第一章 問題関心と調査概要
最近は、富山でも外国人をよく見かけるようになった。このような、漠然とした感覚が今回の卒業論文の根底にあるのかもしれない。縁あって、2005年後期社会調査法で富山県で暮らしている外国人家族への聞き取り調査を経験し、彼らが異国で生活するにあたって直面している問題に触れることができた。また、2006年後期社会学実習では、学習面での困難に焦点を絞った調査を行った。本論文では、引き続き指導経験者への聞き取り、外国人家族への聞き取りを行って、現状で何が行われていて、何が問題であるのかを探った結果を報告したい。
先行研究では、ブラジル人が多く集住している静岡県、群馬県太田市の事例が多く見られ、研究の蓄積されているようである。しかし、それ以外での地域での研究事例は少ない。また、子どもたちは日本語習得、教科学習の過程において具体的にどのような困難さを感じているのかに言及する研究は少なく、本論文ではその点に着目していきたい。なお、調査は県内で最もブラジル人が多く生活している高岡市(図1参照)を含む県西部を中心に行った。
図1:市町村別ブラジル人登録者数(平成18年末 出典:知事政策室 国際・日本海政策課)
調査概要は以下の通りである。まず、学校での指導の現状を調べるために県または市に委嘱されて学校でブラジル人児童生徒をはじめ、外国籍の子供たちへの指導経験をもつ4名へのインタビューを行った。(第四章参照)インタビューの概要は次の通りである。
Hさんに対してのインタビューは、2006年11月17日と12月23日にHさんの職場で行った。所要時間は、一回目が約70分、二回目が約20分だった。
Iさんに対するインタビューは2007年7月10日にHさんの職場で行った。所要時間は約50分だった。
Jさんへのインタビューは、2007年8月1日にHさんの職場で行った。所要時間は約60分だった。
Kさんへのインタビューは、2007年11月20日に高岡市内のファミリーレストランで行った。所要時間は約30分だった。
次に、実際に児童生徒が日本語学習のどのような場面で困難さを感じ、指導者はどのような対応を取っているのかを調べるために、高岡市内で行われている日本語教室への参与観察をおこなった。参与観察は、2007年7月5日、7月23日、8月1日にHさんが行っている日本語教室に日本語指導のボランティアとして参加して行った。
そして、学校に通う子どもたち、両親はどのように学校、教育について考えているのかを高岡市内に住む2組のブラジル人家族にインタビュー調査を行った。インタビューの概要は、次の通りである。
Pさん一家へのインタビューは、2007年11月25日にPさん宅で行った。所要時間は約70分だった。
Rさん一家へのインタビューは、2007年12月2日にRさん宅で行った。所要時間は約30分だった。
以上の調査を通して、日本語指導の過程でどのようなことに子どもたちが苦戦し、指導者たちが苦心しているのかを明らかにしていきたい。