第一章 問題関心

近年、余暇時間の増加や価値観の多様化に伴い、農業者以外の人々の中に庭いじりとは別に、農業に近い形で野菜や花を栽培し自然に触れ合いたいというニーズが高まっており、これを反映して市民農園の開設が増えている。そして全国の市民農園数も平成10年度3月末日で2,119農園であったのに対し、平成22年度3月末日現在では3,596農園(農林水産省HPより)まで増加している。

市民農園の形態としては、都市住民の人々が自宅から通って利用する日帰り型の市民農園と、農村に滞在しながら農園を利用する滞在型の市民農園(クラインガルテン)がある。また、農作業を初めて経験する人や、いろいろな作物を栽培したい人のために、開設者が農作物の栽培指導や栽培マニュアルの提供等を行う農園や、収穫祭等を開催し、都市住民と地域との交流を図るような農園も増加している。

本論文では富山県下で最大規模を誇る日帰り型市民農園である「とやまスローライフ市民農園」(以下スローライフ市民農園)と、道の駅に併設され企業が運営を行っている「越中いっぷく農園」(以下いっぷく農園)の二つの市民農園を対象にインタビュー調査を行い、市民農園の持つ特徴と地域活性化への寄与の可能性を探っていく。