章 問題関心

日本での薬物乱用の現状は、平成22年中の薬物事犯の検挙人員は1万4529人と、前年より418人(2.8%)減少したが、覚醒剤事犯の検挙人員が増加している。また、覚醒剤の 密輸入事件の検挙件数は前年より減少したが、平成に入ってからは21年、元年に次ぐ高水準であるなど我が国の薬物情勢は、依然として厳しい状況にある(警視庁2011)。

 かつては、暴力団関係者などの限られた人々の中での問題であったことが、現在は、ごく普通の社会人、主婦、大学生などにも浸透し始めている。マスコミでも覚せい剤や、大麻の所持または使用により、逮捕されるというニュースを頻繁に目にするようになった。

 しかし、薬物乱用の後に薬物依存となり、回復施設を経て、社会復帰をするというケースの話や、回復施設の現状などは薬物乱用防止の啓発の陰に隠れているように感じる。

  本論文では、富山ダルクを調査対象として、薬物をはじめ、様々な依存症を抱えた人々がダルクという場所でどのような経験をするのか明らかにしたい。入寮者にとって、ダルクでの活動がどのような意味をもち、彼らがどう変化していくのか、とりわけダルクが施設であるという点にこだわって、実際にミーティングやプログラムに参加することで、探っていきたい。