7章 結語

 

 ここまで断切金箔、断切金箔職人にスポットを当て、金沢箔業界について探ってきた。インタビューの中でのSさんの、もっと良い箔が打てるように日々研究を続けている、という語りや、TさんKさんの厳しい現状を危惧しながらも、もっと若者にとって魅力ある業界にしていかなければならない、という金沢箔業界の今後を考えた語りから、職人たちが、断切金箔職人として使命感を持ち日々仕事をしているという思いがとても伝わってきた。断切金箔の技術に伝統的な技術としての誇り、奥深さを感じているように思う。しかし、第6章第1節で述べた、金沢金箔伝統技術保存会の活動が、400年以上の歴史がある縁付金箔に限定されたように、断切金箔は戦後の技術開発によって誕生した新しい技術であるので、縁付金箔、他の伝統的工芸品に比べ歴史が浅い。断切金箔の技術を歴史の長さだけで見ると、伝統ある技術としては認識されていない。私が、本調査で行ったインタビューの職人の語りから感じた、伝統ある技術としての断切金箔と、歴史が浅く伝統ある技術として認識されていない断切金箔。断切金箔はこの2つの見方がある複雑なものなのではないだろうか。いずれにしても、今後金沢箔業界がどのような方向に進んでいくのか、予断を許さない状況にある。

 最後に、お忙しい中インタビューに快く応じてくださったインタビューイーの皆さんに、心より感謝いたします。