第四章 分析

 

 調査で入手したデータをもとに、「腐女子による妄想・解釈のパターン」「腐女子同士のコミュニケーションについて」「腐女子が妄想・解釈をすることにより起こりうる感情の差異」という3つの分析観点を設けた。これらの分析観点をベースにして、腐女子がどのような好み・欲望のもとに男性同士をCPするのかについて検証していきたいと思う。

 

 

第一節 腐女子による妄想・解釈のパターン

 

 先行研究では、やおい/BLが腐女子にとってどのような役割を果たしてきたかについて2つの見解が見受けられたが、これは「原作」のキャラクターや、タレントや身近な知人などの実在する男性同士をCPする際にも当てはまるのだろうか。それを詳しく検証するためにブログの記事分析を行い、腐女子が男性キャラクター同士をCPする際にどのようなことを重視しているかについて1つ1つ見ていった。

その結果、大きく分けて主に2つのパターンに分類することができた。この2つのパターンが、先行研究で見受けられた2つの見解と合致するのか検証していきたいと思う。

 

 

第一項 男性同士をCPする際にキャラクターそのものを重視するパターン

 

 腐女子がキャラクター単体に対して好意を示しているパターンであり、いわゆる「キャラ萌え」である。

 

■ブログの記事から

例1)

Sometimes I want to tell…-100305_110917.JPG (画像4−1)

 

サイ、どうする、んとこお嫁にいく?

いいお前の好きなとんとこ行って。

大丈夫、かならず受け止めてくれる。

お前のそのクチビルにかなう奴なんていないさ。

なんですかねこのおちょぼ

すねているような慎み深いような困っているようなねだっているような。

間違いなくセクスィリップNO.1です。

他の追随を許さないこの肉感。

とんでもなく煽情的です。

はがゆいクチビルとあられもない下腹部で男女問わず悩殺してんだこら。

あ〜もうこのサイには白旗です、サイおまえは可愛い認めるよ。

だからそのクチビルは早く誰かひとりのひとに塞がれてほしい。

これサイ受けだよね!? どうするサイナr 只今不適切な発言があったことを深くお詫び申し上げます

Sometimes I want to tell… 2010/3/5の記事より抜粋 ※記事全文は巻末資料2−1参照)

 

このブログでは、アニメ『NARUTO−ナルト− 疾風伝(※巻末資料1−1)』について、画像を貼りながら感想が書かれている。

 ピックアップした記事は、2010年3月4日に放送された370話「禁術発動」の感想が書かれたものである。ブロガーのお気に入りの登場人物の1人であるサイ(=画像4−1参照)が敵と戦うシーンの中で、ブロガーがBLとして解釈した部分について書かれている。

ブロガーはサイというキャラクター個人に「萌え」を感じており、CPの相手は固定されていない。「サイ、どうする、誰んとこお嫁にいく?」と述べているとおり、「総受け」であるサイに「萌え」を感じている。よって、キャラクター単体に対して「萌え」という感情を抱いているので、CPする際に男性キャラクターそのものを重視するパターンであることがわかる。また、ブロガーは唇という性的なイメージを持つ外見部分を特に好んでいる。それについては「間違いなくセクスィリップNO.です。他の追随を許さないこの肉感。とんでもなく煽情的です。」と述べており、腐女子としての「(男性を性的な目で)見る側の視点」というものを持っているように思える。

 

例2)

縛りつけられて喘ぐルフィがセクシー!
なんというルフィ受け!萌える!
3
大将の3人のおっさんにギアの格好で股開いて挑むルフィのビッチぶりに萌え!
おっさん達にからかわれて3大将おっさん達にフルボッコレイプされてるルフィがエロ!
落下して正常位だか、ま○ぐり返しだかの体制でルフィが3大将に股開いた瞬間、3大将×ルフィに開眼した!

(♡♡♡ paille ♡♡♡ 2010/6/9の記事より抜粋 ※記事全文は巻末資料2−2参照)

 

 このブログは、アニメ『ONE PIECE(※巻末資料1−2)』についての感想が書かれたものである。ブロガーが好きな男性キャラクターであるルフィが、3人の3大将と戦っているシーンをBLとして解釈している様子である。

ブロガーが「縛りつけられて喘ぐルフィがセクシー」と書いており、ルフィが「受け」として3人の3大将に犯されているところに「萌え」を感じていることがわかる。また、この記事において3大将について「萌え」いるといった感想は書かれておらず、ルフィに対する愛着が中心となっている。よって、キャラクター単体に「萌え」という感情を抱いているので、CPする際に男性キャラクターそのものを重視するパターンであることがわかる。さらに、「フルボッコにレイプされているルフィがエロ」「ルフィが3大将にまた開いた瞬間」などといった表現がなされており、性行為を彷彿させることに対して敏感に反応している様子が見て取れる。つまり、ブロガーはルフィに対して「(性的な目で)見る側の視点」を持っていると判断できる。

 

 

第二項 男性同士をCPする際にキャラクター同士の関係性を重視するパターン

 

 腐女子がキャラクター同士の関係性に萌えているパターンであり、キャラクター単体というよりかは2人の間の関係性に重点を置いている。東(2010)いわく「相関図消費」である。

 

■ブログの記事から

例1)

そして、まさかの、了ヒバ!了ヒバ!了ヒバかい!?
アニメオリジナル、凄い事してくれたよ。
わたしは、山ヒバだけど、唯一、了ヒバは許せる。
雲雀さんの体温の低さと、了平の熱さが対照的で、それが好き。
雲雀さんのツンデレ度は、了ヒバの方が高いかも??

がっつりさんの日々 2010/5/14の記事より抜粋 ※記事全文は巻末資料2−3参照)

 

このブログ記事は、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!(※巻末資料1−3)』の「了平×雲雀(ひばり)(=了ヒバ)」のCPについて書かれたものであり、アニメの1シーンに「腐女子」的な楽しみを見出している様子が見て取れる。この作品に出てくる男性キャラクターの「了平」と「雲雀」がここでのCPとなっている。熱いキャラクターである了平が、体温が低い(=クールな)キャラクターである雲雀に説得しているシーンである。最初は了平の言葉に聞く耳持たなかった雲雀だったが、了平の熱い説得により、最終的には了平の言葉を受け入れることとなる。

 ブロガーがこのCPを好きである、「萌え」を感じる要素として、まず雲雀のツンデ((7))が好きなことが挙げられるが、雲雀のツンデレ度が高くなる要素として、了平×雲雀のCPがあると考えられる。また、了平の熱さと、雲雀の体温の低さ(=クールさ)といった、2人の対照的な関係が好きと述べていることが読み取れる。よって、CPがなされているキャラクター同士の関係性を重視しているパターンであることがわかる。また、ブロガーが「了ヒバ」というCPを行う時に、「了平の熱さと雲雀の体温の低さ」といった「原作」の設定を前提としており、「原作」での2人の関係性を読み変えていると考えることができる。

 

例2)

http://1.bp.blogspot.com/_7u9gMhrSm6Y/S8YTEVlbOOI/AAAAAAAAKyM/2UzhEjPiBvc/s1600/01.png(画像4−2)

そういえばワンピース581話の扉絵でシャンクスとバギーが酒盛りをしていたことに最近になって気付きましたよ!
も、萌え禿げた
あれはシャンバギか!シャンバギなのか!!
この2人はいい年して微笑ましいですねほんとに()
そして、戦争が終わったらシャンクスの船にバギーが途中まで乗っていくとかそういう展開を期待している奴がここにいますよ^p^
20
数年ぶりに同じ船に乗る2人とか萌ええええ!

(見かけ上のparadox 2010/4/23の記事より抜粋 ※記事全文は巻末資料2−4参照)

 

このブログ記事では、マンガ『ONE PIECE』のコミックの扉絵(=画像4−2参照)に「腐女子」的な楽しみ を見出している様子が書かれている。この作品に出てくる男性キャラクターの「シャンクス」と「バギー」が ここでのCPとなっている。シャンクス(=画像3右)とバギー(=画像3中央)は海賊であり、かつては同じ船に乗っていた。現在では2人とも独立して船長になり、それぞれが自分の海賊団を持っている。いわば、2人は今でこそ「敵同士」であるが、かつての「仲間」でもある。そんな2人が、「酒盛り」をしている場面である。

ブロガーは、シャンクスとバギーの仲が良さそうに見える「酒盛り」の場面に萌えを感じている。また、ここでいう「酒盛り」はデートと置き換えることができる。さらに、「20数年ぶりに同じ船に乗る2人とか萌ええええ!」 と言うように「酒盛り」が、先の場面の妄想(=シャンクスの船にバギーが途中まで乗っていく)までをも掻き立てるような場面となっており、そこに一連のストーリーを見出している。一見すると、キャラクター同士の関係性には目が向けられていないように感じる事例であるが、シャンクスとバギーの間にある昔の恋人同士のような関係性を、「酒盛り」というシチュエーションからあぶり出していることが読み取れる。よって、CPがなされているキャラクター同士の関係性を重視しているパターンであることがわかる。

 

 ここで第一節に関してまとめを述べる。腐女子が男性同士をCPする際に重視していることは、「キャラ萌え」と「相関図消費」であることがわかった。「キャラ萌え」とは、キャラクター単体、特に「受け」キャラクターに対して「萌え」といった好意を感じることであり、性的なイメージを彷彿とさせるような外見・行為を好む。「相関図消費」とは、CPがなされているキャラクター同士の関係性に注目することである。その際に「原作」のシチュエーションに目を向け、キャラクター同士の関係性により強い意味付けをすることもある。

 

 

第二節 腐女子同士のコミュニケーションについて

 

 先行研究でも述べたとおり、東(2010)は、『やおい』は「原作」で描かれる男性同士の親密な関係を、恋愛に基づいて解釈/表現したものとして捉える事ができると述べている。「原作」の人間関係の解釈を通した『やおい』コミュニティ内でのコミュニケーションが志向される。つまり、『やおい』読者は孤独にキャラクターと向き合うのではなく、コミュニティのほかの読者の解釈を聞くことを快楽とするのである。

 このように、腐女子が男性同士のCPの解釈を語り合うことを楽しんでいる様子が、インタビュー調査とコメント調査から見受けられたので、該当する語り・コメントを抽出し、事例を挙げていこうと思う。なお、これ以降のインタビュー引用部分に出てくる「IR」は全てインタビューアーである筆者のことを指す。

 

 

第一項 新たな妄想・解釈を見出すことについて

 

AAさんの語りから

例)

IR:例えば、OEさんがちょっと聞いて聞いてー(AA:うん。)これはこうでこうなんだよーみたいな感じで話してくるのには興味はあるのかっていう。

AAめっちゃあるよねー。いきいきするというか。IR:あはは。)マジでマジでー?(IR:ふはは(笑)。)って議論が始まると思う。(IR:あー議論が。)てか、それうでさーみたいな。(IR:あー。)付け加えていくと。(IR:なるほどー。付け加えていく。)付け加えていってどんどん話が膨らんでいくと思う。(笑)

 

ここではAAさんに、腐女子仲間であるOEさんの妄想の話を聞くことに興味があるかどうかを尋ねたときの発言に注目していこうと思う。それに対しAAさんは、興味が「めっちゃある」と答えており、さらにOEさんの妄想の話を聞くと「いきいきする」と述べている。また、二人で話をしていると議論が始まり、「どんどん話が膨らんでいく」と言っている。このことから、腐女子同士でとあるCPについての妄想を語り合い、妄想の話が増大していくことを楽しんでいるのではないかと捉えることができる。

 

■ブログのコメントから

例)

(前略)

てかナルトの考察で噴出さずにはいられなかった。
ごめんなさい、面白すぎる(*ノノ)
そーかぁ、ー見方もあるんだなぁ
Sometimes I want to tell2010/04/16の記事についたコメント:nami 2010-04-16 02:21:32より抜粋 ※記事・コメント全文は巻末資料2−5参照)

 

このコメントは、ブログの記事にアニメ『NARUTO―ナルト― 疾風伝』に出てくる「ナルトが「受け」がするようなポーズをしている」という解釈が書かれているのに対して、ブログの読者がコメントしたものである。コメント主は、「そーかぁ、ー見方もあるんだなぁ。」と述べていることから、ブログの記事から新たな解釈を見出していると捉える事ができる。また、コメントに「面白すぎる」とも書かれており、ブログ記事(=他の腐女子の妄想の話)を楽しんでいるものと判断できる。

 

 

第二項 妄想の共有について

 

AAさんの語りから

例)

AA:なんかみんなでその妄想を楽しめたらー、(IR:うん。)それでいい、みたいな。

(中略)

AACさんだったらー、(誰とCPしたとしても)なんかこう、わくわくする、面白いと思う。(IR:あーなるほどー。)OEとかもすごい賛同してくれると思う。

 

ここでいうCさんはAAさんとOEさんの共通の知人である。AAさんはCさんだったら誰とCPしても「わくわくする」「面白いと思う」と言っているが、このことに関してOEさんも賛同してくれると述べている。また、「みんなで妄想を楽しめたらそれでいい」と、妄想を共有して楽しむことに重点が置かれているのではないかと考えることができる。

 

OEさんの語りから

例)

IR:例えばAAさんとー、腐女子トークをしてる時ってどういうところが楽しいですか。

OE自分の価値観を共有できるところ

IR:あー。・・・自分の価値観。(OE:うん。)例えば解釈、Eさん×Dさんって解釈をー、AAさんに話したりすることは楽しいんかなー?

OE:うん。なんかほら、サッカー好きな人がー、サッカーの話で盛り上がるじゃん

なでしこ凄いとか、(IR:うん。)それと一緒でー、(IR:うん。)BL好きな者同士がBLで盛り上がる。

IR:あー、なるほどー。それは萌えるっていう楽しさとか、それとは別の楽しさが。

OEうんうんうんうんうんうん普通に共有できるところが楽しい。

 

OEさんはAAさんと妄想の話をしている時は「自分の価値観を共有できるところ」が楽しい、「BL好きな者同士」が「BL」で盛り上がると述べている。これは、OEさん自らが男性同士のCPに「萌える」楽しさだけに留まっていないことが分かる。つまり、BLの話で盛り上がることができるという腐女子同士のコミュニケーション自体も楽しんでいるのだと捉える事ができる。

 

 ここで第二節に関してまとめを述べる。腐女子は、他の人の妄想の解釈を聞くことを娯楽としている。そうすることにより、妄想の話が膨らんでいったり、新たな解釈を発見したりすることができるから楽しいのだ。しかし、ただ他の人の解釈を聞くだけではなく、自分の中の妄想の解釈を他の人に話し、共有したいという欲望も持っている。つまり、腐女子は男性同士をCPする際に、妄想の解釈を自分自身の中だけに留めておくよりも、誰かと共有した方が楽しめると考えていることがわかる。腐女子にとって、他の誰かと互いにコミュニケーションを取り合うこと自体が楽しみの一つなのだといえる。

 

 

第三節 男性同士をCPすることによって起こりうる感情の差異

 

 腐女子がBLを楽しんでいる理由の一つとして、男性同士のCPのキャラクター単体や、CP間の関係性に対して「萌え」という感情が生まれるからであるというのが本論文の前提であった。しかし、腐女子の語りやブログのコメントを見ていくと、腐女子が男性同士をCPする際に「萌え」の感情のほかにも、それとは異なった感情が生じていることがわかった。では、果たしてどのような感情が見受けられたのか。「萌え」以外の感情が顕著に見られる語り・コメントを抽出し、1つ1つたどっていこうと思う。

 

 

第一項 「面白い」「笑える」という感情

 

AAさんの語りから

例)

AA:(最初からあまり腐った目で見ないが)でもー、そういうの想像するとなんか面白くなっちゃう。考えると面白くならん?(笑)(IR:確かにね。)Aの「おっ、おーB、俺が、仕事を、からだで、教えて、やるぜ!」みたいな。(IR:(笑))面白いよね。(IR:確かに面白くなっちゃうよね。)私はそうだね、なんかこう、快感よりも、娯楽性と言う意味で、BLを楽しんでいるだと思います。

(中略)

AA:身近な人だとなんか、(IR:面白くなる。)そうなんだよね。不思議だよね。多分、(他の人と話すのに)ネタになるからじゃない?IR:あー。)だからもし、うちがめっちゃテニプリ好きでー、(IR:うん。)もし別の人もめっちゃテニプリ好きでー、(IR:うん。)あと腐女子系だったら、今度テニプリの妄想をして楽しむと思う。

 

AAさんは身近な男性同士をCPしている。ここではAさんはBさんの先輩であり、そういった先輩後輩関係を脳内でCPしている様子である。その様子を想像すると「面白くなっちゃう」と述べている。つまり、AさんとBさんの関係性を想像することにより、「萌え」とはまた違った「面白い」という感情が出てきていると考えることができる。さらに、「快感よりも、娯楽性という意味でBLを楽しんでいる」という発言があった事から、AAさんの中では「快感」=「萌え」の感情であり、「娯楽性」=「面白さ」という捉え方がなされていることがわかる。よって、AAさんは「面白い」という感情は「萌え」という感情とは別の物として考えていると推測できる。また、身近な人をCPする理由として「ネタになるから」と述べていることから、「面白い」という感情は腐女子同士でCPの妄想をし合ったときに生まれるものだと考えられる。

 

■ブログのコメントから

例1)

5. こんにちは!

(前略)

今実は図書館なんですが…
笑い堪えるのに必死
肩の震えが止まりませんでした←←←
ほんっっっっん
blog
面白すぎます(TT`)
確かに言われてみれば
ナルトがwwww;;
エロだったですね(^O^)!!!
(後略)
Sometimes I want to tell2010/04/16の記事についたコメント:サヤカ2010-04-16 11:58:40より抜粋 ※記事・コメント全文は巻末資料2−6参照)

 

このコメントは、アニメ『NARUTO―ナルト― 疾風伝』についての腐女子の萌え語りが書かれているブログ記事に、「ナルト(=このアニメの主人公)が「受け」がするようなポーズをしている」という解釈が書かれているのに対して、ブログの読者がコメントしたものである。コメントに「笑い堪えるのに必死」と書かれているように、コメント主は、ナルトが「「受け」ポーズ」を取っているという状況やその解釈に爆笑している。よって、このときに抱いた感情は「萌え」とは違った「面白い」という感情である。また、「ナルトがエロ回だったですね」と述べるように、「エロい」というのも面白くなるのに一躍買っているのではないかと考えることができる。

 

 このコメントに、ブロガーからの返信があるので以下に挙げる。

 

例2)

6. きゃあ☆

>サヤカさん
(前略)

いやぁ笑っていただけて何よりです() よ、良かった、相当なチキンなんで怒られるんぢゃないかとびくびくしながらあーゆうことを書いてるとゆう… 毎日が綱渡り気分です←やめれば…?
参りましたナルトの艶姿… 多分今回がまっくすなのでないかと…
しかしナルトでは腐ってないのれす、あたしの心はイタサスのもの(どっかいけ

(後略)

Sometimes I want to tell2010/04/16の記事についたコメント:サヤカ2010-04-16

 11:58:40に対する返信 phantom999 2010-04-16 12:10:34より抜粋 ※記事・コメント全文は巻末資料2−6参照)

 

コメントに対し、ブロガーが「笑っていただけて何よりです(笑)」と述べていることから、ブロガー自身も「ナルトの「受け」ポーズ」という現実離れしていることを「笑い」の対象として捉え((8))おり、ブログの読者に笑ってもらうためにこの記事を書いたのではないかと推測できる。しかも「ナルトでは腐っていない」との表現もあり、ナルトに対しては「萌え」の感情をとりわけ抱いていないことがわかる。また、「参りましたナルトの艶姿」と書いており、「艶姿」=「色っぽい姿」に「笑い」を引き起こすための要素が少なからずあるのではないかと考えられる。

 

 

第二項 「おいしい」という表現

 

AAさんの語りから

例)

AA:・・・どんなシチュエーションがいいだろ。あっ!あのー、あれがいいかな。ちょっと気持ち悪いな。Dが、なんか、Eによって酷い目にあわされるのがいいかもしれません。IRあはははは(笑))うふふふ(笑)。

IREさんによってメタメタにされるのがいいってこと?

AA:そう。そうそうなんか、「お前昨日Bと寝ただろー。(笑)」とか。(二人爆笑)「えっ、ちっちがうよー。Bが泊めてくれって言ったからー。」で、「ちょっと来いよ。」とかで、大学のトイレとかで酷い目にあわされて(IR:ははは(笑))うん、萌えるかもしれません。

IR:そうだね。なんか、興奮する?

AA:ていうか、ちょっと、フフフってなる。(笑)なんかこう、(IR:うまいなみたいな?)うん。おいしいなっていう。まあー、そんな感じ?

 

AAさんの語りに注目しよう。DさんとEさんは仲が良く、いつも一緒にいることから、AAさんは「どんなシチュエーションが良いか」を妄想している。そしてこの状況を妄想すると、「萌える」かもしれないとAAさんは語る。しかしそれは、本論文で提唱している「萌え」の定義とは幾分違ったもののように感じる。なぜなら、ここで「DさんがEさんによって酷い目にあわされる」という行為を語っている際に、恋心に近い感情よりも、爆笑している様子の方が見て取れたからだ。さらにAAさんはその様子を「フフフってなる」「おいしい」という言葉で表現しており、「萌え」の感情と「面白い」「笑える」という感情の両方を含んでいるものなのではないかと考えることができる。

 

OEさんの語りから

例)

OE:テニプリの14巻でー、(IR:うん。)まずこの宍戸が、滝さんに勝つじゃん、(IR

うん。)勝つだけど、(IR:うん。)宍戸は自分がレギュラーに入れてもらえないの。(IR:(笑))そこで榊(=監督)に直接、もうこの(宍戸の)自慢の長髪を切ってまで、(IR:うん。)レギュラーになろうとするの。でもそれを鳳がー、自慢の髪の毛じゃないすかって。この時点でもうなに、関係はできててー、(IR:うん。)さらに、(IR:ははは(笑)はいはい。)15巻でー、(IR:はい。)(宍戸と鳳が)ダブルスしてるんだけどまず鳳の技がー、一球入魂じゃ。(IR:ははは(笑)。)これ完全に下ネタだろはは(笑)。IRあはははは(笑)。)しかもー、宍戸がここで前に出て「俺が攻めに変えてやるよ」(IR:あはは(笑)。)って言ってるからもうこれは完全に出来上がっている。IR:出来上がっている。)ここめっちゃ萌える。IR:あーそうなんだー。)それでずっと夜中に二人でー、見て見てこれほら、この二人で夜中の特訓をしてー、(IR:夜中の特訓かー。)ここで鳳は宍戸がこうやって頑張ってるのを知ってるからこその関係っていう。おいしいよね。

IR:この二人は出来てるっていうことか。

OE:そうそうそう。出来てる出来てる。でー宍戸が、受け。

 

 この語りは、OEさんが、マンガ『テニスの王子様(※巻末資料1−4)』の宍戸がレギュラーになろうと努力しているというシチュエーションから、「2人(鳳×宍戸)の関係は出来上がっている」ことを妄想しているものである。鳳と宍戸が特訓をしている様子を「めっちゃ萌える」とOEさんは語る。しかし、「一球入魂」や「夜中の特訓」など、「下ネタ」を彷彿させるようなことにも敏感に反応を示しており、それに対して笑っている様子もうかがえる。さらにOEさん自身が、2人の関係について「おいしい」という言葉で表現していることからも、ただ単に本論文で提唱されているような「萌え」という感情だけにはおさまらない感情が含まれているように感じる。つまり、このCPに関して「萌え」の感情と「笑える」という感情の両方が現れているのではないかと考えることができる。

 

■ブログのコメントから

例)

2. SHT!!

(前略)
大きいお姉さんのスーパーハァハァタイムですね!
あぁ、今回の電撃婚と言いピロートークw(←修学旅行か!)と言いまたも色々美味しかったです♡
(後略)

(腐JO子の奇妙な冒険2011/05/12の記事についたコメント:アリス2011-05-12 20:12:24より抜粋 ※記事・コメント全文は巻末資料2−7参照)

 

 このコメントは、特撮の『海賊戦隊ゴーカイジャー(※巻末資料1−5)』についての腐女子の萌え語りが書かれているブログ記事に、「ゴーカイレッドとゴーカイブルー(いずれも男性キャラクター)が電撃婚をし、さらに2人で横たわって話している姿がまるでピロートークのようだ」という解釈が書かれているのに対して、ブログの読者がコメントしたものである。コメントには「電撃婚」と「ピロートーク」の様子に対して「美味しかった」と書かれていることから、「美味しかった」という評価はブロガーが提供した「原作」そのものについて述べられているものだと判断できる。また、これらについて「スーパーハァハァタイ((9))」と表現していることから、コメント主は少なからず「萌え」を感じていることがわかる。しかし、「ピロートーク」に関しては「修学旅行か!」と自身で突っ込みを入れており、それに対して面白がっている様子も伺える。よって、コメント主が述べた「美味しかった」という言葉には、「萌え」の感情と「面白い」という感情の両方が含まれているのではないかと考えることができる。

 

 ここで第三節に関してまとめを述べる。第一項で述べた「面白い」「笑える」という感情は、他の腐女子の解釈を聞いた時やCPについての妄想をし合ったときに起こることがわかった。この「面白い」「笑える」といった感情は、腐女子同士で「エロい」ことや「現実離れしている」ことを互いに認知したときに起こりやすく、関連性が高いのではないかと推測できる。また、第二項で述べた「おいしい」という表現は、CPの素材を見て妄想したときになされることがわかった。腐女子がCPに対して「おいしい」と感じるときは、「萌え」の感情と「面白い」「笑える」といった感情の両方を含んでいるときなのではないかと考えられる。