第二章 先行研究

 先行研究として、栗原(1986)に記されている神奈川県平塚市のまちなか再開発事業である「サンライズひらつか21」を取りあげる。神奈川県平塚市では、昭和59年3月に「サンライズひらつか21」と銘打って、市民のコミュニティの場として、ゆとりと、うるおいある個性豊かな中心街で、真に物心両面にわたる充実感を味わうことができる、文化的かつ快適な魅力ある都市空間作りを目的とした取り組みがなされた。街に来た人はみんな主役であり、主役が満足する複合化ステージ作りを行っていきたいという思いから、「サンライズひらつか21の基本的目標の三指針」が設定された。第一に「生活者が満足する商品・サービスのステージづくり」、第二に「市民が誇りに感じる快適な都市空間のステージづくり」、第三に「文化と創造のステージづくり」である。特に、本論文のテーマであるイベントに関連した項目としては、第三の「文化と創造とステージづくり」が該当する。平塚市では、「文化と創造のステージづくり」のための取り組みとして、大型ビルの建設や文化イベントの実施などを行ってきた。具体的には、中心街にある「ひらつか市民プラザ」において、年間50行事ほどのイベントを実施した。また、歩行者空間を確保し、歩行者と公共交通との共存を図ることによる魅力向上を目的とした、中心街の街路をすべてモール化させるための整備が行われた。そして、モール全体をステージとして捉え、中心街全体でイベントを行うようにした。今後平塚市は、「サンライズひらつか21」の効果をより一層上げていくには、大型駐車場の増加の他、イベントの恒常化が重要になるとしており、イベントは中心街の活性化において必要な要因であると考え、継続したイベントの実施を課題に挙げている。

今回、中心商店街の都市空間づくりにおけるイベントの位置づけを探るにあたり、イベントが重要であるとする文献は多く見られたが、商店街が人を呼ぶ、販促目的とは切り離したかたちのイベントを行っている事例の先行研究は極めて少なかった。数少ない先行研究から取りあげたこの平塚市の事例ではあるが、イベントは重要であるとしながらも、具体的にどういったイベントが実施されたのかという実態が分からない。また、イベントがどのようにしてまちづくりに結び付いていくのかもはっきりしないように思える。私は、イベントの実例を詳しくみるとともに、どのような人が、どういった意識のもとイベントを実施したのかに迫ることで、イベントとまちづくりの繋がりを示すことができると考えている。本論文では、グランドプラザと個々のイベントとの相互関係、また結果としてどのようなイベントの魅力に繋がるのか、富山市の事例で踏み込みたい。