第2章   先行研究

 

1節 レジ袋とマイバッグ運動

 

この章ではレジ袋とマイバッグ運動について説明したいと思う。

レジ袋が登場したのは1970年代の事。レジ袋は原油を原料としたポリエチレン(現在ダイオキシンや硫化水素などの有害物質はほとんど出ない)でできていて軽くて丈夫なので、次第に買い物かごなどにとってかわるようになった。形状はポリ袋やビニール袋においては特に、手下げて帰れるような取っ手、中身が出ないように袋口を結べるように施す等の形状を取り入れている。(環境問題を考える編集者の会 2007)。また多くの袋には、ロゴマーク等の印刷が施されていて、これは買物客が帰宅する際に、どこで買物したかが一般の人にわかる他、現在レジ袋は多くの用途で使われる為に、様々なシーンにおいて頻繁に人目にさらされる機会がある事から、宣伝としての効果の狙いもある。世界的には海に散乱したレジ袋をクラゲと間違えて食べたクジラやカメが窒息して、海岸に打ち上げられた事件をきっかけに、欧州各国や韓国・台湾などでスーパーのレジ袋無料配布を法律で禁じている。(舟木2007

 

レジ袋に対し、買い物客が持参するマイバッグは「エコバッグ」とも呼ばれる。日本でマイバッグ運動が最も早かったのは(社)北海道消費者協会であった。設立された昭和361961)年より買い物袋持参運動を行っている。また昭和49年の生活学校のチラシに買い物かご(袋、風呂敷)運動を促す書き方をされている。レジ袋が開発されてすぐに買い物袋を持参しましょうという運動が行われている。全国的にマイバッグ運動キャンペーンが行われるようになったのは平成71995)年にごみ減量化推進国民会議がマイバッグ運動を呼びかけたことによる。(舟木2007:3235

現在、エコバッグがブームとなっており、洒落たものや、セレブ・富裕層の愛用するものなどもテレビなどで特集されるなどファッションの一部として注目されているが、ブームに乗って頻繁に買い換えるのであれば運動を実践する意味はなくなる。

その一方で、精算済みかそうでないかの区別が付きづらい為、万引きの温床になりやすいなどのデメリットも指摘されるようになってきた。

 

第2節 レジ袋に関する言説

 

レジ袋を有害視し、レジ袋を有料化するべきだという動きがある一方ではレジ袋有料化を疑問視する言説も存在する。この節ではレジ袋の有料化を肯定言説と否定言説に分類し、レジ袋に関するさまざまな意見をまとめたいと思う。まずは有料化について肯定的な意見の主要なものについてまとめた。

 

有料化肯定言説

・「富山県のゴミ袋有料化地域は環境問題に対しての意識が高い。」(天野1996

・「京都市の家庭ごみにおけるレジ袋の調査。全ごみの67%を占める」(高月2004

・「2030年には石油が枯渇しレジ袋自体がなくなる」(環境問題を考える編集者の会2007

・「一般市民へのアンケートからレジ袋への需要曲線を推定し社会的便益を測定。」(舟木、 安田1996

・「レジ袋は軽く飛ばされやすい。それが屋外での景観を破壊、クジラがクラゲと間違えて食べて窒息死を招く。」(舟木2006

・「削減効果が最も高いのはレジで代金を払う方式である。またポイント制(スタンプ方式)は期待するほどの効果は現れない。」(桑原2007

  

 有料化肯定言説の特徴は石油問題やゴミ問題の観点からレジ袋が環境に対し有害であり、一般市民の多くはレジ袋を必要としていないということが述べられている。

 一方、有料化否定言説についての主要な意見を次のようにまとめてみた。

 

有料化否定言説

・「レジ袋有料化はレジ袋削減効果はあるが、必ずしも容器包装廃棄物の削減につながるとは言い切れない。またポリエチレンの袋よりも紙袋の方が環境に対する影響が強い。よって安易に有料化すべきではない。」(末崎2006

・「レジ袋に使用されるポリエチレンは原油から大量にとれる物で、それを社会で有効に使うのは環境にも間違っていない。物は普通質量で表すのに、レジ袋の問題ではいつも枚数で語られる。1枚あたりが軽ければ問題ない」(武田2007

・「レジ袋とエコバッグは石油の成分が違い、エコバッグの方が貴重な石油資源を消費している。環境のことを考えるならばレジ袋を使うべきだ。しかも生活が多様化した現代では多くの人が買い物の為だけに外出するわけではない。消費者の格差拡大につながる。」(武田2008

・「レジ袋に使う資源−(エコバッグに使う資源+専用指定ゴミ袋に使う資源)=レジ袋を取りやめることによって節約できる資源 という式になる。」(武田2007

 

有料化否定言説ではマイバッグや紙袋のようなレジ袋の代替品の方が環境に対する負荷が大きいことやレジ袋を減らすとゴミ袋の消費が増えることなどが述べられている。また武田論文が述べるようにエコバスケットやマイバッグはかさばるものが多く、都会の満員電車に毎日揺られる独身サラリーマンや車の運転の出来ない高齢者には不向きだと思う。しかし富山県は車の保有率が高いので、マイバッグやエコバスケットがかさばるという問題はクリアできたのではないかと思う。

 

また桑原は次のように述べている。

 

「マイバッグにした場合、それによってレジ袋を何回もらわないでおくとエネルギー的に同じになるか、すなわち元を取れるのかを算出した。結果ではマイバスケットで58回(リサイクル無しとすると74回)であるがナイロン布製のバッグでは布製造のため、布製造のための消費エネルギーがプラスチックのそれに比べて大きいので重さの割に効率が悪く、機能型(バスケットに装着できるタイプのマイバッグ)は182回も必要という結果になった。またペットボトル再生品を使用したマイバッグはリサイクルをした効果と重さが軽いので、11回使えば元を取れることがわかった。いずれにせよマイバッグは三日坊主ではエネルギー的には却ってマイナスになり、継続して行う必要がある。またこの試算は廃棄時に使われるエネルギーの影響を省略しており、さらにレジ袋の問題は単に資源の浪費というだけではなく周辺環境の汚染など存在するのでそういった要素を加味して評価する必要がある。」(桑原 2007

 

日本で現在、どうしてレジ袋を減らそうとするのかというと「ゴミを減らす」「石油資源を節約する」という二つの側面があるからである。しかし、たかおかマイバッグ運動を進める市民の会によるアンケートによると「レジ袋を受け取った人のほとんどがゴミ袋になど再利用をしている」。レジ袋をなくしてもゴミ袋が増えるだけでゴミの減量にはならないという見方もある。