第四章 イベントマッチング事業

グランドプラザ運営事務所では、グランドプラザ運営事務所自主事業として「マッチング事業」というものを行っている。マッチング事業とは、イベント資金がなく、スポンサーの仕組みなどの知識が皆無だが、イベントのアイディアは持っている「市民」と、グランドプラザを使ってPRをしたい、富山を盛り上げるための社会貢献事業をしたい、と考えている「企業」を「グランドプラザ運営事務所」が仲介役として紹介し、結びつけ、事業を実現する仕組みである。2007年11月に第1回マッチング事業がグランドプラザで開催され、応募した7組が約30社の協賛企業の人々の前で、独自のイベント企画案をプレゼンテーションした。現在までに15件のマッチングが成立し、21年10月までに8件の事業が実施済み。市では年に1〜2回の募集を予定している。

この事業の目的としては、富山市の見解では、富山市の再開発事業によって富山市内では公共交通機関や再開発ビル、グランドプラザ、まちなか居住推進のための大型分譲マンションなどの多くのハード面での整備が進み、その結果きれいな街になったが、街の賑わいにはあまりつながっていなかったという印象であった。そのため、グランドプラザでのイベントのマッチング事業のような、ハードをいかに使いこなすかといったソフト事業も重要であるとしている。また、行政まかせではなく、市民がもっと意欲的に参加していくことが、賑わいを継続させるためにも必要とされており、民間や市民レベルでの継続した積極的な参画によって、賑わいを創造する知恵と行動力が求められている。

 

マッチングまでの流れ

イベントの企画から実施までは、以下のような流れで行われる。
(例:2009年11日〜2010年3月31日までに実施される事業 )
 2008年7月10日(木)    市民企画募集開始
                       
      協賛企業(随時募集)
                       
      HP・大型映像装置で告知
    8月20日(木)         市民企画募集締め切り
    9月下旬                 1次審査(書類審査)
    10月初旬               2次審査(公開審査)グランドプラザで審査会を開  催
                     
  市民企画案プレゼンテーション、マッチング審査、結果発表
2009年1月〜2010年3月事業実施

これまでにマッチング事業によって実施されたイベントは8件あり、グランドプラザ運営事務所のスタッフの山下裕子さんから資料を頂き、お話をうかがった。

1.  FEEL THE EARTH 2007 とやまの木でインテリア

日時2007.11.23(日)10時〜17時

社団法人富山県産業廃棄物協会青年部10周年記念事業として実施された。10周年を迎えるにあたり、なにかイベントを行いたいがどうすればよいかと悩んだ社団法人富山県産業廃棄物協会が、グランドプラザ運営事務所に相談をもちかけ、マッチングに参加したのがきっかけになった。そこで以前から、材木を用いた作品制作にあったっていた富山大芸術文化学部の研究室も加わり、富山県も協賛したかたちになった。富山県産の材木を利用して循環型社会を目指すというテーマで、官(富山県農林水産部森林政策課)・民(社団法人富山県産業廃棄物協会)・学(富山大学芸術文化学部)が一体となってイベントを実施した。富山大学芸術文化学部芸術文化学科のゼミの学生が作品を制作し展示したほか、会場には杉の木・家具・燃料チップまで循環社会を実感する展示が展開された。富山大学芸術文化学部の教授の丸谷芳正さんによると、グランドプラザの床にはフローリングを敷いて、積み木大会などを行った。また、学生は授業で山の中に入って森林の伐採風景を観察したり、富山県職員を講師に招き、県の森林業の現状についての講義を受けるなど、森林についての理解を深めていた。その上で、イスなどのデザイン設計を行い、完成した作品をグランドプラザで展示した。当日は、子供を中心に家族連れで賑わっていた。

  

 

2.  5 Minutes Creation Now

日時2008.2.3(日)10時〜16時

富山の表現者たちによる5分間のステージイベント。富山市の若者アーティストを中心としたとやま音創り計画実行委員会の発案による。可動式舞台を使用し、大道芸や楽器演奏、一発芸などが披露され賑やかに行われたそう。

 

 

3.  グラプラバレンタインwith ラブゲート

日時2008.2.6(水)〜14(木)

長さ20メートルの花のトンネルを制作。待ち合わせ場や遊び場として機能した。このトンネルを3周まわると幸せになれるというちょっとした都市伝説がうまれた。FERIOの入口につながっていくように、グランドプラザに斜めに設置されている。また、トンネルの横にベンチも設置されている。屋外であるので本物の花と木を使用でき、且雨や雪の心配のいらない屋根があるグランドプラザであるから、この2月という時期に9日間にわたっての展示が可能だったといえる。

 

4.  親子で一緒にぼくらの未来都市をつくろう!

日時2008.5.5(月・祝日)14時30分〜17時30分

富山市のアートスペースプロジェクトによる発案で、「こどもの日は親子で街中で遊ぼう!」をテーマにした。70組の親子が参加した。カラフルな段ボールで家や店、ビルを制作した。グランドプラザの床全面には段ボールが敷かれ、その上に履物を脱いで上がっている。まるで室内のように利用されていた。

 

5.  Eco RINK エコリンク 

日時2008.12.6(土)〜28(日) 10時〜20時

山下裕子さんによると、射水市の元アナウンサー石川愛恵さんの企画案であった「グランドプラザにスケートリンク」がもとになっている。スケートリンクはコスト面で重大な問題が生じ一度は企画が断念された。しかし、富山市長の目に留まり、市長の強い要望のもと富山県の某優良企業に市長自ら協賛を依頼し、コスト面の問題がクリアされた。その後、株式会社まちづくりとやまに企画を委託するかたちになった。

高額かつメンテナンスが大変な氷に代わるスケートリンクができないものかと、株式会社まちづくりとやまの佐伯哲弥さんは国内外のスケートについていろいろと調べた結果、樹脂パネルに出会った。樹脂パネルには、アメリカ産とヨーロッパ産のものの二種類があるが、株式会社まちづくりとやまでは、アメリカ産樹脂パネルを使用することにした。こうして、エコリンクが誕生した。樹脂パネルを使用したスケートリンクは日本初の試みであった。日本では前例がなかったため、日本各地から偵察部隊が訪れた。現在では、名古屋や表参道ヒルズなどでも、グランドプラザを参考にした樹脂パネルを使用したリンクがオープンしたそうだ。また、リンクの頭上にはイルミネーションツリーを設置した。エコリンクとともに、富山のイルミネーションスポットとしても定着してきたそうだ。  

グランドプラザ運営事務所が発表した統計によれば、入場者数は18000人にのぼったそうだ。2008年度以降毎年開催されている。エコリンクはグランドプラザのイベントを代表とするイベントとして浸透したといえるのでは。また、佐伯さん曰く、グランドプラザにはガラス屋根が付いた全天候型のイベントスペースであるとしても、冬は積雪や木枯らしなど風通しが良く、冬にイベントはし辛いという思いもあったそうだ。しかし、冬ならではのイベントがマッチング事業発で生まれ、現在グランドプラザの冬の風物詩としてエコリンクが開催されていることをとても誇りに思っているそうだ。

 

6.まちなかマンダラ〜DK ライブ in グランドプラザ〜

日時2009.1.10(土)日没〜21時

長谷川章氏の「DKデジタル掛け軸」を実施。グランドプラザのガラス屋根の天井や隣接するFERIOやグランドパーキングCUBYにあるショップの壁面一体に映し出された。極彩色でグランドプラザ一体が満たされ、非日常的な空間が創造された。通行人も足を止め、見入っていた。富山市の株式会社KNB−eによる発案。デジタル掛け軸は、複数台のプロジェクターを使って、建物にCG映像を映し出し、空間全体が万華鏡のようになって幻想的な世界が浮かび上がる。色と光がゆっくりと動いていき、外側から見ても、映像の中にじっと立っていても、楽しめる。長谷川章氏はこれまでに大阪、熊本、名古屋城やギリシャ・アクロポリス、国技館、伊勢神宮などの建造物に投影を行ってきた。グランドプラザのような空間への投影は初めての試みだったという。このグランドプラザでのデジタル掛け軸が、舞台を空間から白銀に変え、第1回とやまスノービアード立山山麓『雪の祭典』にて2009年2月7日〜14日に開催された。らいちょうバレースキー場でも、デジタル掛け軸が行われたそうで、富山県でのデジタル掛け軸の皮切りにグランドプラザがなったといえる。

しかし、投影するものが白色であればあるほど、掛け軸の彩がはっきりと映り綺麗だと思うが、グランドプラザのショップの壁面やガラス屋根などをみると白いところが少ないので、投影場所としてはいまいちだったかもしれないという関係者の声もあったそうだ。
  

7グラプラバレンタイン with Love heart バレンタインディ愛のハンドマッサージ

日時2009.2.7(土)10時〜16時

富山ビューティーアカデミーの学生がハンドマッサージを実施。約100名の男性が参加。学生は貴重な実社会体験の場となり、参加者は女子学生からマッサージをうけ、大変微笑ましくなっていたようだ。バレンタインディにちなんで、チョコレートオイルを使用したマッサージを行ったそうだ。

 

8ぼくらのもりの海、まちの海

日時2009.9.17(木)〜10.19(月)

砺波市の北岡哲さんの「ブリキの水族館」というアイディアを原案にし、富山市ファミリーパークとグランドプラザで共同開催したイベント。後援についた富山県内のリサイクルを扱う企業やアルミ缶飲料を生産する企業などの協力で集めた、一万個のアルミ缶を使用した。普段は捨ててしまう缶をリユースしたかたちになった。その缶を子供たちがつなぎ合わせて作成した、ふしぎな生き物をグランドプラザの上空に吊るし、下から見ると魚が泳いでいるように見せた。FERIOとグランドパーキングCUBYを繋ぐ連絡橋からは間近で展示が鑑賞できた。また、空き缶を使用することで環境を考える機会を提供した。グランドプラザのガラス屋根に吊るすという展示方法になっており、連絡橋からは間近に展示物を鑑賞することができる。また、下から見上げることもできる。グランドプラザのガラス屋根からは青空が見えるため、展示物が空を泳いでいるかのようである。