第一章 問題関心

 

BL(ボーイズラブ)とは、男性同士のホモセクシュアルな関係を描いたマンガや小説の総称である(加藤 2009-02)。最近、「BL」という言葉や、このジャンルを好む女性を指す「腐女子」という言葉が世の中で広く知れ渡っているように、BLが娯楽性のあるものとして広く認識されるようになってきたと感じる。また、もともとBLを標榜せず、また一般的にはそうみなされてもいないマンガや小説など(以下「原作」とする)に対しても、腐女子が自らそこに出てくる男性キャラクターたちをCP(カップリング=男性同士の関係性を「攻め/受け」というかたちに当てはめること)しており、「商業目的であるオリジナルのBL本を読む」「BLとしての二次創作を作る、または読む」といった、一般的に知られているBLの楽しみ方とはまた違った楽しみ方が出てきているように思う。

ではなぜ、腐女子は「原作」までをもBLとして受け取り、娯楽とすることを好むのだろうか。例えば、男性同士がアツい友情で結ばれている「原作」があったとして、その男性のどちらかが「どんなことがあっても俺がお前を守る」とでも言ったものなら、それを「愛の告白」として捉えてしまうといった行為などが挙げられる。

 そこで、本研究では「「原作」そのものを、二次創作を介さずにBLとみなして受け取っている行為」に着目し、腐女子たちがどのような好み・欲望のもとに男性同士をCPしているのか、どのようなことに楽しみを見出しているのか、なぜそれを娯楽としているのかを、「「原作」の受け手」側から探っていきたい。