第五章 使用者へのインタビュー調査

 

第一節 マッチング事業からイベントを行った使用者

グランドプラザを使用して、過去にイベントを行ったことのある方にインタビュー調査を行った。まず、マッチング事業の事例の1つ目として紹介した、「FEEL THE EARTH 2007 とやまの木でインテリア」を2007年11月23日に中心となって行われた、富山大学芸術文化学部教授の丸谷さんにインタビュー調査を行った。丸谷さんは、2007年にはじめてグランドプラザでイベントを行ってから、2009年11月11日には「県民で使おう、とやまの木」というイベントをマッチング事業ではなくグランドプラザで行っている。また、グランドプラザだけでなく富山県内のその他の場所でも合計年2回ほどのイベントを行っているそうだ。調査日時は、2010年12月10日(金)。

 

イベントスペースとしてのグランドプラザについて(M:丸谷さん、H:濱中、以下同様)

M:あそこの良いところは、半屋外ですよね。やはり北陸で、天気のいい時はいいけどね、やっぱり晴天率は低いから。ああいう場所があれば、イベントの時期が広がりますよね。

H:じゃあ、やっぱりグランドプラザでイベントをやる魅力は天候に左右されないのが大きいですよね。

M:うん。あとはやっぱり場所がいい。場所っていうのは、大和があって、総曲輪通りがある。アクセスもどんどんよくなってるしね。公共交通機関がいいってことですね。

 

グランドプラザはガラス屋根になっており、全天候に対応できるイベントスペースであることから、気象条件の心配がなく、イベントを行えるということが大きなポイントであると丸谷さんは感じていることがわかる。また、グランドプラザがまちなかに位置し、アクセスが良いということも、イベントをやる上でのメリットとなっているようだ。

 

グランドプラザでイベントを行った成果について

M:イベントといっても、何かものを売って収入を得るっていうイベントじゃないから、即効性はないけど、じわじわっとしたもんかな。だけど、閉じこもって活動するよりも逆に、やっぱり知らしめないと。何か良いことやってても、知られてなければ影響は少ないでしょ。だから、予想がつかない。そのことの結果は。だから2007年にやって、2009年にもつながってるし、グランドプラザだけじゃなくて、いろんなところにつながっていく。そういうことって、連鎖反応みたい感じ。特に成果とか、期待してないけど、流れでやってる。2009年にやって、その時参加した1団体が先月グランドプラザでイベントやりました。今度は、自分たちだけでね。

H:というのは、一回グランドプラザでイベントをやってみて、良かったからですか。

M:そうでしょうね。なんか奉公的な役割もあるし、彼にとってもひとつ締めにもなるし。まぁ、グランドプラザのいいのは、とにかく広場。フォーラムってのは、もともと広場って意味だしね。

 

イベントを行うことによって直接的な成果をあげるというよりも、自身の活動の成果を世間に発表するというスタンスであることがわかる。また、使用者の自己満足のためだけのイベントというわけではなく、公共的なメッセージをもったイベントでもあったようだ。また、一度グランドプラザでイベントを行うことで、次のイベントを行うということに繋がっている。

 

イベントの様子について

H:イベント当日の客層はどうだったんですか。なんか、子供さんが多かったとか。

M:うん、そうだった。基本的には、人を上手く集められない場合には、大和で催しやってる時にするとか、あらかじめ人呼んでおくとかってあるけど、あの時はそうじゃなかった。ちょうど、日が2007年11月23日で日が良かった。もう11月で、だいぶ寒いから4時くらいには人減ってね。

H:イベントは確か5時まででしたよね

M:そう。けど、あの時は総曲輪にグランドプラザ立ち上がって、大和もオープンしてだから、それなりに人多かったよ。

H:やっぱり、総曲輪通りの横というか、つながってるじゃないですか、グランドプラザが。通りすがりの人とか、大和に来た人ってイベント見ていかれるんですか。

M:うん、ほぼそうじゃないかな。ほとんどそうでしょ。通りすがりなどね。

 

グランドプラザに隣接するFERIO(富山大和)への集客及び総曲輪地区の人通りが、グランドプラザのイベントの集客に直結しているということがわかる。グランドプラザがFERIOと駐車場の間に広場として位置し、かつ総曲通りとも道路でなくつながっているためFERIOへの客が、グランドプラザのイベントに目をとめるというケースが非常に多いと考えられる。

 

H:2007年のイベントの際は、どいうったものを展示したんでしょうか。

M:2007年も2009年も僕の学生の作品を並べてます。県産材を利用するもの。まず、授業では山の中に入って森林の伐採風景とか見て、県の職員を呼んで県の森林業の現状を講義してもらったりして。そこからデザインの設計を、椅子とかね。で、このイベントでフローリングの上で、結果を展示してっていう。

 

授業で循環型社会についての理解を得た上で、作品を制作し、その完成品をグランドプラザで展示するという、発表の場となっていたことがわかる。また、イベントの展示品を通して循環型社会というメッセージを発信するイベントになる。

 

マッチングの位置づけ

H:マッチング事業発のイベントだと、使用料は払わないですよね。

M:そうだね、その時は苦しい財政だったけど、スポンサーがついて、その中で事業計画を立ててやったよ。物を写す(コピー)とかはお金かかる。本来なら、もっとかかるとこをマッチングで補ったので2009年にまたやれた。だからマッチングであるけど、その後のイベントの布石のようなね(位置付けになる)。 

 

コピー代などの事務費用等は、自己負担で行ったようだ。しかし、マッチング事業ではスポンサーがいるため、本来ならば苦しかった金銭面の問題を補てんすることができた。そして、マッチング事業発ではじめにイベントを行ったことで、さらなるグランドプラザでのイベントの実施に繋がるきっかけとなったことがわかる。

 

使用したグランドプラザの設備について

H:グランドプラザの設備で役だった設備はありましたか。

M:モバイルグリーンだね。2007年の時は、クリスマスツリーになってた。それも、プランに入れてた。あと、スクリーンとマイクロフォン活用して、司会が積み木大会とかやってる時に「○○チーム」って実況したり、盛り上げた。僕がインタビュアーになって、いろんな説明してもらったり。

H:大型ビジョンは。

M:大型ビジョンには、5分くらいのプログラム映像流して、視覚的に分かりやすく。

 

モバイルグリーンを使用することで、丸谷さんのイベントのテーマのひとつであった木

というものと非常にマッチしていたように思える。グランドプラザは、無機質になりがち

だが、グリーンがあることでナチュラル感が増すような気がする。また、大型ビジョンに

映像を流しておくことで、通りすがりの人でも今グランドプラザで何をやっているのかが

視覚的に分かりやすく、集客につながる要素として機能している。また、マイクパフォー

マンスを行うことによって、グランドプラザにさらに活気が生まれるという効果も考えら

れる。

 

まちなかでのイベント

M:どんどんどんどん街がぜい肉を取って、あっためようってこと。マッチングも役だってる。やっぱりお祭りとかイベントが行われてるって楽しいじゃない。雰囲気が明るいとか。昔だったら、もっと大道芸人がいたりとか、楽しめるショッピングとか食事とは別でね。そういう楽しみがある街っていいよね。だからもっともっと街に大道芸人とかストリートライブとか、あればいいのに。

 

中心市街地の整備が整ったまちなかで、イベントを行うことでまちなかを盛り上げることが重要としている。イベントや大道芸、ストリートライブなどをまちなかで行うことによって、ショッピングや食事だけでなく楽しめる要素をまちなかに加えるべきと感じているようだ。

 

第二節 マッチング事業を経由しないイベント使用者

次に、マッチング事業ではなくグランドプラザを使用してイベントを行った大澤さんにインタビュー調査を行った。大澤さんは、富山市の市民プラザ1階に店を構える「CHILLING STYLE」という北欧インテリア雑貨屋のオーナーである。「CHILLING STYLE」の「CHILLING」は、英単語の「cool」に似た意味を持ち、「クールでかっこいい」、「冷酷」、「くつろぐ」といった意味があるそうだ。また、「チリン」という音の響きがまるで風鈴が鳴ったようで気に入っているそうだ。この「CHILLING STYLE」という店名は、「くつろぐ空間を知的でかっこよく」というメッセージが込められている。畳などの日本文化のライフスタイルに、フィンランドを中心とした北欧の生活様式を組み合せることで、北陸の特に富山県民にフィンランドのライフスタイルを提案するというコンセプトのもと、お店を展開しているそうだ。そんな大澤さんが中心となって、北欧を代表するテーブルウェアブランド「iittala」を100パーセント楽しむためのイベントである「iittalaカフェ」を2010年6月4日(金)から21日(月)に開催した。この「iittalaカフェ」は、iittalaの食器を実際に使ってみることで、iittala本来の魅力を知ってもらうためのプロジェクトである。富山市南田町にあるトラットリア&ベーグルカフェ「CIBO」に協力してもらいランチ、ディナーでイタリアンをフィンランド風にアレンジした食事を、そして週末のカフェタイムにはスイーツとお茶をiittalaで楽しむというものである。そのオープニングイベントとして2010年6月4日にグランドプラザで半面の専用使用で「iittalaカフェ オープニングパーティー」を行った。調査日時は、2010年12月3日(金)。

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イベントスペースとしてのグランドプラザについて(O:大澤さん、H:濱中、以下同様)

O:(グランドプラザの)オープン当初からワゴンショップを出してて。やっぱりグランドプラザって、市内では外せない場所じゃないですか。

H:というのは、グランドプラザはイベントの集客力のある場所って認識でいいですか。

O:そうですね。市民プラザからグランドプラザ近いから、お金を出してまでやる意味あるのかって普通思いますよね。自分の店でパーティーやっても、たまたまお店にいたお客さんが参加するかもしれないし。でも結局自分の店の外出てないってことでしょう。だから、使用料プラス努力って感じかな。せっかくイベントするんだから、自分の店じゃないとこで、人集める努力をしようってことかな。そのために来てくれるってことだから、ある種ハードルは高いですよ。

 

大澤さんは、グランドプラザの開所した2007年から定期的に行為使用で「CHILLING STYLE」のワゴンショップをグランドプラザに出店していた。その経験もあってか、グランドプラザを集客力のあるイベントスペースと認識してきたようである。富山市でイベントを行う際は、外せない場所であると認識されている。また、使用料を払ってまで大澤さん自身の店舗で行わず、グランドプラザでイベントを行った理由としては、ただ単にパーティーを行うといったわけではなく、努力してイベント参加者を集めようという、イベントへの意気込みや情熱が伝わってきた。

 

グランドプラザでイベントを行った成果について

O:成果は、売れれば良しって考えではないですから。こういうワークショップは思想を広める目的なんです。だからお金の匂いはあまりさせないようにしました。僕は啓蒙だと思ってます。別に50万払って50万取り戻そうってわけじゃないから。

 

O:全体的には赤字だったけど、グランドプラザって場所でやって参加者の喜ぶ顔が見れたってのが良かった。

H:じゃあ赤字ということですけど、イベントは満足いく結果だったと思っておられる。

O:そうですね。良かったです。まぁあの時は、お金の問題は、こっちの管理ミスとかいろいろあったんでね。

 

大澤さんにとって自身の店舗以外で行うイベントやワークショップの目的は、ただ単に

商品を売るだけのためではない。「CHILLING STYLE」のコンセプトを少しで

も多くの人に理解してもらいたいという思いで行っていることがわかる。グランドプラザ

の使用料やパーティーに準備した物品等の全経費を計算したところ赤字だったそうだが、

イベント自体の満足度は高かったようだ。

 

イベントの様子について

O:イベント自体は19時から21時半まで。ちょっとずれ込んで22時までだったかな。でその後急いで片付けて。

H:集客はどうでしたか。

O:80人強くらいだったかな。

H:パーティーってどんな感じなんですか。

O:紅茶とシナモンロールとCIBOさんのケータリングとあとスパークリングも用意して。机と椅子には店のカバー掛けたり、お花飾ったりしてね。

H:参加費は。

O:えーっと確か1500円くらいにしてた。

H:当日の客層とかって。

O:知人とカップルとグランドプラザ関係者とかかな。

H:そのカップルっていうのは、金曜の夜だし通りすがりのカップルもいたんでしょうか。

O:うん、通りすがりで何してんだろって来て参加したカップルいたよ

 

食事やお茶、スイーツで参加者に振る舞うパーティー形式のイベントとなったそうだ。使用者の知人やグランドプラザの関係者だけでなく、当日にグランドプラザをたまたま訪れたことで目に留まり、飛び入りで参加した通りすがりの参加者もみられた。

 

使用したグランドプラザの設備について

O:まず、大型ビジョン。あの時はCGを駆使した映像を流してました。ちゃんと業者にお願いしてかっこよく作ってもらって。

H:じゃあ、通りすがりの人とかに大型ビジョンが目に留まりやすかったとか。

O:そうですね、効果あったと思う。あとステージと机と椅子。

H:ステージは昇降式で上げてました。

O:うん。それで司会者を置いて、僕も挨拶で上がったりしました。

 

大型ビジョンに映像を流すことによって、道路でなく開かれた空間になっているグランドプラザだからこそ、通りすがりの人にも目に留まりやすく効果的であった。