第四章 婚活をする女性の語り

 

 第二章の先行研究で抱いた問題関心とブログ調査、インタビュー調査、質問紙調査のデータから、恋愛や結婚とは違い婚活ならではと考えられるものを抽出し四つの分析の視点とした。分析の視点は以下の通りである。

第一に、婚活をする女性たちは今までの恋愛と婚活とでは相手に求める条件は変化したのか、また婚活では自分と相手の男性をどのように価値づけしているのかという視点である。第二章では、理想的な結婚をするため、女性たちは経済的に豊かな男性を求めるというものがあった。結婚を考える上で、相手に求める条件はどのように設定されているのかについて分析していきたい。

第二に、婚活をする女性たちの考える結婚に向けた積極的な活動とは何であろうかという視点である。第二章では、婚活の本来の意図として積極的に活動したり、自分自身を磨いたり、理想を追い求め過ぎずある程度のすり合わせをしたりすることが必要であるとされている。本来の意図ではそうかもしれないが、実際に女性たちは婚活というものをどのように捉え、活動しているのか分析していきたい。

第三に、婚活をする女性たちは「恋愛のような結婚」をあきらめて婚活しているのであろうかという視点である。第二章では、婚活ブームの第二の波が女性たちに「恋愛のような結婚」をあきらめさせ、ロマンティック・ラブを解体させたとあった。そこで、婚活をする女性たちは婚活と恋愛を切り離して考えているのか、婚活から恋愛、結婚というものを想定して婚活をしていないのかについて実際の語りから分析していきたい。

第四に、女性たちが自身の婚活に関して語る場の存在、そこでどのようなことが語られるのかという視点である。インタビュー調査において、女性たちが自身の婚活に関して友人や知人と語るというものがあった。そこで、恋愛に関して女性たちはよく会話をするが、婚活においてもそのようなことがあるのではないかと思い、女性たちの語りから自身の婚活に関して語る場、そこでどのようなことが語られるのかについて分析していきたい。

以上の視点においてブログ調査、インタビュー調査、質問紙調査のデータを用いて分析を行っていくことにする。

 

 

第一節 選ぶ立場としてのターゲット設定

 婚活をするにあたり、女性たちが結婚相手となる男性に対しての求めるものは様々である。それぞれ年収を重要視する人もいれば、性格を重視する人もいる。筆者は女性たちが相手に求める条件を「ターゲット設定」と名付けた。婚活を始めたことでターゲット設定は今までの恋愛におけるターゲット設定と何か違いはあるのだろうか。また、ターゲットを設定する時に自身の価値はどれだけ気にするのであろうか。自他それぞれに対する価値づけの観点から分析していきたい。

 第一項 今までの恋愛と何が違うのか

 インタビュー調査、補足で行った質問紙調査の結果(資料32参照)、今までの恋愛と婚活でのターゲット設定では変化がある人ない人で分かれた。ターゲット設定が変化したという人では、主に家庭的かどうか、結婚後の生活というものを意識したターゲット設定に変化している。恋愛におけるターゲット設定では、見た目や雰囲気、付き合って楽しそうかどうかなどが重視されていた。ターゲット設定に関する語りとして、Mさん、Yさん、Tさん、ひかりさんの語りを例に分析していくことにする。

 以下の全データにおいては、会話の話し手をアルファベットで表記する。大文字のものが調査協力者の発言であり、小文字のiは筆者の発言である。また、ブログ調査のデータは<〜さんの書き込み>とし、インタビュー調査のデータは<〜さんとの会話>と表記する。

 

 

<Mさんとの会話>

M:あたし、そんな前までは、仕事とかもこだわってなかったよ。だから前の人製造だったしー、三交代とかだったしー、全く違うもんね。この歳だからー多分、若いときはさーやっぱり見た目とかさ、なんだろ性格とかの方が重視しとったから、でもこの歳になると、人生長いでしょ?(i:そうですねえ)やっぱりお金って大事じゃない?世の中の9割以上はお金で買えるがよ。

 

Yさんとの会話>

i:じゃあ、どうしても妥協できない部分ってありますか?

Yでもやっぱある程度の収入源は欲しいかな。あとチャラくないとか。

i:ああ、真面目ならって感じですかね。

Y:うん。もう、彼氏って言うかは、旦那にしたらいいだろうなっていう目線だな。

i:最終的には旦那になってくれるような人を

Y:うん、いい旦那さんになってくれるだろうなって人を選びたい。

i:いろんなターゲット設定はあるものの、最終的にはそこを見てっていう

Y:うん。だからチャラかったらね、ねえ、そんな旦那さんにしたら大変だし、収入だってなかったら大変だしとか思って、すべては結婚って言うかね、結婚後の生活を思っての今、

 

<Tさんとの会話>

i:じゃあ、今まで婚活する前のー、今婚活している時の性格とか、まあちゃんと仕事しているとかあったんですけどー、今まで彼氏彼女で作っていく感じのー時のタイプ?と今の婚活している時ってちょっと違ったりしていますか?

T:あー、基本的には変わらないと思っていますね。いざ付き合う人がどういう人になるか今全く見えてない状況だからー、はっきり言えないけどー、ただー昔よりはー、なんだろ将来のことを考えるからー、なんかただいいなっていう感覚だけでは、決められないっていうのはー、どんなに性格が合ってもー、なんかやっぱりねえ

i:不安要素が?

T不安要素がー1つでもあればー、今だったら二の足を踏む、可能性がある。昔だったら、性格だ合えばいいかもっていう感じになっていたかもしれないけど、

i:それが慎重になったっていう

T:うん、慎重。うん、そうだね。

 

<ひかりさんの書き込み>

30代になると、人をスキになりにくくなったような気がします。

そして、感情で〔スキ〕となる前に

■スキになっていい人か?

を考えるようになったような気がします。

一般的な生活ができるくらいの「経済力」「将来性」はあるか

自分の両親、友達ともうまくやっていけるくらいの「社交性」はあるか

ずっと一緒に暮らしていける「思いやり」「おおらかさ」はあるか

長生きしてくれるほど「健康」 などなど・・・。

大人になると、その人と会ってしばらく話したりすると、その人の長所&欠点、どんなところで自分と喧嘩になるか、などがある程度だけど見えてしまうことがあり、いくら格好良くても、そして一般的には素晴らしい職業についていたとしても、それだけでは踏み込めなかったりします。2009319日書き込み)

 

 

 Mさんは今までの恋愛では、見た目や性格を重視しているが、これから先生活していくにはお金は必要になってくる。結婚を意識する年齢に達し、これからのことを考えるとそれまでそんなに意識してこなかった経済力というものをターゲット設定に組み込んでいる。Yさんは、結婚後の生活を念頭におい恋人と言うよりは夫にしていい人かどうかを見極めている。特に、結婚後の生活を思って収入と言うものはある程度欲しいと語っており、ターゲット設定における経済力の存在は大きいと言える。Tさんは、基本的にはターゲット設定に変化はないと言うが、過去の自分と比較して今の自分では将来のことを考えて相手選びには慎重になっていると話す。ターゲット設定に変化はないが今までよりも相手の色々な面を見て慎重に判断すると言うのだ。ひかりさんは、30代に突入し婚活を始め、今までとは違い人を好きになるのに相手の長所や欠点をある程度見て判断し、相手を好きになりにくくなったと語る。ターゲット設定に変化がある無しにかかわらず、将来のことを考えて相手選びにはこだわりを持ったり慎重になったりするということがうかがえる。婚活には自身の将来の生活を意識して、相手選び、つまりは相手の安定した経済力が大きく関わってくると考えられる。ただ好きになった人と交際して結婚するのではなく、自身が将来安定した生活ができる人かどうか見極めるということが婚活におけるターゲット設定なのであろうと考える。

 

 

 第二項 ターゲット設定の需要と供給

 婚活をしている女性は、自身をどのように価値づけて婚活しているのであろうか。また、自身の価値づけとターゲット設定はどのように関係しているのであろうか。質問紙調査では他の婚活女性とのランク付け、価値づけの基準として若さや見た目ということが回答にあった(資料32参照)。年齢や個人的な引け目で自身を低く価値づける、または男性からのアプローチの多さから自身を高く価値づけている人もいた。自身を低く価値づけていることで高いターゲット設定にしない例としてRさん、Sさん、自身を高く価値づけているためにターゲット設定を高くしている例としてYさんを挙げることにする。

 

 

<Rさん、Sさんとの会話>

Rなんかやっぱり引け目もあるし、自分バツイチだし、独身の時はこれだけの人でいいとか思ったけどー、なんかそんなにー、自分を受け入れてくれる人のほうが少ないんじゃないかと思って、

i:じゃあ、受け入れてくれる人であればー、でいい人であればー、

S:うんー、がいいかなって思うよね。やっぱ再婚同士がいいかなって私は思うけどねえ

R:うん。

 

<Yさんとの会話>

i:じゃあ、その2,3年前に婚活を始めたころはそういう風には思ってなかったんですか?

Y:なんだろう、なんか条件も高くなかったと思う。i:やればやるほど高くなっていったんですか?)そうー、やっぱ色んな人と関わってくると、あっこういう人もいるんだとか、こういう考えもあるんだっていう風にぶれる、まあ、ぶれるっていったらおかしいけど、考えも変わってくるからー、i:じゃあ最初のほうがわりと低い設定でー)低かったと思う。んー。

i:まあ、いい人だったら、付き合うかなーぐらいの。ほー。

Y:なんかほんとにねえ、年々高くなってきているのは間違いない。なんか多分まあ失礼かもしれんけどまだなんか市場があるというか、まだ告白してくれたり気に入ってくれる人がいるってことは、私まだ妥協しなくていいんだってi:まだいけるなっていう)そうそうそう、これがまた30とかになって、相手にしてもらわない立場になったらー、たぶん妥協するんだろうけど、今はまだ違うかなと。(中略)そう、なんだろね、何年も婚活していると条件が厳しくなるというかー、この人じゃなくていいじゃんって言うかなんかー、なんかダメスパイラルに陥っとる。

 

 

 Rさん、Sさんは「バツイチ」という引け目を持っている。その引け目から自身を低く価値づけて、独身時に抱いていたようなターゲット設定にはしないと語る。そのため、自分を受け入れてくれればいいという低いターゲット設定にしているのである。このことから、自身で感じる引け目が贅沢を言えない状況を作り出し、ターゲット設定を低くすると考えられる。一方、Yさんは婚活をする女性の中でも比較的に若い年齢に入り、男性からの需要もあり自身の価値も高くなるので、色々な人に出会うにつれてターゲット設定も高くなっていくと語る。ターゲット設定が高くなったのは、出会った人の良い面、悪い面を見ていくうちにいろいろな条件が足されていったためである。また、Yさんは年齢が上がり男性からの需要が減ればターゲット設定に妥協を入れざるを得ないとも語る。つまり、男性からの需要という自身を高く価値づけるものがあればターゲットを高く設定できるが、逆に年齢が上がるという自身の価値づけを低くするようなことがあればターゲットを低く設定しなければならなくなるのだ。Yさんの語りから、婚活はやり込むほどに結婚に近づけるとは限らないのではないかという考えが浮かんだ。婚活をやり込めばやり込むほどに、色々な人に出会い、ターゲット設定をさらに高く設定していき、結婚に近づけなくなってしまうこともあるのではないだろうか。しかし、このようにターゲット設定を吊り上げられるのはYさんのように自身の価値付けが比較的に高いためであると考えられる。このことから、自身の価値づけは婚活においてターゲットを設定するのに大きく関わっているように感じられる。

 相手を選ぶ立場としてターゲット設定を分析したが、ターゲットを設定する際にまず考えるのは自身の将来のことである。自身の将来の生活が安定的なものとなるために相手となる男性選びには慎重になる。特に、経済力は将来の生活水準を決定するものであると考えられ、婚活におけるターゲット設定では重要となる。しかし、ターゲット設定には高い設定もあれば低い設定もある。その違いは何かと言えば、自身の価値付けであると考える。自身が婚活という市場においてどのくらいの需要があるのか、自身で価値付けしその価値付けからターゲットを設定しているのである。婚活におけるターゲット設定には安定した将来を見込める相手選びの他に、そのターゲット設定の高低を決める自身の価値付けが行われると考えられる。

 

 

 

第二節 婚活における積極性と消極性

 婚活とは結婚に向けて積極的に活動することを指すが、婚活をしている女性が考える積極性とは何なのだろうか。積極的に合コンに行くことであろうか、または気に入った男性に積極的にアプローチすることであろうか。女性たちが語る婚活における積極性に関して分析していく。質問紙調査では、出会いの絶対数を増やすため積極的に合コンを主催したりするというものであったが、気に入った男性に連絡先を聞くという恋愛にも通じるような行動には消極的な面が見られた。婚活における積極的な部分、消極的な部分を分析していくことにする。

 

第一項 婚活における積極性

 婚活をしている女性たちの考える積極的な活動とは何であろうか。質問紙調査では出会いの絶対数を増やすような合コンを主催したりパーティーに行ったりするといったものが多く回答されていた(資料32参照)。そこで、女性たちの考える積極性に関して分析を行っていくことにする。積極性の語りとしてYさん、Mさん、ナナさんの語りを例に挙げる。

 

 

Yさんとの会話>

i:はい。なんか今までの恋愛とこの今の婚活とで積極性って結構変わりました?

Y:ほんとにー、あたし2,3年しとるわけじゃん?婚活を。その婚活当初と今だったら全然違うと思う。

i:当初どんな感じだったんですか?

Y:当初は、ほんとになんか待ちばっかりでー、もうアドレスとか聞いてくれるの声かけてくれるのを待つだけしかなかったけど、とかあと飲み会とかも誘ってくれたら行くみたいな感じだったけどー、今はもう自分で、多分アドレス聞けるぐらいの勇気あるしー、その飲み会とかも自分でセッティングしようっていう感じだしー、

i:結構積極的になりましたね。

Y:そう。で、イベントとかもああこんなんあるんだとか思って。そう探したりとかもするしー、

 

Yさん、Mさんとの会話>

i:か、ちょっと聞きたいかもーって思う男性ってどんな感じですか?

M:さっきの条件をクリアした人。

i:クリアしないと絶対無理ですか?

M:いや、なん多少は、、、大丈夫だけどー

Y:その多少のラインを言えばいい?

i:そうですね、、、多少、、たとえば天パじゃなければいいとかー

Y:天パは譲るね。(M:それかーなんかー)ってーかその人はなくてもーその人がなんかいい所に勤めとったりしたらーそこから輪が広がるかなーとか思って

i:何か、何か始まるかもしれないとか

Yそうそう、っていうー教えようかなっていう、こともある。i:ああー)だからそういう場合って身長だとか、ね?M:どうでもいい)天パっていうのはどうでもいい。i:次のつながりー)そう、その後ろを見とる。

i:もしかしたらこの人の知り合いがいいかもしれない、

 

<ナナさんの書き込み>

アタシは今、人脈が欲しくてたまらない。婚活はとにかく、人脈が肝になる。だから、アタシは色んなところに顔を出している。そして沢山の人に会う努力をしている。時にいや・・・しばしばそういった、自分が知らない人ばかりの集まりへ飛び込む事はアタシにとってとっても気が重い正直面倒だしなにより居心地が悪いでも、最近・・・・一生懸命色んなところに顔を出したから得られたんだなー・・。て思えるまさに、人のつながりを実感できる事があった。2009429日書き込み)

 

 

山田(2010)は婚活の自身も意図しなかった効果として婚活が合コンや結婚情報サービスの勧めになってきているという誤解を指摘している。また、出会いを増やすことが婚活の全てではなく、出会う前に自身を磨いたり、出会ってからも結婚に向けて互いに希望をすり合わせたりすることが必要と述べている。実際に活動している女性の語りではどうであろうか。

 Yさんは出会いの数を増やすために飲み会を企画したり、気に入った相手には自ら連絡先を聞いたりといった積極性を語る。待ちの姿勢から攻めの姿勢へと変化していることを実感している。YさんとMさんとの会話では、男性に連絡先を聞く際にターゲット設定に見合うような男性だけではなく、勤め先が良いところであればその人を良いと思っていなくともその勤め先のつながり、輪を広げるために連絡先を聞くというものがあった。次のつながりも視野に入れて出会いの絶対数を増やそうと積極的に活動している。ナナさんは婚活は人脈を増やすことが大事だと考え、たくさんの人に出会う努力をしている。知らない人の中に飛び込むのは気が重いことだが、人脈を増やすことで今まで出会わないような人と出会うことができるチャンスが増えるということなのであろう。これらの語りから、共通して言えるのは婚活における積極的な活動には出会いを増やす活動が多く語られるということである。人脈を増やすことや飲み会を主催するなど積極的に色々な人と出会おうとしている。YさんやMさんは自分から連絡先を聞けるくらいの勇気は今はあると語っているが、出会いの場には積極的に顔を出すが自分からはなかなかいけないと言う人は多いようである。婚活をする女性たちの考える積極的な活動とは出会いの数を増やす活動なのではないだろうかと考える。

 

 

第二項 婚活における消極性

 婚活とは結婚に向けて積極的に活動することを指すが、婚活をする女性たちの語りからは積極性だけでなく、しばしば消極的とも思える部分も感じられる。積極的な活動が求められる婚活で、積極的にできない部分、消極的と思われる部分とはどんな時であろうか。女性たちの語りから分析していくことにする。消極性の語りとしてMさん、Yさん、Tさんの語りを例に挙げる。

 

 

Mさんとの会話>

i:いやーあんまりー、もっと必死の人もっとすごいっていうかー。ガッツガツ。

Mだってすごいよ。AOさん(とやまde出会い実行委員の男性)とかとしゃべっとったら女の人とか「ちょっといいですか?」とかって割って入ってくる人おるよ。私絶対そういうことせんしー。ただ参加しとるだけ私。

 

Mさん、Yさんとの会話>

i:なんかそのー、どっかの大手のー婚活サイトとかには登録せず、

Yうん、登録せず、、、お金かかるじゃないですか。そんな何万とか払ってまでしたくない。

(中略)

i:なんかー、結構ブログ書いているような人はー、結構(パーティーなど)一人で行ってー、ちょっとそこで女の子の友達作ってー、固まりー、ちょっと話しに行くとかしたらしいので

Yそこまで本気さがー、本気って思われたくないよね?

M見知らぬ人とあんまり話したくないよね?女の人ー

Y気遣いたくないよね。

 

Tさんとの会話>

i:例えばーその飲み会とかでー、自分の気に入って人が人気があったとして、でもそこを割って行けるだけのー勇気はあります?

Tないです。

i:はい。

Tそれは即行であきらめます。私すぐ。友達とかぶったりしてもあきらめるんでー。

i:そこまでガッツリいってない感じで、

Tそうー、基本的には来られるのが好きなんだと思う。だと思う。最初は来られるのが好き、自分からあんまり行くタイプではない。

i:今までのー、今活動される前とかでも、来られるほうが

T:うん、そう、来られたりとかー、そうー、でも来られてもだめな人はだめなんだけどー、なんか同じ人に2回くらい付き合ってくれっていわれたけどもー、やっぱりいくら来られてもーだめな人はやっぱだめ。


 

 

Mさんはパーティーでの他の女性の積極的な姿と自身を比較して、自分はそこまでできないと消極的な面を見せる。合コンを主催したり男性に連絡先を聞いたりできる積極性はあるが他の女性を割ってでも気に入った人にアプローチするといった行動はできないと話す。次にMさんとYさんとの会話では、二人はお金がかかるため大手の結婚情報サービスには登録していないと言う。高額な金額を払ってまでの婚活はしたくないのである。婚活を共にしている友人がいるということもあるが、パーティーに一人で行くような積極性は見られない。むしろ、パーティーに一人で行くと本気と思われるためそれを避けている。Tさんは気に入った男性に対して基本的に向こうから連絡先を聞いてくるような受身の姿勢をとっている。良いと思った男性が友人とかぶってしまった場合もすぐにあきらめると言う。出会いの場に行くようにはしているが、自分からのアプローチはできないようである。質問紙調査の回答でも、自分から連絡先を聞くなどのアプローチは「できない」という回答が多かった(資料32参照)。MさんやYさんは第一項の積極性の語りでもあったが、連絡先を聞くことができるといった積極性を見せる。しかし、パーティーに一人で行ったり、他の人を割ってでも気に入った男性にアプローチしたりといった行動はしない。女性たちの婚活における消極性は様々であるが、女性たちが婚活において全て積極的に活動できているというわけではないことがわかる。

積極性が求められる婚活ではあるが、婚活をしている女性たちの考える積極的な活動とはどうやら合コンやパーティーに意欲的に参加するといった出会いの絶対数を増やす活動のことを指すようだ。その一方で、積極的な活動をしつつも女性たちは全てにおいて積極的であるというわけではない。自分から男性に連絡先を聞きに行ったり、気に入った男性が他の女性と話していたら割って入って行ったりするような恋愛にも通じるアプローチには消極的な姿勢を見せる。婚活を始めたから全てにおいて積極的に活動しているというわけではなく、出会いを増やすという一面で積極的に活動しているということが言える。

 

 

 

第三節 婚活から始まる恋愛結婚への期待

 開内(山田2010)は婚活ブームの第二の波が婚活しやすい土壌を作り、自分からお見合いを申し出ることも恥ずかしく思わないような空気を作ったと述べている。実際に活動する女性たちはどのように考えているのであろうか。また開内は恋愛至上主義の流れは変わり「恋愛のような結婚」をあきらめさせるというが、婚活をする女性たちは本当に「恋愛のような結婚」をあきらめたのだろうか。

婚活とは結婚に向けて積極的に活動することであるが、その結婚とは恋愛結婚のことなのであろうか。条件的により良い結婚生活の送れる相手と出会いいち早く結婚することなのであろうか。婚活をする女性はどのような結婚を望んでいるのか、ひかりさん、momoさんの語りを例に分析していく。

 

 

<ひかりさんの書き込み>

結婚と恋愛は別物って言う人もいるけど、

恋愛相手=異性として好きな人

結婚相手=人として好きな人

で分けているのかもなぁ・・・なんて。

異性として好き→人としても好きになれればいいけど、なれないまま、

異性として好き→別れた、

を繰り返さないためにも、私が今から始める“婚活恋愛”は、人としても好きになれそうかどうかを見極めてから進みたいな・・・なんて思っています。2009424日書き込み)

 

momoさんの書き込み>

私は真剣に婚活に向き合おうと思います!とりあえず、何が一番自分にとって大切か?考えたら、良いパートナーに巡り合い、支え合って成長していくこと。そして子供も授かれればうれしい。けど、出産ありきではなく、まずは二人で楽しく愛のある生活ができるパートナーを探すこと。これが自分にとって一番大切なことだって思いました。ということで、今までの「自由人」な姿勢ではなく、「真剣勝負で挑みます!」やる気ありすぎ(笑)200995日書き込み)

 

 

 ひかりさんは結婚と恋愛は別物として考えていない。ただ、恋愛では異性として好きになれる人、結婚では人として好きになれる人というように分けて考えているようだ。婚活を始めるにあたりひかりさんは「婚活恋愛」をしようとしている。ひかりさんの言う「婚活恋愛」とは、異性として好きであり人としても好きになれる人を見つけて恋愛して結婚するというものである。momoさんは良いパートナーと巡り合うことを大切に考えているが、ただ結婚したいのではなく、愛のある結婚生活を送りたいという恋愛の面もうかがえる。積極的に結婚に向けて活動するが、その結婚には愛というものが大きく関わっているようである。例え条件は良くても人として好きになり、結婚後も愛のある結婚生活が送れるかどうかが重要なようである。このことから、女性たちは婚活による出会いの活動から結婚におけるある程度の条件はあるものの、好きになれる相手を見つけて恋愛結婚をしたいと考えているのではないだろうか。

 

 

 

第四節 婚活を語る場としての女性コミュニティ

 恋愛に関して女性たちは友人同士で語ることは多いが、婚活をしている女性たちは自身の婚活について語る場を持っているのであろうか。お見合いをしたり結婚相談所に入会したりという結婚に向けて活動していることは他人にはなかなか語りにくいものである。しかし、女性たちの語りから婚活の仲間、友人、会社の先輩などに自身の婚活について話すことがあるという語りが見られた。女性たちが語る場を女性コミュニティとしてとらえ、そこではどのようなことが語られ、どのような役割を持つのか、そしてそれはどのような人と語る場なのか分析していく。女性たちの語りからは、Mさん、Yさん、Tさん、もみじさんを例に挙げていく。

 

 

Mさん、Yさんとの会話>

M:ほらーだって友達といったら「あの人何とかだよ、ププっ」とか言えんねか。

Y:もしかして行く人がー本当にいなくなったらー、行くかもしれないけどー(NM:うーん)今は誘えば誰かしら一緒にいってくれるからー、ね?それなら一人より二人、三人でーってゆう、

Mそれ行き終わった後にどこかでちょっと話したりもできるしね。

Y反省会

M今日のなかったよねとかみたいな

Y:あいつさー、

M:あいつハゲだったーとか

MY:あははははは

Yっていうのが面白い。映画にいって、その映画の批評をその後するみたいな、ね?ああいうノリだよね?

Mしかも、区切りは職業とかだよね。

Yそうそうそう、あの公務員さあ、みたいな。あのYKKさあ、ははははー

i:名前じゃないんですね?

M:そうそうそう、だって名前知らんもん。

Y:代名詞が職業なん(IN:あー)やっぱりそうなっとるみんな

Mあのさ、あたしの携帯、名前の時点でもうすでに職業も入っとるから、(一同:あははははは)なんとかかんとか、公務員、なんとかかんとか水道局

Y:え?なっとる(笑)。→Mさんの携帯を見て

i:ええ?ああでも大事ですよね、確かに。

Mでも絶対これ共通だと思うけど。どこかにメモはしとるよ絶対に。

i:ああー、でも職業、、、そうですねえ、

M:でも職業気にせんって若干おるよね?

Y:若干おる。

Mだってさ、こないだ会ったPちゃん?(Mさん、Yさんの共通の友人)もさあ、職業あんまり気にせんって言ってなかった?

Y:でもそれでもバイトしとる人はどうなんっていう

M:ああ、それはね、製造とかでも    

Y:そうそうそう、そんなんやったらPちゃんもそうじゃない?

 

Tさんとの会話>

i:そういうのってどうやって知り合ったんですか?仲間的な。

T:は、ほんと友達の友達でー、今いないからー、飲み会をー、開くからこない?とか。ていうのでー、集まって集まって集まってのー、グループ。

i:じゃあ、そこでもまた仲良くなってみたいな、

Tそう、でなんか飲み会するけど来ない?とか

i:いいネットワークですね。

T:そうですね。ほんとにネットワークですよ。ふふふふ。重要なネットワークなんで。

(中略)

i:なんか周りの人に「私婚活してるんだよ」って話をしたりしますか?

T:あー、仲のいい人には話したりしています。会社とかでも。

i:あ、会社でも話してるんですか?

T会社でも仲のいい先輩とかにはー、ちょっと飲み会のこととかー、こういう人がいたんですよって言う話をしてー、どう思います?ていう一応アドバイスとかー、一応結婚している人なんでー、どう思います?こういう人って?ていう相談とかはー

i:よくすごいー、婚活していることを隠している人とか

T:ああ、隠している人ー、ああー、そんな仲良くない人には言わないけどー、その先輩とかほんと仲いいからー、すごく話していますね。

 

<もみじの書き込み>

みなさんのコメントでも多くあった「1度のデートで結論を出すのは早すぎるのでは!?」という意見にも多いに頷き、そして反省しました。私の悪い癖の1つに結論を急ぎすぎるという面がある。人間関係なんて(特に恋愛がらみは)沢山のグレーな部分があるのが普通なのにそして、グレーな部分が沢山あるからこそ人間って面白いのに…私はいつも勝手に1人で白黒ハッキリさせてくなってしまう。(焦りからなのか?)私自身にだって沢山の欠点があり完璧な人間なんて居るわけがないって分かっている筈なのにたった1度の出会いで決断を下そうとしてしまっていた自分が居た。これは大変よろしくない!\(*`∧´)/という事で…私もみじは2度目のお誘いに応じようと思います (相手をしっかりと見極める為にもね)2007114日書き込み)

 

 

 Mさん、Yさんは友人であり、共に婚活をする仲間である。同じ飲み会に参加した後に女性だけ集まってその日の反省会を行う。その日の男性参加者の批評を行い、男性の価値付けを共に行うという女性コミュニティを持つ。そこで男性について語る際には、出会った男性を職業名で修飾している。男性の職業を気にしていることがうかがえる。職業名が女性たちにとって経済力を表すものとなり、ターゲット設定をお互いに語る際の指標となっている部分もあるのであろう。また、婚活では複数の男性に出会うため、その男性について修飾するものがないと印象に残りにくく、男性を区分するのに職業名は重要になっている。語りの中には、職業名を気にしない友人の話があるが、職業名以外にも自身のターゲット設定で重要視しているものの話もするようである。Tさんは、友達などの女性コミュニティで次の飲み会の受注を行い、会社では結婚に関するアドバイスをもらうコミュニティを持っている。もみじさんは他に婚活ブログを書くコミュニティを持ち、そこでもらうコメントから自己反省し今後の活動の糧としている。婚活に関して語る場は様々であるが、自身の婚活に対して相談したり、こんな人と出会ったというような体験談を話したりして他の人の意見を聞くことで内省する場となる。

婚活に関してオープンに語れる場としての女性コミュニティが実際に存在しており、そこでは様々なことが語られる。パーティーの後の反省会でそのパーティーの批評をしたり、出会った男性について語ったり、次の合コンの受注を行ったりということもあれば、自身の活動の相談をして反省し次回への活力にするといった場として女性コミュニティは女性たちにとって必要なものとなっているのではないだろうかと考える。