第五章 避妊去勢に関する問題

 動物の数を減らす手段の2つ目としてその根本を断つ避妊去勢がある。動物の尊い動物の命を無駄に殺さないためにも「一代限り」の命が望まれており、そのためには避妊去勢手術を行わせることが重要になってくる。避妊去勢手術を行うことで飼い犬や飼い猫、さらには野良の自然繁殖を抑えることが可能となる。富山県も犬猫の避妊去勢手術を推奨し、譲渡会に来る人に必ず手術を行うこと、避妊去勢の大切さを説いているが、手術をすることによってペットに傷がつくことを可哀そうだと感じ手術を踏み止まっている飼い主もいる。だが、動物愛護団体の関係者は手術をしないままペットを飼っていくことは、そもそも間違いだと感じ、避妊去勢の必要性をわかってもらうまで説明しますと語る。徐々に、手術の重要性は近年浸透してきているが、未だ理解を得ない人々と動物愛護活動に携わる人々との間で意見の食い違いが生じており、その齟齬を失くし避妊去勢手術を浸透させることで、犬猫の繁殖が一代で終わるように飼ってくれることを目指している。

 また、避妊去勢の手術の費用は一般的に2万円から5万円ほどかかると言われており、多頭飼いなどの理由で金銭面的に避妊去勢手術に踏み切れない飼い主もいる。こういった費用を少しでも軽減し、避妊去勢手術を普及させるため県や、北日本動物福祉協会は支援を行っている。

県の場合、譲渡会の後、飼い主に講習を行い、その後誓約書と共に県内の動物病院で使える1000円分の診察補助券を渡している。また、講習中にもいかに避妊去勢が大切かを説き、必ず行うように促しているので、譲渡会で犬猫を飼う事が決まった飼い主は必ず手術を済ませる。このように引き取り直後に手術を促すことで飼い主としての責任を感じさせ、さらに診察補助券を渡し金銭的に補助することで高い浸透を見せている。これにより、譲渡会の利用は自然繁殖で増えた犬猫の更なる繁殖が食い止められることに繋がる。だが、避妊去勢の問題がより顕著な猫については富山県動物管理センターではどうすることもできないのが現実である。最も避妊去勢を必要とする野良猫においては、むやみに捕獲してはならないという法の制限(5) があり手出しできない状態にあるのだ。そのため、県や市は野良猫を勝手に捕まえることが出来ないでいる。

これに対して、北日本動物福祉協会は平成19年から格安で猫の不妊手術キャンペーンを行っている。飼い猫だけでなく、近所や家に住み着いた野良猫をもその対象にしている。毎回多くの子猫が連れてこられ、ここでも「一代限り」の命を目指している。

このように、行政や動物愛護団体の活動の持続により避妊去勢の重要性は周知されるようになり、手術率も年々向上して、それぞれの団体ができることを行っていくことでその効果は出てきている。今後ペットを家族として迎え入れる家庭が増えていくのなら望まれない命の誕生を防ぐためにも、避妊去勢手術は必須事項になってくるだろう。しかし、近年これほど浸透してきた避妊去勢手術も、全ての犬や猫に対して100%浸透することは難しいというのが現実である。譲渡会では、少し目を離した隙に外に出た飼い猫がいつの間にか妊娠してきたという話も後を絶たない。また、猫に関しては年に3回の繁殖期が訪れ、一度に57匹の子供を産むため、野良猫の場合、その猫すべてに対して手術を施すことは難しく、繁殖数に対して人手も費用も足りない。また、上記した様に野良猫をむやみに捕まえてはいけないという法律がある。このように避妊去勢手術の重要性は周知されつつある上に、昔に比べその効果は見えてきているが、飼い主の意識、野良の存在、法の制限による理由から100%の浸透には限界があるのだ。