はじめに

 

 映画やドラマは、私たちが日常生活を送るなかでひとつのエンターテイメントとして確立している。大量の作品があふれている社会において、私たちは、積極的にあるいは偶然に、いろいろな作品と出会う。

 私も、2005年、ある作品と出会った。邦画『8月のクリスマス』である。これは、私が生まれ育った富山県で撮影が行われていた。メインロケ地となったのは高岡市。私にとって、とても身近な市のひとつであった。その作品は、とても静かで綺麗で切ないものに感じられた。

 ふとしたことで知った、日本中に点在するフィルムコミッションの存在。そして、あの邦画『8月のクリスマス』と高岡フィルムコミッションの関係。調査を進める中で知った、『8月のクリスマス』記念館をとりまく人々の思い・・・。

 本論文では、ある地方都市を事例に、フィルムツーリズムの特徴を整理し、映画のロケ地となることがその地域にどのような可能性をもたらすのか、ということに迫るものである。