第六章 考察

 調査を通じて、サロンはコミュニティ施設としては珍しくスタッフはボランティアのみであるが、運営が上手くいっている印象を私は抱いている。財政的な面ではもちろん、ボランティアによる組織形態は、このサロンの運営を語るに欠かせない。第二章で扱った、かんかこかんとふれあいの家と同様、企画、準備段階から関わったメンバーが運営を支えている。スタッフ自身がボランティアとしての活動を楽しみ、地域とのつながりや自身の生活の充実感を得ており、活動が自分のためにプラスに働くことで、サロンへの愛着心を生んでいるように思える。「自分たちの施設として大切に育てていこうとする強い気持ち」(山岸1988)がやはり大切で、地域住民の自主的な活動がコミュニティ施設の運営を大きく支えていることを改めて感じた。

 また、サロンはカフェだけでなく、高齢者の活動(だんだん広場)・子どもの遊び場提供(さんさんキッズ)・地域の人の作品展示や教室の開催場所(ギャラリースペースの活用やパッチワーク教室)・観光やボランティアの情報発信といった、様々な機能を担っている。そして、それらの機能を成り立たせているのが、やはりボランティアでやっているスタッフなのである。カフェは月1回程度シフトに入る人でも準備に無理のない、簡単なメニューばかりであり、だんだん広場は、スタッフがサポーターという立場で活動の手助けをする。特にさんさんキッズでは、子育て支援というよりは、けがのないよう見守ったり、一緒に遊んであげたりする。保育士の資格がいるなど、専門的なことは求められておらず、遊び場提供の意味合いが大きいため、誰でも気軽にスタッフを務められる。このように、ボランティアでも差し支えないよう、無理なく果たせる機能に限定されており、スタッフに大きな負担がかかることは無い。多機能であるほど利用のしやすさ、利用者の増加にもつながり、サロンはオープンしてまだ2年目であるが、コミュニティ施設として地域に定着してきている。さんさんキッズで、あいさつというシンプルなこだわりではあるが、そういった交流の基本を大事にしている点も、「子どもから、お年寄りまでが共に暮らす、本来のまちの機能を取り戻す」(伊藤2005)というまちづくりにつながる。

 地域住民が作り上げたサロンを守っていくには、現状のようなボランティアによる組織形態で運営システムを維持することが重要であると私は考える。そこには、自身の生活にサロンでのボランティアを無理なく組み込み、活き活きと活動するボランティアがいて、一団となってサロンを支える姿がある。ボランティアの確保に、ボラセンからボランティアを取り込んだことも注目したいポイントである。まとまった人数を持った既存のボランティア組織を取り込むことで、無理のないシフトを実現できるからである。ボランティア同士のプライベートなつながりもあっただろうし、サロン開設後も、自分の知人を誘って、スタッフに取り込んでいくという話もあった。スタッフをやる前の人間関係がきっかけで、サロンでの活動を通してさらにその関係を広げていけることも、やりがいや生きがいにつながっているのだろう。

今回の調査を通じて、コミュニティ施設が地域住民の理解と協力の上に成り立ち、それを自分たちのものとして大切に守っていこうとするボランティアの姿を直接知ることができた。今後も、このようなコミュニティ施設が増加していくとすれば、このサロンは住民主体で生まれ、住民の手によって地域社会に定着させた成功事例として、一つの良いモデルとなるのではないだろうか。