第1章 序論

 

第1節 問題関心

近年、幼い子どもが被害者となる事件が後を絶たない。このような悲しい事件を防ごうと、児童の登下校の時間帯に通学路でパトロール活動をしている人々がいる。これが「子ども見守り隊」である。富山県によると、県内の隊数は200511月に286隊だったが、奈良、栃木、広島で登下校中の児童が殺害される事件が相次いだことなどが原因で、2006年3月には423隊と急増。その後も2007年1月に455隊、2008年1月に470隊と増加傾向が続いている。一方で、県内で発生した不審な声掛けは2004年の100件から2009年の59件と大きく減少しており、地域の監視の目で子どもの安全・安心を守る取り組みは効果を上げている。

 本論文では、「定塚校区地域パトロール隊」と「B町内会防犯パトロール隊」の2つの子ども見守り隊を取り上げる。これらの見守り隊は富山県で成功裏に発足された2つの事例であるが、隊が結成されてから約5年が経ち、活動が曲がり角にきている様子も見られる。「隊結成」という一つの目標を達成するまでにどのような経過をたどったのかを明らかにするとともに、見守り隊の実際の活動に触れていく中で、見えてきた効果と課題について言及したい。

 

 

第2節 調査方法

 本論文では「活動が活発な隊」として名前が挙がった「定塚校区地域パトロール隊」と、「B町内会防犯パトロール隊」の2つの見守り隊を事例として取り上げる。

定塚校区地域パトロール隊連絡会会長である室田正章さんとB町内会防犯パトロール隊隊長のYTさんにそれぞれ3度のインタビューを実施。また、B町内会防犯パトロール隊で隊長の経験があるMHさんにもインタビューを実施している。それに加えて、2010年9月から11月中旬までの約2カ月半の間で数日フィールドワークを実施。2つの見守り隊で計8名(男性1名、女性7名)の隊員に3〜5分程度のインタビューを実施した。

また、富山県教育委員会スポーツ・保健課にもインタビューを実施している。