第一章 問題関心

 全国至るところで商店街が衰退し、まちなかの空洞化が嘆かれている(伊藤2005)。近年富山県内各地でも、このような状況を改善し商店街の賑わいを取り戻すため、商店街の空き店舗を利用したコミュニティ施設を開設するという取り組みが行われている。いずれも情報発信や地域住民等の交流の場として利用されている。

山岸(1988)によれば、コミュニティ施設は「役所のもの」というよりは「地域のもの」という視点に立つべきであるという。富山県氷見市のコミュニティ施設「まちなかサロンひみ」(以下サロン)は、県内でも珍しくボランティアスタッフのみで運営されており、スタッフ・利用者ともに近隣の住民であることから、自分たちでつくりあげていくコミュニティ施設という印象を受け関心をもった。三世代交流や子育て支援など地域福祉を担うコミュニティの拠点として、住民主体で準備、設立、維持し、地域コミュニティに根付いている。設立からわずか1年余りであるが、財政・運営ともに安定し、地域社会に定着したコミュニティ施設の成功事例といえるのではないかと考える。

本論文では、サロンに関わる人々へのインタビュー調査やサロン内での活動のフィールドワークを通して、そのプロセスと運営維持のシステムを明らかにすることを目的とし、他地域のコミュニティ施設の事例との比較も行いたい。