第五章 分析

第一節 ボランティアスタッフの重要性

スタッフすべてボランティアであることが、このサロンの大きな特徴である。ボランティアスタッフはサロンの運営に欠かせない存在であり、その確保が大切である。スタッフに負担の無い楽しくできるような形での継続が一番大切であり、スタッフ同士や利用者とのコミュニケーションもボランティアの楽しみの一つになる。サロン開設の際には、ボラセンに登録しているメンバーを中心にスタッフを募集した。Dさんへのインタビューでは、知人を次々誘っていくような形でスタッフの数が増えていったことがわかり、サロンでの活動が、人間関係を広げていることが伺える。サロンでの活動のメリットに人との出会い

を挙げる人も多く、人とのつながりに広がりが持てることも、やりがいに繋がっていると言える。コミュニティとしての場だけでなく、ボランティアを楽しむ場所であることもサロンの役目であり、スタッフも大切な利用者といえる。また、ボランティアというスタッフがみな平等な立場に立てることが、スタッフ間の良好な関係やボランティアの充実感を生み出し、スムーズな運営に繋がっているように感じる。シフトに入る頻度は人それぞれといえど、それは自身の生活リズムに合わせ、負担にならない形で活動に参加している証拠であり、ボランティアの継続に繋がっている。スタッフは60代が中心ということで、仕事が終わり、余った時間をより充実したものにさせてくれるサロンでの活動が、生きがいになっている人も多いのではないかと思う。

そして、ボランティアだけで成り立っていることが大切であるというスタッフ間の共通の理解もこのサロンの運営上重要なことである。スタッフは皆ボランティアであり、給料をもらっているわけではない。スタッフは雇われているという感覚でも、サロンは誰かのものという感覚でもない。自分たちがサロンを支えている、みんなで作り上げるサロン、といった印象を受けた。第二章で記述した、コミュニティ施設は地域のものであり、地域住民の理解と協力が必要であるという山岸(1988)の考えは、サロンにも当てはまる。サロンは地域のボランティアで運営されており、スタッフの理解と協力の上で成り立っている。このことをスタッフが何かしらの形で意識し、それがサロンにとって重要であることを認識しているからこそ、ボランティアでの継続が上手くいっていると私は考える。

 

 

 

第二節 コミュニティカフェの機能

・様々な顔をもつカフェ

 第三章の第二節で、カフェの利用の仕方をいくつか載せた。飲食物を持ち込むことができたり、ちょっとした休憩から、小さな集まりのミーティングにも使えたり、比較的自由に利用できる。カフェは利用者次第で様々な顔を持ち合わせているのである。その利用の仕方は様々である。ガラス張りで中の様子が見え、入りやすいこともこのサロンの特徴であり、「○○さん(スタッフ)が見えたから」と言ってカフェに入ってくる利用者もいれば、逆に、前を通って行く知人が見え、「あ、××さんだ。」と言って外に声をかけにいくスタッフもいる。カフェは地域の人にとって開かれたスペースになっており、カフェを利用してもらうことが、サロン全体を知ってもらうきっかけになり、多機能であるほど利用者の増加にも繋がるのではないだろうか。

 

・コミュニケーション

 地域の人が「気軽に寄って顔を見せ合って話せる場所(Aさんのインタビューより)としての役割も果たしておりサロンにとってカフェの役割はとても大きい。いろんな人と顔を合わせられて、日常生活の出来事をみんなで共有できる情報交換の場としても機能している。まちなかの空洞化が進み、お年寄り夫婦の世帯や独居が増え、地域のコミュニティが弱くなる中、日頃から自然と立ち寄って飲食しながらおしゃべりができる空間を設けることは、地域のコミュニティ強化につながっていると言えるだろう。

 

 

 

第三節 世代間交流の実態

 Aさんは、子どもは子ども、老人は老人という別々のコミュニティではなく、三世代交流を大事にしたいと考えている。それに向けてまずはそれぞれのコミュニティの場の確保としてだんだん広場やさんさんキッズを開いている。サロンの利用者は、カフェのスタッフの「いらっしゃーい」という明るい声で出迎えられる。子どもが来れば、利用者やスタッフは必ず声をかけ、その場にいるみんなが会話の中に入っていくような雰囲気がある。AさんもCさんも、世代間交流のために、イベントを仕掛ける予定はないと言い、現状の自然発生的なふれあいが生まれていることが大切であると考えているようであった。

 さんさんキッズでは、あいさつを重視して、利用者である子どもたちに指導してきた。あいさつの習慣が身につくことで、スタッフや利用者である地域の大人たちと顔見知りになることができる。あいさつというシンプルなこだわりではあるが、そこで起こる交流を大事にしている。対象児童にこだわらないさんさんキッズが、家に閉じこもりがちな子どもたちの居場所に広がりを持たせている点も、地域住民との交流の機会を増やすことに繋がる。

しかし、サロンの利用者の多くが高齢者であり、今後は若い世代の利用者をいかに増やしていくかがポイントとなるのではないかと思う。新しい世代の人を巻き込むことで、サロンの賑わいに変化が生じるだろうし、そこでの交流がスタッフの世代交代の問題や、より地域に根差したサロンづくりにも関連していくのではないだろうか。