第4章 Kapoの今後の展望

1120日に山越ビルでコアスタッフによる全体ミーティングが行われた。そこでは、アートプラットホーム会期後、Kapoは何を目指し、どういったかたちで活動していくべきなのかということが話し合われた。

 会期中は美術館から活動費がおりており、12月末までは家賃も改修費も自分たちで払う必要はない。しかし会期中の会計は、赤字となるだろうということだった。アンデパンダン展やカフェなど、美術館の力を借りていないKapoの事業それぞれは黒字を達成できているのだが、そこでのプラス分が、パンフレットの印刷代などのマイナス分をまかないきれなかった。「現実的に続けていけるのだろうか・・・」不安げな空気がミーティングに漂った。

 1月以降の運営について具体的な案が出された。キュレーターの鷲田からは運営にかかる固定費(家賃・人件費など)をできるだけ小さくし、会費制にして、会費で固定費をすべてまかなえるようにする案が出された。そうすれば赤字になる心配もなく、無理なく続けられるだろうと言われた。ただし固定費を小さくするため、2階はやめ、1階だけを借りること、そして、常時開けることもやめ、週末やイベント開催時のみ開けることが条件として提示された。

 鷲田の案は、スケールは小さいが、確実に活動を続けていける、地に足の着いた運営方法に思えた。しかし、この案には制作活動をするスタッフを中心に、反対意見が上がった。2階をなくすのはもったいないという意見であった。

 金沢で活動する若手作家にとって、月2万円でこれだけ広いスペースを借りられることは、とても貴重に捉えられていた。山越ビルは中心地からも美大からも近く、立地条件もいい。金沢にはギャラリーの数も少ないため、安価で借りられる広い展示スペースは希少価値が高いのだ。

 だが、2階で展示をするとなると、2階の家賃に加え、常駐する人が必要となる。会期中Kapo10001700(カフェは12:00〜)で営業しているが、店番に入るスタッフが不足している。とくに平日入れるスタッフがほとんどいない状態で、それが活動を続けられるかどうかを決める、一つの要となっている。2階を貸して展示会をする場合、週末のみの開催では、借りたがる作家は少ないだろうと、作家のスタッフたちは言う。

 その日のミーティングでは、会期後の活動について、決定的な結論は出なかった。しかし、12月から、2階を共同アトリエとして開放する話がすすみ、月1万円で貸し出すことになった。年明けすぐの時点で、既に5つのグループや個人のアトリエ入居があり、少なくとも5万円の収入を見込めることとなった。山越ビルと美術館との契約は12月までであるが、山越との交渉の結果、Kapoが新たに1月から3月まで借りられることになった。家賃に関しても、ご厚意に授かり、引き続き月4万円で1階と2階を借りられることになったので、共同アトリエの収入でまかなえる算段となった。

 2009年に入っていも、営業時間や人材に関してなど、解決していかなければならない問題は残っていた。しかし、Kapoの活動は、会期後も、そのネットワークを広げながら、着実に続いている。2009年1月には、Kapoの有志らによる展示イベントが3日間限定で開催され、初日にはオープニングパーティも行われた。地元新聞でも告知され、アートプラットホーム以来のにぎわいが創出された。また、2月からは、香林坊でカフェを経営する人が、Kapoカフェの店長に就き、本格的にカフェとしての営業をスタートさせる計画も持ち上がっている。Kapoの活動が長期的に保障されたわけではないが、着実に独立した体制づくりに向けて少しずつ歩を進めている。

NPO法人化について

全国に点在するオルタナティヴ・スペースや、アートセンターを運営する団体のなかには、NPO法人化するところも多い。NPO法人化すると、贈与税が免除になるなどの優遇措置を受けられ、また、行政府の認証を得ることで社会的信用が上がると考えられる。現在、Kapoでは、NPOにするともしないとも決まっていない。だがこれからKapoを大きな組織にしていこうと決まった場合、NPO化することで、お金の流れや意思決定の仕組みがクリアになることは、組織にとってはメリットになると考えられる。反対に、小さな規模でKapoを運営していこうとする場合には、NPO化すると、少人数での簡単な話し合いで決定できていたことができなくなるなど、手続きが煩雑になり、デメリットの方が大きくなると予想される。