第三章 富山県の現状

 平成17年に動物愛護管理法の一部改正が公布され、平成18年に国指針が施行された。それに則り富山県でも平成20年に富山県動物愛護管理推進計画を掲げ、行政や民間団体、地域社会が協力して「人と動物とが共生する社会」の実現に向けた基本方針や中長的目標を明確化した。また、富山県は全国に先駆けた成犬譲渡にも取り組みを見せている。このように動物愛護に対して積極的姿勢を見せる富山県の行政と動物愛護団体のそれぞれの団体について本章では述べていくことにする。

 

 第一節 北日本動物福祉協会

北日本動物福祉協会は平成3年に発足した。活動目的は、「殺処分される動物を減らしていく」というもので、このような犬猫を産ませない、捨てさせないように少なくしていくのを目的に活動している。また、行政と協働して動物施策の見直し、改善を求め、そして動物を助けようとする人々の拠り所として情報発信、励ましができる団体を目指している。資金源は会員による会費3000円(発足当初は2000円)と寄付によって賄われている。会員はおよそ500名ほどである。実際にさまざまな活動をしているのは25名ほどで、その他の会員は会費の支援などを主にしている。一日にかかってくる電話は少ない日でも5件以上あり、何かイベントを控えている場合は30件程かかってくる日もある。

北日本動物福祉協会は、3万枚のチラシを製作し配布をする活動、イベント行事を行い、動物愛護を呼び掛けている。平成9年には富山県小矢部市にあったブルー十字動物医薬品製造会社の倒産に伴い、そこの施設で扱われていた犬猫440頭を引き取り、全国を回って里親探しをした実績を持つ。里親探しは新聞広告で主に募集し1年に60頭、特別な依頼が入るときはさらに増える。19年度は多頭飼育の家庭から42頭引き取ったこともあり、120頭ほど里子に出している。これらの里親会は不定期ではあるが日曜日に開催され、事前の申し出があった人のみ「お見合い」をすることとなる。また、平成19年からは猫の不妊手術キャンペーンを行い、格安で飼い猫・野良猫の手術を請け負っている。キャンペーンの甲斐あってかここ数年では野良猫の数もだいぶ減り、キャンペーンの効果を実感しているようだ。

会員の方はその役割としては譲渡会の最中に参加者に対して積極的に話しかけていき、性別や色など希望を聞いたり、詳しい飼い方や実際に抱っこさせてみるなど、より近い形で引き合わせの努力を自然としている。しかし、会員は新たな貰い手になることに対して無理強いは絶対にしないとしている。無理強いをしたところで、その後貰われた猫や犬が幸せに暮らしていけるかどうかわからないからである。北日本動物福祉協会は、少しでも多くの猫を里親に出すことをだけを目標にしているのではなく、そのことも含めて里親に出された動物全匹が正しく幸せに飼われることを目的に働きかけている、といっても良い。

 

第二節 富山県動物管理センター

富山県は動物愛護に関する部署として厚生部生活衛生課がある。富山県動物管理センターは厚生部生活衛生課と同じ課にあたり富山県の運営となっているが、分室として生活衛生課内の他の係とは異なる所属として設置されている。業務内容は、犬猫の収容、譲渡、訓練、殺処分などである。富山県動物管理センターでは現在、木曜日に「子犬・子猫の譲渡会」が行われているが、これは昭和58年の動物愛護週間に子犬・子猫譲渡のフェスティバルが催されたのが最初であり、平成15年に毎週木曜日に行われるようになって、現在に至っている。譲渡会で扱われる子犬・子猫は、飼い主によって譲渡依頼がされたものだけであり、センターに収容された動物が譲渡会に出されることはない。譲渡会は以下のような流れで行われている。

 

8:3011:00 譲りたい子犬・子猫の搬入(事前に連絡のあるもののみ受け付け)

11:0011:30譲渡会開催の有無に関する問い合わせ受付
(
持ち込みがない場合開催されない事もある)

13:00〜   譲渡会開始、後に講習会

15:00    譲渡会終了(残った子犬・子猫は持ち帰ってもらう)

(子犬子猫の譲渡会http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1207/kj00005610.html参照)

 

譲渡依頼される動物の割合は、年間を通して見ると子犬が1に対して子猫が15とその差は大きく、子犬はほぼ100%譲渡が成立する一方で、子猫はなかなか貰い手が見つからないのが現状である。貰い手が見つからなかった動物は飼い主が持ち帰る決まりとなっている。飼い主が処分などを目的に持ち込んだ場合は引き取りが行われる。これまで、富山県動物管理センターや厚生センター、保健所(3)では無料で犬猫の引き取りを行っていたが、平成21年の101日、37都道府県目として犬猫の引き取り有料化へと踏み切った。手数料は犬猫1匹につき生後90日以内なら400円、91日以上なら2千円となる。
 また、富山県動物管理センターでは「わんわんパートナー」(成犬譲渡事業)(4)も行われており、対象となる犬は、飼い主がやむを得ない事情で飼えなくなり引き取りした犬や保護した犬の中から、飼養に適する犬である。その中でも譲渡可能となるものは、選定基準に合格した犬のみで、譲渡犬として富山県庁のホームページで紹介されることになる。
 富山県動物管理センターでは殺処分も行っている。処分方法は炭酸ガスによる安楽死で、金曜日に行い、死体の焼却後は、ごみ焼却所へ灰の処理を依頼し、処分は完了となる。
 この他に富山県動物管理センターでは、避妊去勢の啓発活動も行っている。主に避妊去勢を飼い主に勧めるよう獣医師等への指導や、県の催すフェスティバルなどで必要性を訴えたりといった口頭的な活動と、国から降ろされる動物愛護の関連資料の配布などの広告的な活動がある。

 殺処分と避妊去勢に関する問題は、第四章及び第五章で述べる。