとってマイナスイメージがついてまわるので好ましく思っていない。バカにされたりからかわれているように思えるので、屈辱的だと受け止めているようであった。そして、周りから草食男子と呼ばれる男性は、草食男子についてまわるマイナスイメージを払拭したいと考えていた。言うべきときは言い、ビシッと決めるときは決めるというように、決断力や強い意志を表すべきであり、もっと男らしく見られたい・男らしくありたいという願望を持つことが分かった。また、自身は草食男子と呼ばれない男性も、草食男子に対しては強くしっかりとした存在感のある男性を目指すことを掲げている。
女性は、草食男子には男らしさに欠けていると考える人が多い。実体験から草食男子の頼りなさや行動力のなさを感じたり、草食男子のイメージとして女っぽい性格の男性で体も細い男性だと述べていたりといずれの場合も、草食男子は男らしくないと感じている女性が多いようだ。そしてそのような男性に対しては、「悪い人ではないが男らしくない」「少し強引な方が魅力的」「大切にしてくれそうだが気持ちが重い」など多少の不満を感じているようにもみえた。女性は、男性に「体力があり」「頼りがいがあり」「強くある」ことを求める傾向があった。
草食男子と男らしさの語りにおいては、男性も女性も草食男子には男らしさが欠けていると考えることが分かる。そして男性自身は、男らしくなりたい・みられたいという願望や、男らしくあるべきだという考えを持ち、女性も同様に男性に男らしさを求めているようである。
第四節 「草食男子」は優しい男
「草食男子」は優しい男であるという語りについて、男性と女性に分けてそれぞれ例を挙げていく。なお、以下のデータはブログと発言小町から引用したものである。また、それぞれの例の最後には、ブログの場合は、ブログのタイトル名と日付を、発言小町の場合はトピック名と日付と投稿者については投稿内容か分かる属性を記載する。
まず、男性の発言について例を挙げていく。
以下は、自称草食男子の男性が「草食男子の実態」というサイトで、草食男子の行動の特徴や心理を解説したものである。
「草食系男子」と言われる男性は、とても繊細で、人を傷つける事が嫌いで、同時に傷つけられる事も極度に恐れる傾向があります。
ですから、恋愛に関して自分から積極的にアプローチする事を好まないという、草食系男子の最も特徴的な行動パターンに繋がります。本当に彼女が好きだった場合、その彼女に直接的なアプローチをして、拒否された場合、どんな男性でも少なからず傷つきますが、草食系男子は、その〝拒否された場合〟を想像してしまい、結果を恐れて、結局“何もしない”わけです。
（ブログ「草食男子の実態」2011年1月）
そして次に挙げるのは、独身女性が草食男子について綴ったブログ記事に対して、20代の草食男子が自身の考え方をコメントしたものである。
お役に立てるかは分かりませんが、草食男子としての意見は、彼氏さんは貴女のことを本当に大切に想っていると思います。
もしかしたら彼氏さんは手を出して貴女との関係が変わってしまうことが怖いのかもしれません。草食男子は臆病です。
（ブログ「結婚したい女ができるまで…」2008年5月）
草食男子は、人を傷つけることも傷つけられることも恐れるがゆえに、相手を大切に扱おうとするのだと述べる自称草食男子の男性。草食男子は、繊細で臆病であるがゆえに、女性との関係が変化してしまうことを恐れているようである。つまり、草食男子が優しい男だというのは、女性も自身も傷つかないように細心の注意を払って行動するという、ある意味で消極的ともいえる行動の裏返しのようにもみえる。
では、次に女性の発言について例を挙げていく。
はじめに、発言小町において「どうして中年男性はやたらと女性にモテたがるのか」という男性発信のトピックについた20代女性のレスをみていく。この女性は、「モテたいと思うのは中年男性に限ったことではなく、逆に中年男性でもモテたいとは思わない男性もいるのでは？」とコメントしている。そして、余談として自身の周りの草食男子はどのような男性なのかを語っている。
それから余談ですが、草食男子と云われる部類の友人も多いです。こういう男性は概ね平和主義で、どちらかと云えば女性的な優しさがあり、男女は意識しませんが好きです。
（発言小町「どうして中年男性はやたらと女性にモテたがるのか」
2009年5月
20代女性）
次に挙げるのは、発言小町において「草食な男性の方が全然イイ」という草食男子を彼氏に持つ女性のトピックについたレスである。レスした女性は、恋人である草食男子との恋愛関係について語っている。
そうだなぁ、草食系の良いところは、ケンカも殆どしなかったし、心穏やかに過ごせたとこかなぁ？
この部分は良かったと思います。
でも頼りない部分は確かにあって、物事を決めたりなんかは全部私がしなきゃいけなかったのがちょっとね…って感じでした。
（発言小町「草食な男性の方が全然イイ」2010年4月 草食男子を彼氏に持つ女性）
またブログについては以下のような語りが見られた。漫画家の女性が「草食系の恋愛と結婚」という記事タイトルで、草食男子のイメージを綴っている。
草食系男子は、知的な感じがし、基本的に誰にも優しいし、同じ人間として扱ってくれる気がする。
お友だちにもなってくれるかもしれない、と非モテの女子に希望を与えてくれる気がする。
草食系男子は優しいけど、恋人＝彼女として付き合う女性は、かなり厳しく見て選び、妥協しない感じもする。
が、ただの友だちとしてならば、別にこだわりもなく、つきあってくれそうだ
（ブログ「ハヤシのブログその２」2010年5月）
その他のブログでは、草食男子を彼氏に持つ女性が「草食男子な彼」という記事タイトルで、草食男子との恋愛関係についてを綴っている。
私の彼は、いわゆる草食男子。
普段からニコニコしてて、私のこと気遣ってくれて、本当にいい人です。
でも、物足りなくかんじることもよくあるかな。
大切にされてるのはよくわかるけど、愛情表現が足りないんだよねー。
まあこれこそが草食男子なんだけどね。
大切にしてくれるのはうれしいけど、もうちょっと積極的になってほしいかな？
（「sanmaの日記」2010年9月）
また、以下は、数人の女性が合コン体験を語る「OL合コンブログ」の中の記事のひとつである。様々な男性と合コンを重ねる30代女性が、草食男子と合コンしたときのことを綴っている。
先日参加した合コンですが、3対3だったんです。それが、み～んな大人しくて、
まさに「草食系男子」です
会話もこっちから話しを振らないと始まらないし、弾まないし、話が続かないという
なんとも微妙な飲み会となりました
友達がすっごく話題を提供してくれたから、本当にありがたかったです。
でも、大人しいからって言っても悪い人たちではありません。
すっごく優しそうだし、きっと結婚したらいい旦那様になるだろうし浮気もしそうにありません。こういう人を捕まえると（って言い方がハンター見たいですね）きっと
幸せになれるんじゃないだろうかって思いました。
（ブログ「OL合コンクラブ」2010年6月）
草食男子は、平和主義でケンカをすることもほとんどなく、心穏やかに過ごすことができる男性だと述べられている。また、男女を意識することなく誰にでも優しくできる男性だと感じていることから、「恋人よりも友達として付き合いやすいのでは？」と草食男子との友人関係に肯定的な態度を見せる女性もいる。さらに、友人関係としてではなく、夫婦関係としての草食男子に肯定的な女性もみられる。大人しく、会話が弾まないという草食男子の消極的な部分では否定的だが、優しそうで浮気をしないというイメージからは、夫婦関係としてうまくやっていけるのではないかと感じているようだ。ただし、友人・夫婦関係のどちらにしろ「優しい男」であることが草食男子の魅力だと語られていた。
男性は、草食男子が女性を大切に扱う優しさをもった男性であるのは、相手を傷つけたくないという思いと同時に自分も傷つきたくないという思いを持っているからだと述べている。自身の言動で、相手を傷つけてはいけないと思い、気遣いのために黙ってしまったり、何もできなくなってしまうのは、繊細で臆病な草食男子であるがゆえだと語っている。
男性の語る草食男子の優しさは、女性を本当に大切に思う気持ちと大切に思うからこそ消極性になってしまうという、優しさと消極性が表裏一体になったものなのではないだろうか。
一方女性は、草食男子は誰にでも優しく接することができる男性であり、それは草食男子の魅力であると語っている。また、草食男子は平和主義でケンカもほとんどすることがないと述べられているので、彼らは争いを避ける傾向があるということが分かる。争いがないことに加えて、草食男子は浮気をしないというイメージを持つことから、夫婦関係として肯定的に捉えられている。また、誰にでも優しくできるので、恋人関係ではなく友人関係としてならばよいと考える女性もいた。
草食男子は優しい男であるという語りについて、男性は、自称草食男子が自身の心理を語ることで、優しく接することと消極的になってしまうことの関連性を語るに留まっていたが、女性は草食男子の優しさを彼らの魅力だと認めたうえで、その優しさが女性とのどのような関係において最も作用するのかを分析しているようにみえた。草食男子の優しさは、友人関係を築く際に有効的であったり、夫婦関係において安心感を与えられる
ものであるというように、優しい男である草食男子とは、友人・恋人・夫婦のどの関係性でいるのがよいか、女性は考えているようだ。